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「…リリーお姉さま、ユーリお兄様はこれを、必ず明日の茶会で常に身につけておくようにと」


 リリアナが初めて見る本物のカルラ・ルカに目を奪われていると、ヴィヴィアンがとんでもないことを伝えてきた。


「えっ!これ?首から下げるの?嫌よ!!こんな高価なペンダント、失くしたりしたら大変だし、壊れでもしたら!!」


 滅多にお目にかかれない、稀少価値の高いカルラ・ルカのペンダントである。贈る側の精霊魔法を秘めることも出来るお守りとしての価値も高い。そのペンダントを身につけるなど、身がすくむ思いになるに違いないとリリアナはさらに慌てた。


「それに、アークと隣国のルーシャ王女様とのご婚約が整うならば、このペンダントは余計な疑念に繋がるわ!…やっぱり怖いし受け取れない!!ってゆーか、明日茶会ってなに!?」


 親しくしていたアークからペンダントを贈られたのだ。嬉しくないと言ったらかなり嘘になる。ただ、隣国の王女と婚約が決まりつつある彼から、カルラ・ルカのペンダントは受け取れない。


 ーーーそれに、このペンダント、絶対我が男爵領の年間の運営費をかなり超える金額だわ!父さまの金庫にしまっても安心できない!!


 男爵家の当主の金庫をもってしても、このペンダントの保管場所には不安が残る。いったい、隣国の王女と婚約の話まで持ち上がっている公爵家の長男は、なにを考えているのかと、リリアナはアークの婚約の寂しさよりも、苛立ちすら感じてきた。


「リリー姉様、どこでそんなでたらめ(婚約話)を?ユーリ兄上が他の女性を選ぶだなんて」


 慌ててパトリックがアークの婚約話の訂正するが、動揺しまくっているリリアナの頭には入ってこない。

 貴族間では、公爵令息ユーリスアークライトと隣国の王女の婚約話は、かなりの信憑性をもって噂されている。親戚の男爵令嬢のリリアナは、ユーリスアークライトにとって、ただの遊びか妹扱いで、本命は隣国の王女なのだとも噂が広まっている。


「それはあくまでも噂です。リリーお姉さま、どうかユーリお兄様の言いつけを守って。どうか、明日の茶会には必ず身につけて。このヴィヴィアンからのお願いですわ」


「いやいや…ヴィー、無理言わないで。それに、明日茶会があるだなんて聞いてないわ。アークの婚約の噂だって隣国の王女様との事なのよ。火のない所に煙は立たぬとも言うじゃない。何か信憑性のあることが起こったから帝国中の噂にもなってるのよ!」


「でも本当に、ユーリ兄上のその隣国との婚約話は…」


 こんな意味深なアクセサリーじゃなかったら、アークからの最後の贈り物として、どんなに嬉しかっただろうと、リリアナはかなり悲しくなってしまった。泣きそうになるのをアークの弟妹2人に見られたくなくて、パトリックの話を無視し、強い口調でまくし立てしまう。


「ヴィ―、ほんと無理だって。できれば、アークに気持ちだけ受け取ったって返してくれない?お願い!!」


 婚約話のある()()()からの思いがけない贈り物は、リリアナの心をひどく傷つけ、寂しくさせた。

 他の女性と婚約の整うであろう男性から貰ったカルラ・ルカのペンダントを着け、公の場に出席せよとは酷い噂が広がる上、あまりにも無責任である。

 幼い頃からいつも側にいてくれた男の子に、リリアナはいつしか淡い恋心を抱いていたが、それもついに終わりである。


 アークの婚約の噂を周りの貴族令嬢から聞いて後、自分の気持ちを少しずつ切り替えるように過ごしてきたリリアナとって、このペンダントはもはや手に持っているのも憚られた。


 リリアナは、急ぎながらもカルラ・ルカのペンダントを入っていた箱にきっちりと戻し、公爵家へお持ち帰り頂こうとヴィヴィアンに突き返した。


 そして、悲しみでひどく歪んだ顔を2人のはとこに見せたくはないと、今度も研究室から貴族令嬢らしからぬ早さで逃げ出した。

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