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流血&暴力的な場面が入ります。
苦手な方はお避けくださいませm(_ _)m
リリアナ誘拐監禁事件の回想シーンです。
リリアナの少女時代は、転生後と同じく活発な明るい性格であった。男爵領内の同い年の子供達と一緒に遊び、貴族や平民など身分に隔たりなく接する姿勢に、領民の大人達にも慕われる女の子であった。
そんなリリアナは誘拐監禁事件が起こるまで、社交界シーズンの夏の間は、両親と兄姉達と共に帝都で過ごしていた。
帝都にある母の実家のシュタインブリュック侯爵家や祖母の実家のリーフェンシュタール公爵家の親族と共に茶会などに出席していた。その頃のリリアナは明るく社交的な性格もあり、母が出席した茶会などで知り合った同い年の貴族の子供達との交流も盛んであった。
しかし、リリアナが10歳のとき、母が茶会に招かれていた伯爵家で事件が起こった。いつも通り、リリアナは親達と別れて子供達だけで、伯爵家の庭園を遊んでいたが、茶会の主催者である伯爵家の女の子ーアンジェが綺麗な珍しい花があるから、リリアナだけに見せてあげると言い出した。
ーーーきっと素晴らしい花なのね!それに、私だけにこっそり見せてくれるなんて!
リリアナは花には特別に興味はなかったが、自分だけに見せてくれるというアンジェの好意がとても嬉しかった。そのため、全く疑うことなく自分の侍女にも告げずにアンジェに案内されるまま、屋敷裏にある温室に向かってしまった。
ーーーここの温室には珍しいお花はないようだけど
子供ながらに不審に思ったリリアナがアンジェに確かめようとした時、温室に1人のメイド服を着た少女が入ってきた。
ーーーあら?アンジェはどこ?
リリアナの後に入ってきたはずのアンジェの姿がみえない。リリアナを置いて茶会に戻ったのかと、温メイド服の少女に問いかけると、急に後ろから目隠しをされた。慌ててて抵抗しようとしたが、幼いリリアナの力は弱く、さらにお腹に鈍い衝撃を受けた。腹部を殴られ、気絶させられたのである。
ーーーーーー
次にリリアナの意識が戻ったとき、硬い床の上に寝かされていた。辺りは真っ暗で何も見えず、何が起きたのか分からなかった。
ーーー誰か助けて!!!
リリアナは取り敢えず叫んで助けを呼ぼうとしたが、その時口に布が巻かれていることに気がついた。目には目隠しがしてあり、手足は何かで縛られているようで、身動きが取れない。お腹は気絶させるために殴られた衝撃でひどい痛みを訴えていた。
ーーー痛い!痛い!痛い!!ここはどこなの?誰か助けて!!!
恐怖に駆られたリリアナは、後ろ手に縛られた手をほどくため、何度も必死に腕をねじった。途中、皮膚が裂け血が出てきて痛みに気が遠くなりそうになりながらも、リリアナは恐怖に怯え、泣き続けながら何度も何度も腕をねじり回し続けた。
ーーー怖い!怖いよ…!ここから出して!!
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リリアナがいなくなったことに気がついた母ロザリーは、茶会の主催の伯爵夫妻にきつく問いただした。男爵夫人でありながらも侯爵家出身のロザリーに、伯爵夫妻はロザリ-の剣幕にたじたじになりながらも、屋敷内を使用人に隈無く捜索させた。伯爵夫妻も自身が主催した茶会で貴族令嬢が行方不明になったとなれば、お家の不祥事につながると必死にだったのだ。けれども、屋敷のどこにもリリアナは見つからない。
業を煮やしたロザリーは、その時の帝都での滞在先であったリーフェンシュタール公爵家へリリアナが行方不明になったと使いを出した。公爵家の力を借りてリリアナを捜索しようとしたのである。
すぐに公爵家から公爵夫人ダイアナと、長男ユーリスアークライトが駆けつけた。アークもリリアナがいなくなったと聞き、捜索に参加させてほしいと懇願したのだ。ダイアナはアークが13歳で既に風の精霊使いとして発現していたため、わずかでも捜索の助けになればと参加を許可した。
ーーーリリアナはどこた!!!
ロザリ-と伯爵夫妻がダイアナに事情を説明していると、突然、轟音と共に、伯爵家の屋敷の裏に竜巻が起こった。はっとしたダイアナが息子ユーリを見ると、ユーリの金髪は風に逆立ち、足元には光輝く大きな魔方陣が出現していた。ユーリが怒りに任せて精霊魔法を暴走させてのだ。
ーーー風よ!今すぐ、我をリリアナに導きたまえ!!
轟音と共に、竜巻が意思を持ったかのように動き出す。自身も弱いながらも精霊使いであったダイアナが、慌ててユーリの精霊魔法を制御しようとするが、少しも押さえきれない。
竜巻はさらに轟音をあげ大きくなり、伯爵の屋敷を飛び出した。伯爵家が面していた、貴族屋敷街の大通りをものすごい早さで進んで行く。突然の竜巻に、大通りを歩いていた馬車や人々が逃げ惑う中、どんどん北に進み、とある子爵家の屋敷にたどり着いた。
後2話分、回想シーンが入ります。
流血&暴力的な苦手な方はお避けくださいませm(_ _)m