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「学園への入学準備は進んでいるのか?」


「ーーへ?」


 まるでお見合いのように、『後はお若いお二人で~』とサロンから庭に送り出され、アークから婚約の説明が聞けるのかとどきどきしながら、リリアナはアークのエスコートを受けてゆっくり歩いていた。


 横顔から溢れでる色気とイケメン度合いに、いつもなら、ーーアークは今日もかっこいいなぁーーと淡い恋心を抱きながらぼんやり眺めているところだ。リリアナと並んで歩くと、月とすっぽんーーもちろんリリアナがすっぽんだーーとリリアナには思えてくる。今回の婚約の話も、身分差もあって婚姻まで進む可能性はほぼないのでは?と疑ってしまいそうになる。


「ーーはぁ…だから、次の春に入学する予定だと男爵夫人に聞いた。入学の準備は進んでいるのかと聞いているんだけど?」


 ため息混じりに再度問いかけられるが、頭がついてこない。学園入学→婚約とどう関係があるのだろうか?それに、そんなに呆れるくらいなら、婚約を無理に進めなくても良いのにと不貞腐れてしまいそうになる。


「私の入学準備は、レベッカお姉さまとメアリーお姉さまの婚姻の準備にメドがついてから進めるつもり。次の春にレベッカお姉さまが学園を卒業するこら、学園で使う物はレベッカお姉さまのお下がりを使う予定なの。わが家には、そうそうゆとりもないしね」


 ーーーそもそも、公爵家へ嫁ぐ持参金が用意できないわ!学園で使うものも新しいの買えないくらいなのに!


 リリアナがお下がりを使うというくだりで、驚いた顔をしたアークを見ると、やっぱり男爵家と公爵家での家の格と、経済力の違いを改めて感じる。


「ーーお下がりは使うな。必要なものがあれば、公爵家で用意する」


「結構です。アークから貰ったって知れたら、ご令嬢方からとんだ妬みを買ってしまうもの」


 これだから公爵家のお坊ちゃんは…と呆れながら答える。それじゃなくても、アークと並んでたまに茶会に出るだけでも、物凄い嫌味を受けるのだ。


 ーーー触らなぬアークに祟りなし…


 リリアナには気配りを見せ、その気になれば細やかな気遣いだって出来るのに、相変わらず、自身に対する令嬢達の熱視線には鈍いなーと呆れてしまう。


 ゆっくり歩いてきたが、今日は外の日差しの照りが強い。日傘をしていても、貴族令嬢のドレスには、じわじわと暑さが忍び寄る。リリアナが少し疲れてきたと感じたところで、アークに近くの東屋で涼もうと促された。


 ーーーこういう気遣いは得意なのにね!


 東屋に着きゆっくり腰掛けると、すぐに爽やかな風か優しく吹き込んでくる。アークの側にいる風の精霊が、アークの意思を汲んで東屋内を快適な温度に下げているのだ。


 ーーーまるで、便利などこでもエアコンね!


 季節が暑くても寒くても、アークの周りは快適な温度調節がされている。庭園では植物があるため、冷風は押さえていたのだが、東屋では本領を発揮し涼しげな風が頬を撫でる。

 かなり羨ましい能力だなぁと改めて感心していると、横に座ったアークが、リリアナがひと息ついたのを見て話を戻してきた。


「…さっきの入学準備の件だが、自分の婚約者の身の周りの手配をするだけなのだから、他の生徒達には文句は言わせない」


 ーーーその婚約話の説明をまだ受けてませんけどね!!


「…はぁ…。そもそも貴方との婚約のための、持参金の用意もうちには無理なの。お姉さま達の婚姻だけでも上手くいかせるのに大変なのに」


 学園の道具すらお下がりを使う予定なのだ。公爵家への持参金なんて男爵家が払える筈がない。


「持参金は問題ない。初めから男爵家からは婚約と婚姻に関して、一銭も費用を出して貰うつもりはないよ。リリーに関わるものは、今後、全て公爵家で準備する」


 ーーー!まじで?!


 まさかの『今後は無一文でOK!』に、さすがのリリアナも驚く。


 ーーーでも、余計に妬みを買うことになるんじゃ…。他の貴族から男爵家に嫌がらせでも受けたら…


 リリアナの考えを見透かしたかのように、アークはさらに続ける。


「…婚約のためにリリーと男爵家が不利益にならないよう、最善を尽くすと約束する。ーー俺はリリーと結婚出来ないなら、今後も誰とも結婚しない。リリーの事が好きなんだーーリリーは俺との結婚は嫌なのか?」


 アークがいつも毅然としている表情を、不意に不安げで悲しそうに顔を傾けながら覗き込むように問いかけてくる。


 ーーー!!!


 アークからの急な急接近と、直球の求愛にリリアナの顔がぼんっ!と真っ赤に染まる。それを見て、アークはやや安心したらしい。今度は微笑みながらリリアナを包み込むように抱きしめてきた。


「リリーとの婚約を急いだのには訳があるんだ。もちろん、俺がリリーとの婚姻を出来る限り早く進めたかったのもあるーーリリーはルーシャ王女がここユーダイヤに留学してくる話は聞いた?」


 アークに幼い頃のようにぎゅっと抱きしめられ、己の心臓が持たないのではないかとリリアナが心配になる中、アークはようやくリリアナとの婚姻の説明を始めた。


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