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初恋にさようなら  作者: さき太
7/15

 (とおる)の来訪を受けてから毎日、なんだかんだと一日一回は透とメッセージのやりとりをするようになって結希(ゆうき)は不思議な感じがした。透とするのは別に大したことのない他愛のないやりとり。今日はなに食べただの、次は何食べたいだのとかがほとんどで、じゃあ今度来たときはそれ作ってあげるよなんて送ると、ジト目のキャラクターがテンション低そうにダブルピースしてイェーイなんて言ってる画像が添付されてきて、これ透に似てるなんて思って思わず吹き出してしまったこともあった。

 透が(あきら)にも連絡先を教えた様で、晃からもやたらメッセージが入って来て。最初はこの前は悪かっただのなんだのと、お互いに謝り合ってぎこちなくて。でも、それが過ぎてしまえば、もう遠慮なしにばんばんメッセージを送ってくる晃はある意味流石だなと思う。どうでもいいメッセージにいちいち返信するのが面倒くさくて無視してると、なんで既読ついてるのに返事しねーんだよとか言ってくるのは本当にウザい。でも、そういうとこ本当変わってないななんて思いながら、仕事してるのにどうでもいい会話にそんなに付き合ってられないからとか返して、画面上で言い合いをして、そのやりとりがまた懐かしくて。結希は、これがわたしの日常だったなと思って、なんだか失ってしまった時間が戻ってきたような錯覚に陥って心がざわついた。

 二人とのやりとりが復活したと言っても、全部が全部元通りというわけじゃない。修助(しゅうすけ)との連絡は途絶えたまま、それに二人と話をしていると、二人が修助に自分と会っていることや連絡を取り合っていることは内緒にしてるんだということが伝わってきて、それがなんだか二人に悪いことをさせているような感覚になって、結希はモヤモヤした。別に悪いことをしているわけじゃない。でも、酷く後ろめたいような気持ちになる。修助のことは気にしない、そう決めたけど、でもやはり気になる自分がいて、このままで良いのかななんて思ってしまう。こうして昔と同じように二人が自分にじゃれついてきて、それを修助に内緒にしている現状を認識すると、何だか二人の気持ちが肉親である修助より自分の方にあるような気がして、あれだけ家族の繋がりを大切にしていた修助から、大切な弟達を自分が奪ってしまったような感じがして、罪悪感が湧いてくる。そして、自分はその修助の大切な家族の中には入れてもらえなかった現実を思い出して、結希はまた辛くなった。

 拭いきれないモヤモヤを抱えながらもなんだかんだ透や晃との交流を楽しんでしまって、後ろめたさが次第に薄れ、そんな日々がすっかり日常化してしまった頃、結希は職場で明るくなったと言われた。久しぶりに会ったなっちゃんにも、なんか雰囲気が柔らかくなったと言われ、二人のおかげで頑なになっていた心が解かれていっているのを実感して。二人と過ごす時間が心地よくて、夢の中にいるようで。結希はだからこそ不安になった。本当にこのままで良いのかな。そう思ってしまう。晃や透に振り回されているフリをして、一緒にいる時間を満喫して、それで。このままこの時間に溺れていたらいけないと思う。ちゃんとしなきゃな。ちゃんと。このままシュウ兄に内緒でわたしと関わらせておくわけにはいかない。なんだかんだ言っても二人はまだ未成年だし、シュウ兄が保護者なんだし。二人に話をして、ちゃんとわたしと会ってること、シュウ兄に話しをさせないと。たまたまわたしと再会して、また交流してるんだって。それでいいじゃん。それで、シュウ兄がわたしに会うな関わるなって二人に言うなら、それはそれでしかたがない。だって、わたしは家族じゃない。そう思うと結希は孤独感に苛まされて胸が苦しくなった。

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