表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/32

レイドクエスト発生

※新キャラが思ったより多くなりましたが、全員の事を覚えきれなくても大丈夫です。

【緊急アナウンス《レイドクエスト発生》: 千年木の森にてWouldEnemy ミ=ゴが解き放たれました。今すぐ向かって下さい】


……は? これヤバい事になってね?


「ねえ、これどういう事!?」

俺がそう聞くが誰も答えない。その代わりに場を沈黙が支配する。


皆困惑しているのか……?


「レイドクエスト……これは燃えるねぇ……!!」

どうやら俺がそう思ったのは杞憂だったようだ。しばしの沈黙の後、焼き鳥さんは嬉々とした表情でそう言った。


「サルトビ! 掲示板への書き込みは!?」


「終わったでござる! 既にこちらに向かっているのが約三人──「違うよ〜」

いつの間にかここに来ていたサルトビがそう言ったのと同時に、なにやら間延びした声が聞こえてきた。


「俺が来たから合計で四人なんだけど〜?」

声の主の男性は、何やら道化師の様な服に身を包み、ゆらゆらと身体を揺すりながら話していた。


「──!? 貴方は……!?」

その男性を見たアヤさんが何かに気がついたようで驚きはじめた。


「ああ、自己紹介がまだだったね〜 。俺の名前はクラウ。以後お見知り置きを、ってね!」


「!?」


クラウという名を男性が仰々しくお辞儀をして見せながら口にした瞬間、場の空気が凍った。そして俺が周りを見てみると、皆の表情は驚きで包まれていた。


「クラウって……誰?」


「これはこれはゴメンね〜 。一応俺、《十面相》って呼ばれてるんだけど……そっちは聞いた事な〜い?」

クラウが俺の言葉に反応して、二つ名らしき物を教えてきたが、あいにく俺は始めたてだから知らない。


「その様子だと知らないっぽいね〜 。あんまり自分から言いたくは無いんだけど〜 。一応俺、PvPイベントで初代王者なんだ〜」


……はい?


「PvP……初代王者……つまりこのゲームで最強!? マジですか!?」


「マジだよ〜」

こんな格好の人が最強……やっぱり人は見た目だけで判断しちゃ駄目、って事だな。


「で〜 、他の参戦者の人達も来てるみたいだけど話しかけなくてもいいの〜司令官(・・・)?」


……あれ? 俺を指さしてる様な気がするのだが……後ろの人かな、横に移動しよう。


……俺が動くと指も動いた気がするのだが……試しに左、右、左……うん、俺だったわ。


「なんで俺が!?」


「ゴメンね〜 。俺っ娘はタイプじゃないんだ〜」

いや初対面の他人の性癖なんて知らねえよ。


「でも、ほら。コレ見てみてよ〜」

そう言ってクラウが俺の目の前にクエスト確認画面を出した。



レイドクエスト: 千年木の森を守護せよ


勝利条件: ミ=ゴを討伐、または退ける。

敗北条件: 司令官が死亡、または部隊長の全滅。


司令官: マツリ

部隊長:アヤ サルトビ スケ 焼き鳥 クラウ ケイル ヒュン・タマーガー テリテラ ゴリラッパ 乙音


レイドクエストについて


・参加プレイヤーは部隊長計10名の班に参加締切後五分以内に別れる(なおそれまでに無理だった場合ランダム)

・司令官と部隊長は連絡を取る事が出来る

・開戦から三十分以内に敵のHPを0にすれば討伐。それ以降にHPを0にした場合は退けた扱いとなる。

・また、退けた扱いの敵は遭遇する可能性がある

・レイドクエスト中は行動可能範囲が縛られる

・レイドクエスト中は参加プレイヤーは皆一つのパーティー扱いになる




嘘じゃん。俺、司令官……?


「はいじゃあ司令官の所に部隊長達集まって〜」

クラウがそう言ったせいで俺の動揺が収まらないうちにぞろぞろとアヤさん達が俺の元に来た。


「じゃあ自己紹介から頼むよ〜司令官!」

クラウがニヤニヤしながらそう言ってきた。クッソ腹立つ。


「司令官を務めさせて頂きますマツリです。初心者ですがよろしくお願いします」俺はそう言うと身体を曲げてお辞儀をする。


「え、うそ……マツリちゃんが……真面目!?」

ちょっと、どういう意味ですかねアヤさん。


「ハイそこぉ! いつもは不真面目みたいな言い方するんじゃなぁい!! 俺は常に本気だ!」


「ふふっ……この司令官なら、無茶振りはして来なさそうで良かったわぁ……あ、うちは乙音(おとね)と申します。どうぞよしなに」赤色の着物を着た女の人がそう挨拶をしてきた。


「あ、ご丁寧にどうも」

つい俺はそれに合わせてペコペコしてしまう。


なんで丁寧に挨拶されるとこっちが申し訳ない気持ちになるんだろうね、ほんと。


「じゃ、次は僕かな。僕はケイル。薬師をやってるよ。よろしくね、マツリさん!」緑色の服のベルトにジャラジャラとポーション瓶をぶら下げている中学生と思われる童顔の男の子が挨拶をしてきた。


「こちらこそよろしくな、ケイル!」

俺はケイルにそう挨拶を返した。すると何故かケイルが「ハウッ!?」と言って固まった。


解せぬ。


「俺はヒュン・タマーガー!名前はあれかもしれないが中身はちゃんとした成人男性だから安心してくれ! てことでよろしくな、マツリちゃん! 」名前さぁ……どうにかならなかったのかな、この人。

この面々の中で唯一マトモ(・・・)な装備にはっきり言ってモブ顔というコンボが相まっていじられキャラと言った印象を持った俺だが、この人とはなんだか仲良くなれそうな気がした。


「こちらこそよろしくお願いします。ヒュンさん」


「じゃあ次、僕はゴリラッパ。この世界のことについて色々と調べてるギルドでマスターしてるよ。仲良くしてね、マツリさん!」名前の割に普通より少し細めな体格をしたいかにも好青年と言った顔立ちをした男性だ……一目見て分かった。この人、陽キャだ。


「次に、俺はテリテラだ。よろしく」

端的に自己紹介を終えた彼は、いかにもなガタイの良さで、多分スキルなんかには頼らない純PSプレイヤーなのだろう。偶に漫画なんかで描かれてある滲み出る強者感(オーラ)感覚ではあるが見えた。


その後、アヤさん達の自己紹介が終わり、作戦会議に入った。


「とりあえず、ゴリラッパさんの班は敵の観察、解析をお願いしたいんですけど」


「うん、構わないよ。戦いはあんまり得意じゃないからね」俺がお願いしてみると、あっさりと承諾を得ることが出来た。


本人いわく、戦いは得意じゃ無いらしい。

俺よりかは断然強いだろうけど。


俺と比べたらミジンコと銀河くらい違うとおもうよ?


「うちは正面から戦うのは苦手やけど陽動とかなら得意やさかい、そうしたいんやけど……構わん?」

和風美人のおねだり頂きました。喜んでそのようにさせて頂きます。


「はい、構いませんよ」喜び叫んでいる内心を上手く隠しつつ俺はOKを出す。


「じゃあ俺は火力係かなぁ〜」


「いや当たり前だよなぁ? クラウが支援とかに回ったら勝てない自信あるわ」ヒュンさんがネタを交えつつそう言ったが、本気で言っていることも見て取れた。


「じゃあ僕は来ている生産職の人達とポーション作ったりするよ。結構消耗するだろうし」そう言いつつケイルはチラッと横目でまだ動きを止めているミ=ゴを見た。


「私もそれが良いと思う。クラウさんとかは別として、需要に反して供給が少ないと困るからね」アヤさんがケイルの言葉に賛同する。確かに消費量は凄いことになりそうだ。


「なあ、これ生産職全投入しても足りるのか?ギリギリ足りなそうな感じがするんだが」そう、生産職と戦闘職の比率は3 : 7程で、生産が追いつかなくなる事態が起こりそうなのだ。


「ねえ」俺が質問をした後、焼き鳥さんがそう言いながら手を挙げた。


「私達もたまに作るよ。多分だけど魔法職は錬金術辺りはとってると思うんだよね」


「それは名案でござる! これなら足りそうでごさるね!」サルトビが勢いよく焼き鳥さんの意見に賛成する。おい、こいつ飼い慣らされてねえか?


「じゃあ焼き鳥さんの班は後方からの魔法攻撃と生産、って事で良い?」ありがとう陽キャ。陽キャって何故か人が話したことをつまり、とかじゃあ、とかで纏めてくれるから助かるんだよね(祷の個人的見解です)


「うん、文句なし」焼き鳥さんが満足げに頷いた。


「私とサルトビさんは斥候が得意な方だと思うから斥候兼近接攻撃役みたいなので良いと思うんだけど……」アヤさんが少し手を挙げながらそう言った。


確かにアヤさんとサルトビさんは俺が見た限りだとその役が最適だと思う。俺も推しとくか。


「アヤさんの案は良いと思う。俺も賛成」


「まあ司令官が良いなら俺はいいかな」そう言ってヒュンさんも賛成してくれた。


「拙者もそれが良いでござる! アヤ殿、別の班同士でござるが、共に頑張るでござるよ!」お、本人から了承が得られたから決定だな。


「じゃあ次いいかな、僕は攻守どちらも可能だ。だからうちの班は騎士辺りの職の人を入れて攻撃兼防御を頑張ろうと思うんだけどいいかい?」スケさんが手を挙げてそう言った。


「いや、無理」

しかし焼き鳥さんが一蹴した。


「私は錬金術をしたり魔法攻撃をしたりするからMPが持たない。今回は守りに徹して欲しい」


「焼き鳥さんがそう言うなら僕は防御班になるよ。それで良いかな?」これなら大丈夫だ。俺がうん、と頷くとほぼ同時に皆も頷く


「俺の班は雑用か? はっきり言って俺が出来そうなのは陽動くらいだぞ?」ヒュンさんはそう言ったが、俺にはやって欲しいことがある為首を横に振っておく。


「ヒュンさん達には俺が作る爆弾や生産職の方たちが作るアイテムなんかでジリジリとHPを削って行って欲しいんです。お願い出来ますか?」俺が必殺上目遣いで見つめると、「分かりました!!」と何故か敬語で返って来た。




「じゃあ俺は司令官の防衛か?」消去法で行くとあとはそれしか残らないため、テリテラさんは俺の防衛をする事になる。


「うん、そうなるね〜」


「分かった。やるだけやる」クラウが肯定すると、テリテラさんはそう言った。


……


…………


………………



「という事で、皆、位置に着いたか!?」

俺が無線でそれぞれ作戦で決めた持ち場に着いたかを確認すると、部隊長全員から着いた、と報告があった。


「じゃあ、行くぞ──」

俺はスゥ──っと思いっきり息を吸い込み、レイドクエスト開始のキーになる言葉を発する。

はっきり言って恥ずかしいが俺の黒歴史を掘り返す程度は必要な犠牲だろう。


「勇気ある天から降りし者どもよ! この地を荒さんとする魔の者を殲滅せよ! 決して蹂躙と破壊を許すな! 勝利の神は我らと共に!!」




《レイドクエスト: 千年木の森を守護せよ 開始》



────────────────────────


部隊長


サルトビ班:斥候兼攻撃

アヤ班:斥候兼攻撃

スケ班:防御

焼き鳥班:支援兼後方攻撃

クラウ班:前線攻撃

ヒュン・タマーガー班:撹乱

ケイル班:物資支援

ゴリラッパ班:解析

テリテラ班:司令官防衛

乙音班:陽動


司令官


マツリ:情報伝達

最後に今回の作戦で決めた役割が書いてありました。それもこれもあの陽キャのおかげです。


次回からレイドでの戦闘が始まります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ