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サルトビ

今回、後半ちょっと重めになります


※10/23 現実サルトビの一人称を僕→俺に変更。

俺達は森から出て始まりの街に向かっている。

その最中、俺はふと思った。


──タメ口で話してるけど大丈夫なのか……?


一応聞くだけ聞くとしよう。もし駄目だったら後が怖いからな、うん。


「なあサルトビ、今更だけどタメ口で大丈夫なのか?」

俺がそう聞くとサルトビは歩みを止め、こちらを向いた。


──あ、やったわ。


「すみませんでし──「良いでござる! 大歓迎でござるよ!!」


「……へ? あ、ありがとう……じ、じゃあサルトビ、なんでお前はあそこにいたんだ?」


いい人で良かった。

俺も俺で危うく日本古来から伝わる謝罪の最高峰、DOGEZAをする所だった。


もう少し自重しよう、自重。


……無理だわ。息止めたのと同じレベルの辛さだわ。


「うわあぁぁぁぁぁぁ!!」


「……だ、大丈夫でござるか……?」おっと声に漏れていたようだ。


失敬失敬──あのー珍獣を見るような目で見るのはやめていただきたいのですがそれは……


まあいいか。本題に入ろう。


「ところで、なんであそこにいたんだ?」


「実は拙者、スケと同じギルドなんでござる。それでうちのギルドの焼き鳥っていうメンバーに、マツリ殿にサポーターとして臨時パーティを組んで欲しい、って伝えてと言われたでござる!」


スケさんと同じギルドだったのかよ……


え、やば。包囲網完成してんじゃん。俺このまま取り込まれるの……?

いやいや、今はそんな事じゃなくて臨時パーティの事について詳しく聞かなければ。


「サポート、って何をすればいいんだ?」

俺がそう聞くとサルトビはうーん、と唸って見せてから口を開いた。


「拙者にもよく分からぬでござる……拙者もいいかどうか聞いてこいとしか言われてないので……」


あー、要するにサルトビは斥候みたいな役割だったのかな?

臨時パーティねぇ……。アリかナシで言えば……ありになるのかなぁ……


物は試しって言うし……やってみるかな!


「分かった、って伝えてくれないか? 何事も経験、だしな!」

俺がそう言うとサルトビは驚いたように口をパクパクさせてから


「オッケーでござる! 感謝するマツリ殿!!」


と言ってどこかに走り去って行った。


……嵐のような人だったな。


ただこの人が一番まともっていう現実に泣きたくなって来るよ……


だってロールプレイの忍者って普通にネタ枠じゃん、でもね?もうネタ枠が溢れてんのよ。


俺とアヤさんとスケさんだけでお腹いっぱいにならん?




大丈夫?





side:サルトビ


「焼き鳥殿!! オッケーもらったでござる!!」

ギルドホームに戻って、拙者はマツリ殿に許可を貰ったことを焼き鳥殿に伝えたでござる。


「──ん、ありがと。じゃあお礼」

焼き鳥殿は表情にも声にも出さないタイプでござるが

今回の報告は嬉しかったようで微妙に顔を綻ばせた。でも今の拙者にはどーでもいいでござる。


……これでようやく、拙者のクナイもランクアップでござる!



「はい、これ。ちょっと改良した」

そう言って焼き鳥殿は毒塗りクナイを渡してくれたでござる。


「おお! ありがたいでござる!」


「ん、良い。これくらい覚えたから材料があれば幾らでも作れる」


実は彼女は重量魔法の使い手でありながら錬金術師でもあるのでござる。


多分このゲームでは一二を争うレベルの使い手でござるな。毎回拙者は依頼のお礼にクナイや手裏剣なんかを貰っているでござる。


「用件はおわり。今回もありがとね」


「またよろしく頼むでござるよ」


そう告げるとすぐにログアウトする。


次の瞬間にはカチッ、カチッと小刻みに目覚まし時計の秒針がなる音と、ゴォーというエアコンの少し五月蝿い音が鳴るだけの見慣れた部屋に戻っていた。


「……はぁ」


と思わずため息をついてしまった()は、のろのろとベッドから立ち上がると、ガチャリと音を立てて部屋のドアを開ける。


俺の部屋の前の廊下には、


ラップで包まれたおにぎりが二個、皿の上に置いてあった。


『ちゃんと食べてね』


というメッセージ付きで。


家で好きにさせてもらっているのだから母さんの思いを無下に出来るはずもなく、部屋の中に持って入って食べた。


「ゲームの中の人達が見たらなんて言うんだろうなぁ……」


不登校の俺の現状を見て、あの人たちがどう言うかを想像しながら。

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