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 アークの説明が大雑把過ぎて顔をしかめたリリアナに、アークは少し眉を下げ反省した顔になった。


「少し説明が雑だったね。あの事件の時、リリアナがいなくなったと知って、俺は竜巻を起こしただろう?風の精霊のみなら、リリアナの形跡は掴めない。どうしても、リリアナの行方を掴みたかった俺は、無意識に大地の精霊にリリアナの行方を探させたみたいなんだ」


「へっ?そんなこと出来るの?」


 普通、精霊使いが使えるのは自分の属性のみの精霊魔法である。アークは大地の精霊の加護がなかったはずだ。


「普通はできない。ただ、リリアナ側に大地の精霊の加護があれば話は別だ」


 ーーーえ?私に大地の精霊の加護があるの?


「待って。私には水の精霊の加護しかないはずだわ」


「リリアナが子供の頃に教会で受けた洗礼では、水の加護だけだったのかもしれない。でもたしか、メイルズ男爵家は代々大地の精霊の加護があったよね?」


「えぇ、お父様とお兄さまが大地の精霊の加護を受けているわ。それがまさか?!」


 メイルズ男爵家では代々大地の精霊の加護がある。領内に温泉の恩恵があるのも、その加護のおかげと考えられている。


「あぁ、おそらくリリアナには成長と共に大地の精霊の加護も僅かながらついたんだと思う。それで、俺の魔力で、大地の精霊が意思を感じとり、リリアナに働きかけて監禁場所を特定した」


 ーーー!まさか監禁場所の特定がリリアナとアーク2人についた精霊によるものなんて!


 リリアナは驚きのあまりに、アークに握られていた手をばっと離してしまった。そのため、アークから漏れ出るブリザードを風の精霊が反映して、東屋の温度が急に下がってしまった。


 ーーーっ!寒い!!


 くしゅんーーリリアナが冷気に耐えられず、くしゃみをするとアークははっとして、冷気を引っ込めてくれた。その代わり、リリアナには信じられないことに、今度は後ろから抱き込み直した。


 ーーーNO!!!


「ちょっと!抱き込まなくても良いじゃない!!」


「くしゃみしたから、寒いかと」


「それはアークが!急に冷気を出すから!!」


「そうだな。でも、こうしていれば、うっかり冷気を出しても寒くないだろう?ーー大地の精霊の力を借りて、監禁場所の特定をしたとこまでだったかな?ーーけれど、それだけじゃない。リリアナは救出された後、水の精霊魔法で治療を受けたね?」


 アークはリリアナの抵抗を完全に無視して話を続けるらしい。リリアナもなんだか抵抗するのもなんだかバカらしくなって、そのままアークに抱き込まれた姿勢で話を聞くことにした。


 リリアナの誘拐監禁事件では、子爵令嬢からひどい暴行を受けリリアナは大怪我をした。その怪我はアークの言うように、水の精霊魔法で治した覚えがある。


 ーーーもしかして、その精霊魔法も?


「私の水の加護が影響してたりする?」


「当たり。俺はあの時、どうしても早くリリアナから痛みを取り除き、治したかった。それで、無意識にリリアナの水の精霊の加護の力を使ったらしい」


 ーーー怪我を治したのって、公爵様じゃなかったの?!


 初めて知る事件の隠された内容に、リリアナは驚きで頭がパンク寸前である。


「リリアナの怪我は、表向き公爵である父上が治癒したことにはなっている。ーーーどうやら俺はリリーの精霊の加護を使って、自分の属性以外にも精霊魔法が使えるらしい。それを皇帝は危険だと判断したのだろう」


 他の人間の精霊の加護を使って、精霊魔法を使えるなら、無限にありとあらゆる魔法を使えそうだーー皇帝も危険と判断しても不思議はない。


「自分の属性以外の精霊魔法を使えるのは、建国以来記録がない。それで帝国魔法省により、ありとあらゆる調査が行われて、ある1点にたどり着いた。俺がリリアナに対して強い感情を持ったときにしか、他の属性の精霊魔法は発動しないーーと」


 ーーーへ?なに?!原因、私にもあるの?


 リリアナが驚愕に目を見開き後ろを向くと、アークは耳元でくすっと笑って話を続ける。


「だから、俺には魔法の制御が出来て、さらに、正式な国の魔法省の所属の認定を受けてから、リリアナへの感情を明示出来る制約が課されたんだ。なんせ今までに前例がなく、精霊魔法を使用した後のリリアナへの負担もわからかったからね」


 ほんとうに長かったーーと長いため息をつきながら、アークはリリアナを抱え込む腕に力を込めた。


 ーーー良く理解が追い付かないんだけど、いろいろ制約があって、今はそれがなくなったと?


「でも、帝国魔法省の所属の精霊使いって、アークは違うものにはなりたくなかったの?」


 リーフェンシュタール公爵家は代々、皇帝の側近として宰相やそれに並ぶ役職についてきた。現公爵だって財務省のトップである。それが他の部署と距離を置く魔法省の所属にアークがなるとは、周りの反対はなかったのか。


「あぁ。公爵次期当主として、国のどこかの機関には所属しようとは思ったけど、特にこだわりはなかった。魔法省だって独立してるが、皇帝の直属の機関だしね?それに俺の魔力量から言って、魔法省所属が妥当だろう。両親も所属については反対はしなかった。公爵家のメンツを考えるならば、家にはパトリックもいるからね。パトリックは国の重要なポストに興味もあるみたいだし、なんとかなるさ」


 そういうものだろうかーーなんだかアークの話を聞いても、現実味が今一沸いてこない。とりあえず、現公爵夫妻がアークの選択に異を唱えていないと分かりリリアナはそっと安堵した。

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