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《レイドクエスト: 千年木の森を守護せよ》その4

今回は一人称だと難しかったので三人称とさせて頂きました。

Side: 三人称


「はいこれ。幸運のブレスレットってアクセサリーなんだけど、確率上げたいだろうからあげるよ」そう言ってケイルがアイテム譲渡を持ちかけてきたので、マツリが了承をして受け取る。そのアクセサリーをマツリが鑑定した。


[アクセサリー]幸運のブレスレット 〈Sr〉


 装備した人に幸運を招くブレスレット。

 LUK値を30プラスする。


「凄い……ありがとな、ケイル!」

笑みを浮かべながらそう述べるとマツリは幸運のブレスレットを装備した。


「《ブレッシング》──! はい、これで幸運補正が着いたはず。頑張ってね、マツリさん」


「ありがとうございます、焼き鳥さん」

続いて焼き鳥に幸運補正魔法を掛けてもらったマツリは、礼を述べてミ=ゴの前に向かう。


自らの考えた作戦を話した後、クラウの助力もあり皆の説得に成功したのだ。



「来いよ化け物。俺が相手だ」

ミ=ゴと対峙したマツリは強腰で挑発しているように思えるが、その実こうでも言って自分を奮い立たせでもしなければ押し潰されそうなほどの重圧からやっとの思いで耐えていた。

皆の命を背負っている責任感、目の前の自分と一回りも二回りもそれ以上に強い敵への恐怖。


責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖責任恐怖


──心情をその二つが塗り固めたようでカタカタとマツリが震え出したかと思いきや、不敵に笑みを浮かべこのような事を呟いた。


「これが武者震いか……上等だ!!」


重圧の中でそれから目を逸らすために自分の中で強引に結論づけたかのように見えるが、彼は本気でそう思っているのだ。



そう、彼はアホなのだ。

それも普段はそんな素振りを見せない一番厄介なタイプのアホなのだ。


『─────!!!』

と、ここでミ=ゴが動きを見せた。


「……ッ!?」

ピリピリと空間が震えるかのような叫びに、思わずマツリが息を飲み、一歩後ずさる。


『────!』

その瞬間を見逃すまいとミ=ゴが一撃を入れるべくマツリに向かって腕を伸ばした。レベル差が十倍以上という圧倒的な相手に攻撃を受けるとどうなるか。普通の場合、即死だ。あくまでも、普通の場合は(・・・・・・)、だが。


ミ=ゴによって振り下ろされた腕が凄まじい音を立てながらマツリに直撃する。が、舞い上がった砂煙の中からなんてこと無かったかのようにマツリが現れる。


「驚いたか? 化け物。今のは即死回避つってさ、一回の戦いで一回しか発動しないんだが即死攻撃でも耐えるんだよ!!」

そう、光に導く者の職業アビリティで一度目の攻撃を防いだのだ。しかしこれでチャンスはあと二回のみ。それを良く分かっている彼も心の中では少し焦っていた。それでいながらどこか冷静だった彼はミ=ゴが状況を理解出来ていないうちに畳み掛ける。


「《逃走本能》! からの《泥弾丸》──ッ!!」


逃走本能でAGIを上げて泥弾丸を放つことでより弾速が上がった弾丸がミ=ゴの触角に次々と当たって行く。ベチョっと触角に泥が付いていくと、ミ=ゴは奇声を上げながら敵を排除しようと攻撃を始めた。


しかし触角を汚された事により感覚が鈍ったのか、ミ=ゴはマツリが居る場所とまるで違う所に攻撃を続けている。その様子を見て堪らずよっしゃぁ! とゴリラッパが声を上げてガッツポーズをとった。


「《刺突の構え》……!!」

そしてその攻撃の隙を突いてマツリは少しずつではあるが触角を潰して行く。


「……まずいなぁ。思ったより早い……」その様子を見ていたスケがそう零す。森のヌシとの戦いの時は支援要員だったが戦闘を観察してみると前に比べて的確に敵の隙をつき、また動きも無駄が少なくなっていた。


「え、何か不味いの?」



「いや、何でもないさ」スケの零した言葉に疑問を返すアヤだったが、はぐらかされた事で踏み込むな、という事を理解しそれ以上詮索はしないでおいた。


「……ふぅん」ただ怪しげな目で見つめながらそう呟くだけに留めた。





そして触角が残り二つとなった時、急にミ=ゴが動きを変えた。


『────────────!!!』

そのミ=ゴの急な変化に回避が不可能だと悟ったマツリは、ここで二度目の勝負に出た。


「《絶対防壁》──ッ!!」

一度だけ確実に攻撃を防ぐ事が出来る代わりに種族レベルが一減少し、VITが一時的に0になる危険な賭けとなるスキル、絶対防壁を無けなしのSPを使用して戦闘の前に取得しておいたのだ。


避けられないと判断したのは正解だったようで、ミ=ゴの蹴りが直撃する。が、カン! という甲高い金属同士がぶつかったような音が鳴り、マツリの身体を衝撃から防ぐように張られた薄い青色の膜が衝撃を吸収し、マツリの元にダメージが入る前に砕け散った。


──しかし裏を返せば絶対防壁が発動したということは攻撃反射は起こらなかったという事。つまり二回目も失敗である。


(まずいまずいまずい……!! もうあと一回しかない!)


絶対防壁が発動した様を見たマツリや、皆が焦る。しかし悠長に時間を稼いだからと言って今度は何か意味がある訳では無い。何故ならマツリの言う3回目のチャンスというのは──




──ただの賭けのことだから。



今回はスキルでもアビリティでも何でもない、純粋な賭けだ。失敗するとレイドクエスト自体が失敗となる。しかし成功するとレイドクエスト自体の成功確率がグンと上がる。



皆が見守る中、マツリは続けざまにミ=ゴが振り下ろす腕を避けようともせず、ミ=ゴの真正面に立つ。


「頼む……!!」

そう呟くと、祈るように目を閉じたマツリ。

そこに腕が振り下ろされた──




パリン!






が、何かが割れたような音がして、マツリが恐る恐る目を開けると──


『───────────!!!!!』


マツリの絶対防壁のような何かの膜が割れたようで、パラパラと結晶のようなものが散って行くと共に今までで一番凄まじい叫び声を上げてミ=ゴが地面に膝を着いたのを見た。


そしてマツリは生きている。つまり、攻撃反射が成功した、という事だ。


その事実を理解した皆が歓声を上げるも、まだ完全に倒した訳では無い。興奮しながらもそこを理解しているマツリは──


「ほいっと! じゃあなミ=ゴ、後は他の奴らの仕事だ!!」

泥爆弾を投げて怯ませ、逃走本能で上昇しているAGIを利用しながらそそくさとその場を離れた。


「だってさ〜。それじゃあ行こうかーっ!」

マツリの言葉を受け、大声でそう言うと駆け出していくクラウ。その後に皆が続いて行く。


「おお! 攻撃が通るぞ!!」

どうやらマツリが割った膜が攻撃を吸収していたようで今までとは比べ物にならないほど攻撃が通った。それは物理だけでなく、魔法も。刺突攻撃だけでなく、飛び道具も。

その上今はレイドクエスト。多くのプレイヤーが集まっているのだ。これが意味すること。それは──


形勢逆転、リンチとも取れるダメージがミ=ゴに与えられるという事だ。


「《影隠》……《影殺》──ッ!!」大量の影の刃が襲い、


「《イリュージョントランプ》! そらそらァッ!!」縦横無尽にトランプが切り裂き、


「《重量操作ウエイトオペレーション・ツイスト》!!!」重量を操作する魔法で捻じ曲げ、


「……はあっ!!」純粋な火力で怒涛の連撃を当て、


「《矢ノ雨・破魔》……」光を纏った矢の雨を降り注ぎ、


「《魔法拳(まほうけん)爆焔(ばくえん)》──! おりゃおりゃおりゃおりゃ……おりゃぁ!!」炎を纏った拳を浴びせた。


『─────────!! 』

やがて暴れ回るプレイヤー達の攻撃を受け続けたミ=ゴはもはや悲鳴とも取れる叫び声を上げ、動きを止めた。



《レイドクエスト: 千年木の森を守護せよ クリア》


-リザルト-


経過時間: 18分 50pt


ミ=ゴ討伐成功 100pt


司令官: 生存 100pt

部隊長: 10/10 全員生存 10×20=200pt


合計pt: 450


総合評価: A


【参加者全員にAランク相当の報酬が分配されます】


【ワールドアナウンス: 千年木の森におけるレイドクエストがクリアされました】


レイドクエスト: 千年木の森を守護せよ


勝利条件: ミ=ゴの討伐、または撃退


敗北条件: 司令官の死亡、または部隊長の全滅



司令官: マツリ


部隊長: スケ アヤ サルトビ 焼き鳥 クラウ ゴリラッパ ヒュン・タマーガー ケイル テリテラ 乙音



「勝ったああああああああああ──っ!!!」

目の前に浮かんだ表示を見たマツリは思わず叫んだが、それを咎める者は誰一人としておらず逆にマツリに続くように口々に叫びを上げた。

ステータス確認を入れると非常に長くなったので分割して倒した所でレイドクエストは終了とさせて頂きます。


また次話はステータス確認となる予定です。

ステータス確認→SS→掲示板という流れを予定しておりますので、掲示板を楽しみにされている方は少しお待ち下さい。

ちなみにSSでは社畜のあの人とその周りの話を予定しております。

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