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「あら?リリアナ、こんな端にいたのね?」


 オスカーと話をしていると、ふわりと爽やかな風が吹き、1人の美しい貴婦人が話しかけてきた。リーフェンシュタール公爵夫人ダイアナである。レベッカがリリアナを呼んでも来なかったため、レベッカが公爵夫人ダイアナを連れてやって来たのだ。


「これは、リーフェンシュタール公爵夫人、ご機嫌よう。レベッカ孃、申し訳ありません。リリアナ孃と話し込んでしまった。」


「ご挨拶が遅れて失礼致しました、リーフェンシュタール公爵夫人。この度は、姉達の婚約祝いのために、遠いところまで誠にありがとうございます」


 リーフェンシュタール公爵夫人ダイアナの独身時代は、自身の娘ヴィヴィアンにそっくりな美貌で、社交界の華として引く手あまただったと言われている。その美しさは今も健在で、お茶会の招待客達の目が自然とリリアナ達のいる隅っこに向けられた。


「もう!オスカーに頼んで、リリアナを呼びに行かせたのに。2人揃って話に夢中なんて!リーフェンシュタール公爵夫人、こんな端に足を運ばせてしまい申し訳ありません」


「良いのよ。…オスカー、久方ぶりですわね。あちらで貴方の母上がお探しでしてよ」


「これは、公爵夫人お手数をおかけしました。リリアナ、また後で」


 ーーーダイアナ様とレベッカお姉さまがご一緒だったなんて!オスカーと話し込んでたりしないで、すぐにご挨拶に伺ったのに!


 恨みがましくオスカーを見詰めると、気まづく感じたのか、オスカーが逃げるようにして離れていった。


 リリアナは、大切な姉達の婚約祝いの席で、余計なことばかりに、気をとられ過ぎていた自覚があった。いくらアークの話をオスカーに振られたからと言って、茶会のホスト側として招待客の対応をしなくてはいけない。リリアナは申し訳ない気持ちでいっぱいになった。


「大変申し訳ありません、リーフェンシュタール公爵夫人。レベッカお姉さま、お呼びとございましたが、なにか?」


「えぇ。リーフェンシュタール公爵夫人ダイアナ様が、リリアナにお話がおありとのことよ」


「ふふ…。レベッカとリリアナも堅苦しくなくて良いのよ。それに、この茶会はごく親しい者の集まりでしょう?」


 リーフェンシュタール公爵夫人ダイアナは、アークによく似た笑顔で優しくリリアナに答えた後、その表情とは裏腹に最大限にリリアナを混乱させる一言を放った。


「私はただ、息子のユーリスが作らせたドレスの完成品を見たくて。リリアナにドレスを贈るために、連日、仕立て屋を屋敷に呼んで作らせたのよ。真剣に悩んで作らせた甲斐があったわね。リリアナ、とても似合ってるわ」


 ーーー?!はぁ?


 リーフェンシュタール公爵夫人ダイアナの話を聞いて周りの招待客達か一瞬息を詰めた気配があった。それを感じたダイアナは、いたずらが成功したのを喜ぶように可笑しそうに笑った。


 ーーー本当にこのドレス、アークからだったの?どうしてドレスなんて?それに、ヴィ―ったら、騙したのね


 ヴィヴィアンからドレスについて何も聞いていなく、お下がりを譲り受けただけだとリリアナは気楽に考えていた。それがまさかのリーフェンシュタール公爵夫人ダイアナの爆弾発言に、リリアナの顔は青くなり、ひきつった。まさに寝耳に水とはこの事である。


「…これはリーフェンシュタール公爵夫人ダイアナ様、お礼もせず、大変失礼を致しました」


「ふふ…。謝罪は要らないわ。きっと、その様子だとヴィヴィアンあたりから何も伝えられずに、そのドレスを渡されたのでしょう?」


 ーーー当たりです!私、何にも聞いてない!!


 どうしてアークがこのドレスを準備していたのか誰にも説明されず、リリアナはかなり疑問を抱いた。

 周りでダイアナの言葉を聞いていた招待客も、状況が全くのみ込めずにひそひそと話をして、こちらの状況を伺っている。ダイアナは、リリアナの凄まじい動揺を手に取るようにして感じながらも、嬉しそうに口を開いた。


「悪く思わないでね。公爵嫡子からの贈り物で、さらに、ユーリス色と記章の花のドレスなんて、リリアナが困惑すると思ったのでしょう…。でもね、ユーリスはリリアナに絶対、この茶会で、そのドレスを着て貰いたかったの」


 ダイアナは先ほどオスカーがリリアナに指摘したドレスの色彩について、あっさりと肯定した後、不思議そうに首を傾けた。

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