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「あら?でも変ね?ユーリスが準備したペンダントもあったはずよ。ペンダントはどうしたのかしら?」
「へっ?」
ーーー!!ペンダント!まさか、あれか!!
「あらまぁ!リリアナったら、ユーリスアークライト様からペンダントまで頂いていたの?」
それまで、そわそわしながらダイアナの話を聞いていたレベッカが、嬉しそうに声をあげた。常日頃から、レベッカとメアリーの姉2人は、アークとリリアナの仲を取り持とうと画策していた。
アークと隣国のルーシャ王女との婚姻の噂話の際には、実ることがなかったリリアナの初恋に対して、慰めの手紙まで、学園からリリアナにわざわざ送っていたと言うのに。
「なっ!ちょっ!レベッカお姉さま!お声が大きい…!」
リリアナは、ドレスがアークから贈られたものだと知り、動揺して周りが見えていなかったが、姉のレベッカの一言に我に返った。
遠巻きではあるが、みなリーフェンシュタール公爵夫人であるダイアナの一挙一動に注目している。もちろん、発言に対しても然りである。
リリアナに他に婚約の決まりそうな筆頭公爵家嫡子から、ドレスとペンダントの贈り物があったとなれば、変な噂が立ちかねない。
ーーーカルラ・ルカのペンダント…、あれはもしかしたら本当にアークが私のことを?
1度諦めた思いを甦らせて、もう一度傷つくのは怖い。リリアナの頭は、何か裏があるのではないかと勘繰る気持ちと、淡い期待でごちゃごちゃになった。
「…リリー姉様、お兄様は何も考えずに贈り物をしたのではなくてよ」
「…!ヴィー!」
そこに、リリアナの動揺をなだめるように微笑みながら、ライトイエローの品のあるドレスを着たヴィヴィアンが、パトリックを連れてやって来た。
「お母様、ユーリお兄様がリリーお姉さまに贈ったペンダントはこちらに。リリーお姉さまったら、照れてしまってお受けにならなかったの」
ーーーヴィー!!私、全然、照れてない!!
慌てて訂正しようにも、どこをどう訂正すれば良いのか分からない。リリアナがさらに動揺しているうちに、ヴィヴィアンからリリアナの侍女のカナにペンダントが渡された。
「そうそう!このカルラ・ルカのペンダント。ユーリスったら、茶会までに仕上げるようにと工房に急いで作らせたのよ。さあさあ、照れてないで着けてみて」
「…っ!ダイアナ様!」
公爵夫人ダイアナが、拒否は受け付けない満面の笑みで、リリアナにペンダントを着けるように促したため、リリアナは逃げ場を失い、カナにペンダントを着けてもらうしかなかった。
公爵家嫡子がカルラ・ルカを女性に贈ること、それを母親である公爵夫人が認めていることに、招待客はみな固唾を飲んで見つめていた。
ーーー…っ!お姉さま達のお祝いの席なのにお茶会を騒がしてしまったわ。こんなことになるなら、昨日アクセサリーを見せられたとき、逃げずにペンダントをアークへ返すようにヴィヴィアンを説得すればよかった
「公爵夫人、このような高価なペンダント、やはり頂くわけには…!」
「リリアナ、これは我が息子が心を砕いて作らせた贈り物です。私は、貴方にこそ身につけて欲しいと思います」
公爵夫人ダイアナが声高らかにそう言うと、固唾を飲んでいた周りの招待客が波打つようにざわめきだした。
「あれは、ここのメイルズ男爵家の末娘、リリアナ孃だったかな?ユーリスアークライト殿とそのような仲とは」
「まぁ!めでたい!我が家門から筆頭公爵家にご縁が!」
「ではやはり、隣国の王女との婚約はデマと言うことですかな」
リリアナは、日頃から注目されないように生活してきたため、周囲から注目され噂されていることに気づいてパニックになりそうだった。元日本人でも精神的にはかなりの大人だったが、転生前はあまり人前に立つことはなく、仕事中心の生活をしていた。
また現世では、社交界デビューの前であり、転生後は表向き引っ込み思案の令嬢として生きてきたため、とっさにどういう対応をすれば良いのか分からなかった。
「ごく近々、ユーリスから男爵家へ正式に婚約を申し込むはずです。リリアナ、私は貴方を公爵家へ歓迎しますわよ」
さらなるだめ押しをかけるような公爵夫人ダイアナの一言で、周りは一層どよめきだした。
ーーー!?申し込み?嬉しいけど、けど、けど!!そんな話、アークから聞いてない!!
リリアナは公爵夫人ダイアナの思いもよらない一言に、もはや精神的に追い込まれ、錯乱状態になっていた。
「まぁ!とうとうリリアナもユーリスアークライト様と婚約なのね!おめでとう!」
どこからか騒ぎを聞き付けた2番目の姉メアリーまでが騒ぎに拍車をかけくる。そもそも、当のアークが茶会に参加していないのに、婚約話など飛躍し過ぎている。
ーーー私がアークの婚約??そんな何も聞かされてません!!ルーシャ王女との婚姻は??
「ちょっ!リリー姉さま!」
ふらついたリリアナに、パトリックが慌てて駆け寄るが、目の前が急に暗くなり、リリアナは立っていることができない。
茶会に参加しているほぼ全ての招待客がリリアナを見ている。遠方でも両親と兄ハリーが驚いてこちらを見ていた。
ーーーお父様達もなにも知らされてないのねーー
追い詰められたリリアナは、ついに限界に達した。さぁーっと目の前が暗くなると、意識をとばして倒れ、その状況から逃げることに幸いにも成功したのである。
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