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「どうしよう!公爵様は登城されてるからまだしも、ダイアナ様には公爵家に来たときに挨拶すべきだったのに!」


「大丈夫。母上はそんなこと気にしないさ。それにリリーは魔獣に襲われかけた後なんだ。部屋でゆっくりしていて当然なんだから」


 リリーが気になるなら明日の午後にでも、挨拶しようか?ーーとアークは呑気に言うが、リリアナは気が気じゃない。


「ダイアナ様はご帰宅は遅いのかしら?公爵様だって、お帰りになるのを玄関で待てば…」


「リリー?どこの世界に婚約者を夜遅くに玄関で立たせる奴がいるんだ…」


 アークがリリアナの慌てっぷりにため息し、リリアナがあわあわと取り乱した所で、部屋のドアが侍女のサラによってノックされた。


「ユーリス様、リリアナ様お食事をお持ちしました」



 ーーーーーー



 ピービーピピ…


 窓の外で何かの鳥が鳴いている。聞き覚えのない鳴き声に、メイルズ男爵領にこんな鳴き声の鳥がいたかしら?ーーとリリアナが思いながら目を覚ますと、見覚えのない天蓋が目に入った。


 ーーーあれ?ここどこだろう?


 窓の外はもう日が高くなっているのか、部屋の中はすっかり明るくなっていた。


 ーーーあぁ、そうだ。昨日魔獣に襲われて、リーフェンシュタール公爵家にやって来たんだっけ


 どうやら昨日はものすごく色んな事が起こりすぎて疲れてしまい、リリアナはかなり寝過ごしてしまったらしい。他所の家に泊まりに来てぐーすか寝ているとは、自分も神経が少しは図太くなったのかしら?ーーと思いつつ、外の様子を見ようかと窓に目を向けると、窓の側のカウチで横たわる人影が目に飛び込んできた。


 ーーー!えっー?アーク?なんでここで寝ているの?


 カウチでぐっすり寝ていたのは、昨日からずっとリリアナをかまい通しだったアークだった。アークのいちゃつき攻撃のおかげで、恋愛初心者のリリアナはへとへとになって疲れて寝た覚えがある。


 ーーー夕食の後、1人で寝るのが寂しいなら一緒に寝ようか?なんて言うから…


 昨日は慣れない環境で疲れたため、リリアナは早く寝ようと思ったら、アークも一緒に寝ると言い出したのだ。魔獣に襲撃された後なので、夢見が悪くなることを心配してくれたのだが、丁寧にお断りした。

 しかし、なんでもアーク自室はリリアナのいる部屋のすぐ隣で、室内の壁にある扉で繋がってるらしい。何かあれば、すぐに行き来もできるよーーなんてアークは言うが、嫁入り前である。同衾はちょっとと遠慮したいと言ったはずなのだが。


 いつもよりゆったりした衣服を着て、カウチで寝ているアークの姿は少し幼く見えて、リリアナの緊張感も収まる。リリアナはベッドから降りて、アークの寝ている傍で寝顔を堪能することにした。


 ーーー本当に神々しいこと。同じ人間なんて思えない…


 金髪で神々しいアークと茶髪なリリアナが婚約式で並ぶと、ちぐはぐな感じにならないか不安である。


 ーーー睫毛もなんでこんなに長いのかしら、肌だってこんなに透明感抜群だし


 テレビのCMに出れそうだわーーとリリアナが感心していると、急にアークの目がパッと開いた。


「ごっごめん!起こしちゃった?」


「いや、起きてた。ずっとリリーが覗き込んでるから、いつお目覚めのキスをしてくれるかと期待して待ってたんだけど」


「おぉ、お目覚めのキス?むり、むり、無理!!」


 どうして、我が婚約者は起床から甘々なのかーーリリアナがこれ以上、アークに近づくと危険だと察し、離れようとすると逃がさないとばかりに腕を引っ張られ抱き込まれてしまう。


「リリーはつれないね…ん?もう、こんな時間か?ーーリリー、昨日魘されてたみたいだけど、体調は悪くない?」


「へ?私、魘されてたの?」


 そう言えば、夜中に何度か名前を呼ばれたような気がする。あれはアークだったのかと思いながら、アークに抱き込まれた状態から抜け出ようと腕を突っ張るが、アークの拘束は弱まらない。


「夜中に声がするから、部屋をつなぐ扉から覗いたんだ。そうしたら、リリーがひどく魘されていてね。心配になって、ここで休ませて貰ったよ」


 昨日は魔獣に襲われかけたから、精神的に不安が残っていたのかもしれないね。念のため今日は医者に見て貰おうーーとアークが言うのでリリアナは仕方なく頷いた。


ーーー大丈夫って言ったけど、結局夢見が悪くて心配かけちゃったみたい…


「そうだったんだ。それはお手数をお掛けしました…アーク、どうもありがとう…。って、もう!アークいい加減離して。サラを呼ばなきゃ」


「ふっ、起きたら少しは元気になったようだね。でも、医者には見て貰うからね。さぁ、サラを呼ぼうか」


 ーーーちょっと待って!今サラを部屋に呼んだらー!!


 起きてすぐの部屋に主人達が部屋着でくっついていれば、うっかり一緒に寝ていたと勘違いをしてしまうだろう。リリアナはなんとか、アークに自分の部屋へ戻って欲しかったが、無情にもアークはリリアナが止めるよりも早く、サラを呼ぶためにベルを鳴らしてしまった。


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