教えに沿って……!!
前回のあらすじ
シュウさんがいい人すぎてやばい。
シュウさんが帰って行ったので、俺は直ぐにチュートリアルを再開した。
先程の飛んだり跳ねたりの動きを繰り返し、またグレーウルフの所まで戻ってきた。
Enemy:グレーウルフ Lv.3
『グァオーーーーン!!!』
「まずは観察……!!」
耳を劈くような遠吠えと共に出現したグレーウルフに対し、俺は気を弛めることなく回避の体勢で構える。
『グァルルァ!!!』
「……おっと!!」
いきなり突進をしてきたので、俺はすぐに横に回避をする。すると、俺が避けたのに気がついたのか直ぐに体を翻し、俺に向かって鋭い爪を向けてくる。
「あっぶねぇ!!」
何とか反応して後ろに身体を強引に逸らした。
そのせいで、俺はバランスを失った。
ドサッ!という音と共に俺は尻もちを着いてしまったのだが、落ち着いている暇はない。
そこを狙ってグレーウルフが反対の手で切り裂こうとしてくる。俺は身体を捻って横に避けると、隙を与えないよう直ぐに立ち上がった。
「じっくりと観察させてもらうぜ……!!」
俺は少しの焦りを打ち消すようにそう呟くと、回避を続けてグレーウルフの行動パターンを模索し始めた。
……
…………
………………
俺がこいつと戦い始めて約十五分程たった頃、ようやく俺はパターンが見えた。
まず、グレーウルフの攻撃パターンは三つしか存在しないことが分かった。一つ目は、突進攻撃だ。
これは、俺があいつから離れている時によく使ってきた。そして、一番発動回数が多かった。いわゆる、通常攻撃に当たるものだと思う。
そして二つ目が、爪での連続攻撃。これは、一度目の攻撃を避けても二度目も防げないと意味が無い、結構危険な技だった。
最後に三つ目が、噛みつき攻撃だ。これは俺があいつに近いときによくやってきた。見る限り、この攻撃は中々素早く放ってくるので反撃が難しそうだった。
そしてもうひとつ分かったのが、こいつはコンボを決めてくる。その中でも良く見たのが、突進からの切り裂き攻撃だった。
そこで、俺は切り裂き攻撃が二連撃なのを活かして倒そう、という算段を立てた。
手筈はこうだ。
まず、あいつが突進をしてくるのでそれを横に回避する。次に、飛び掛って爪で攻撃をしてくるので、それも避ける。最後に、二回目の切り裂き攻撃を剣で受け止め、やつの体勢を崩し、そこに剣で一撃を入れる、という単純明快で、初心者の俺が思いつく限界のものだ。
正直言って、ゲームが下手レベルじゃない俺ができるとは思えない。ただ、これしか勝ち筋が見えなかったのも確かだ。なので俺はこれに賭けることにした。
「やってやる……!!」俺は自分を奮い立たせるためにそう言うと、グレーウルフと向かい合った。
『グァルルァ!!』
──突進攻撃!!
俺は左にステップを踏んで避ける。
『ガルルルルァ!!』
──爪攻撃!!
俺は一度目の爪攻撃の方向を感じ取ったので、すぐさま右に避ける。次にくる爪攻撃に備えて俺は反撃の構えをとった。
『ガァァァ!!』
俺は右手に持った天使の剣を使って爪を止めようとする。
しかし、俺の振った天使の剣は空を切った。
──失敗だ。
俺はグレーウルフの爪で切りつけられた。すると、みるみるうちにHPが減少していくのが分かった。
だがまだだ!! 職業アビリティのお陰でまだいける! あと一度でも攻撃を受けたら終わり……。でも裏を返せばもう一度、チャンスはある!!
俺は自分を鼓舞しながらもう一度グレーウルフに向かい合った。しばらく避け続けるだけになってしまったが、その時は突然訪れた。
グレーウルフが突進攻撃をしてきたので、俺は右に避け、難なく凌いだ。すると次の瞬間、爪で攻撃をしてきたのだ。
それに俺は少し驚きつつも、最後のチャンスに笑みが漏れる。
一度目の爪攻撃を避けると、二度目の爪攻撃が来た。
それを俺は右手で持った天使の剣で受ける──すると、カン!という音を立てながら純白の刀身が鋭利な爪を弾き返し、その衝撃でグレーウルフの体はグラッと揺らいだ。
──今だっ!!
第六感がそう告げたのを感じ取った俺は、すぐさま天使の剣を持ち直し、目の前で倒れかけているグレーウルフに突き出した。
「ハァァァァァァッ──!!」
ザクッ!
という鈍い音をグレーウルフを突き破った純白の刀身が発した。
その瞬間、グレーウルフは『グァァァァァァァ!!』
という悲鳴にも近い声を出した。
──それは、紛れもなく断末魔だったようで、程なくしてグレーウルフの体からポリゴンが発生した。
そしてグレーウルフは消滅した。
「やったぁぁぁぁぁぁ──っ!!」
勝った……! 俺が倒したんだ……!
ありがとうシュウさん、勝てた……! スキルも何も使わずに!!
そして俺がひとしきり叫んだ後、『チュートリアルを終了します』という無機質な声が聞こえた。
あ、そうだこれボス戦じゃなくてチュートリアルだったんだ……。
でも倒した時の高揚感と達成感は凄かったな……! もっと強くなってあの感覚をもっと味わいたい……!
俺は言い知れぬ興奮に襲われながらチュートリアルの草原から転移した。
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PN:マツリ
性別:女
称号:─
種族:大天使 Lv.1
職業:光に導く者 Lv.1
人々を正しき方向に導く心優しき天使。
【職業アビリティ】
・パーティメンバーのHPを毎秒0.5回復。
・パーティメンバー死亡時、MPを100消費して
3回まで蘇生可能。
・HPが60%以上の時、即死しない
・HPが10%以下になった時、全ステータスを
+40する。
【装備】
武器:天使の剣
頭:天使の輪
胴:天使の装束〈上〉
脚:天使の装束〈下〉
足:天使のブーツ
【ステータス】
MP:120
《汎用型》
STR:20 ★
VIT:20 ★
AGI:20 ★
DEX:20 ★
INT:20 ★
【スキル】
SP:0
《浄化》《慈愛の一撃》《堕天化》
※注:これはチュートリアルです。ボス戦ではありません。
次回、ようやく綾乃さんと合流できますね……!!
なんでこんなにかかったんだろう()
第七話もたくさんの方に読んで頂き、評価していただいて、本当にありがたい気持ちと、驚きでいっぱいです!本当にありがとうございます!
これからもよろしくお願い致します!