一話:選ばれた15の剣
一千華たちは目を覚ました。見る限り広々とした空間が広がっている。誰かの宮殿、もしくは城だろうか、とヒソヒソと鋼翼が言っている。目の前には玉座があり、王らしき人物が座っていた。その王は高貴さを見せつけるように金の王冠を被っている。赤い羽織をして、黒色の鎧を身にまとっている。
他にも12人が召喚されているようだった。「なんなんだここ...」「どうしよう...」と混乱していた。
15人が話しているうちに、王と思われる人物が口を動かした。
「よく来てくれた。私はアスラ・アースラ。国王だ。突然だが魔王を倒してほしい」
「突然すぎる」「ってか俺らが来たんじゃなくてあなた達がここに連れてきたんじゃないの?」
15人が同じような文句を放った。いきなりの以来に戸惑っている者もいれば、帰りたそうな者までいる。
「どうしてこうなったかは今説明する」
そしてアスラは説明を始めた。
この世界は『ユティク』という名前で、地球のようなものだとアスラは言う。世界地図を見るとディーツという国の首都、エルベランに召喚されたようだ。ある昔に人間とルインと呼ばれた文明は対立し、戦争していた。人類、ルインはそれぞれ王国を作り、人類とルインの王を、魔王と呼びあった。そして人間は、異世界から15人の勇者を召喚し、ルインの王を倒したという。ところがルインの魔王が復活して、再び戦争になった為今日異世界から15人することになったらしい。
「お願いだ。この世界を救ってくれないだろうか?頼む」
アスラは一千華たちに頭を下げた。
雷騎は「早く俺らを元の世界に還せや!」と言った。
「貴様!国王になんて口の聞き方を!」
雷騎の反攻を阻止する兵の隣で、アスラは困惑しているようだった。彼は15人の運命と世界の運命のことを考えていた。暫く静寂になった後、アスラは衝撃の一言を放った。
「どうやって帰れるかはわからない。しかしこの世界が滅んだら裏の世界も滅んでしまうんだ」
金弥を除いた14人は驚いた顔をしているがなぜか金弥だけは不敵な笑みをうかべている。
「やるしかないかな?」
一千華がそうつぶやくと「おぉ、やってくれるのか!」とアスラは言った。
「待って」
15人の中の誰かが遮った。
「全員が同意したわけじゃない。しかも全員このことに理解した訳でもないし。なんで私たちじゃなければいけなかったのか、そこを示してくれません?」
「そ...それは...」
アスラは黙ってしまったが、ある一人の召喚士の男が説明してくれた。
彼曰くこの世界には古代魔法という過去の王が遺した魔法が存在していてその一つの魔法【異界召喚】という魔法でその派生魔法、【指定召喚】を使用し、魔王を倒せる素質を持つ15人を召喚して今に至るようだ。
「私たちに素質があろうと、なんか納得いきません...」
「これは仕方の無いことなのだ!君たちの定められた、運命そのものだ。選ばれてから文句を言っても何も変わらないだろう」
「でも...!」
何かを言いたげにしている誰かのもとに、アスラは行った。
「君の言っていることは分からなくもない。私にも、選ばれた君たちを守らなければならないという、義務があるのだ。どうか、理解してくれ」
「やるしかないってことか?」
「そのようだね。あと帰る手段ってあるのかな」
そう誰かが言うと、アスラは続いてこう言った。
「今のところは、はっきりしていないが、時期に見つかるだろう。まだユティクには、私たちの知りえないことが沢山あるからな」
「そうですか...。絶対この世界を助けて、無事に帰るんだ」
15人が静かに頷く。
「早速エルベラン兵団のところに連れていくとするか。おい、15人を送ってやってくれ」
「はっ」
アスラがそう言うと2人の魔法使いは魔法陣を展開して「テレポート」と言い、15人はエルベラン兵団の元へ転移された。