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初めてのデート その2

 電気街の街道に溢れる個性豊かなコスプレイヤーたち。

 推しの二次元アイドルから、オリジナル創作の衣装まで、その姿は様々だ。

 健太郎は先日作成した人気キャラクターの軍制服を着こんでいた。

 「へへへ、今回は反撃のユニバース版だ!」

 自慢げに胸を張る健太郎。

 衣装の出来栄えから、かなりの熱意がこもった力作ともいえる。

 「だったら私も、魔法少女・ロジカルえみりの、えみりちゃん! それもセカンドシーズンのエクステンドアッシュモードです!」

 キューンも負けじと身に着けている衣装を自慢し返した。

 魔法少女ロジカルえみりは、深夜帯で放送された熱血美少女バトルアクションアニメだ。

 ファーストシーズンでは、主人公・高瀬えみりが、魔法行使システムを手にし、それを使って悪事を働く後の親友となるアリスと戦い、その後現れた黒幕であるアリスの母親はえみりの放った一撃で倒され、えみりに復讐を誓うと言いながら消滅したシーンは今も印象深い。

 ラストシーンではお互いが友情を結んだと言う演出では多くのファンが泣いたらしい。

 それから半年後に放送されたセカンドシーズンでは、アリスの母が闇の魔獣軍団を従えて地球全土に総攻撃をかけ、えみりたちは大ピンチに陥る。

 その時、えみりとアリスの魔法行使システムに隠された機能・エクステンドプログラムによって、パワーアップを遂げた。

 さらに、地球連邦軍が極秘裏に開発した対有事用巨大ロボット「ギガトンガー」を操る現在放送中のロボットアニメ「豪鉄魔神ギガトンガー」の主人公・新堂アキラが救援に駆け付けた。

 最終回でアキラと力を合わせてえみりたちは巨大魔獣と化したアリスの母親を撃破。

 ギガトンガーにとどめを刺された際、「私の復讐がこんな機械人形ごときに……!」と言う捨て台詞と共に消滅したシーンは、現在でも賛否両論だ。

 ラストシーンでは、これからは共に戦おうと言う三人の誓いに心を熱くしたファンも数多くいた。

 話を戻そう。

 「ぜひ、写真を撮らせてください!!」

 「僕からもぜひ!!」

 蟻がたかるように群がるカメラマンの群れ。

 「はいはい、みんな落ち着いて」

 「私たちの写真が撮りたい方は、仲良く並んでくださいね!」

 健太郎たちに言われてカメラマンたちは行儀よく並んだ。

 「それじゃ、撮るよ! はい、チーズ!」

 カメラマンたちの声に合わせて、健太郎たちはポーズをとる。

 シャッターを切る音とフラッシュの光が辺りを包み込む。

 そんな喧騒的な雰囲気の中、健太郎とキューンはこの雰囲気を思いっきり楽しんだ。


 開催時期が長い秋葉原コスプレ電気街祭は、全国から多くのコスプレイヤーが集まるコスプレの祭典の一つである。

 地方からくるレイヤーもいれば、海外からわざわざやってくる者までいる。

 言い換えれば、国内外のコスプレイヤーが秋葉原に集結すると言うわけだ。

 二次元から創作まで、様々な衣装を作って楽しむのがコスプレイヤーだが、見方を変えれば、犯罪者の予備軍としてとらえることもできる。

 榎園代表を支持する左翼の人間たちが一例ともいえる。

 彼らは現政権の打倒を掲げているが、それと同時に野党と共同で健全な社会づくりを目指している。

 その為には、オタク文化の完全排除を訴える物たちがいる。

 神田通りに集う左翼の人々。

 「我々は、オタク文化を許さない!」

 「オタク文化、追放!!」

 「健全な社会を、返せ!!」

 などと声を上げて行進し始めた。

 そして、左翼たちが電気街祭の会場の近くをまとわりつくように周り始める。

 その一方で、健太郎たちは呑気にカメラマンたちの写真撮影に応えている。

 何気なく撮影に従事していると、

 「コスプレイベント、今すぐ中止!」

 「子供たちの未来を、壊すな!」

 「コスプレイヤーは、今すぐ出て行け!」

 遠くで左翼たちの罵声が響く。

 「ヤダなぁ。 左翼の連中は」

 行進を続ける左翼を横目に、健太郎はそうぼやいた。

 とりあえず無視して、仮設更衣室へと向かった。


 「もう、左翼の人たちって、なんであんなに身勝手なの!?」

 キューンも私服に着替えて唇を尖らせた。

 「確かに、自分たちなりのドクトリンがあってこそだな」

 健太郎も少しため息を吐く。

 「もしかしたら、私の父もオタク文化を排除するための政治活動をしているのかな?」

 キューンが少し暗い表情を見せる。

 「君のお父さんは、野党議員なの?」

 「ええ。 父はオタク文化排斥運動を支援する共産党議員。 母は表現の自由廃止を訴える社民党員。 私はそんな両親が嫌で、縁を切って家を出たの」

 キューンは少し明るくなって健太郎の質問に答えた。

 「その後、友達が私の生活費を援助してもらって、夢だったコスプレイヤーの道に入ることが出来たの!」

 「そうだったんだ」

 キューンの説明に、健太郎は納得した。

 「ささ、まだまだお祭りはこれからだから、遠慮なく楽しみましょう!!」

 健太郎の手を握ったキューンはその手を引っ張って走り出す。

 「うわわわっ、ちょっと待ってくれ!!」

 健太郎は少し嬉しそうな表情でキューンについていった。

 安売りで賑わう電気街。

 量販店から小売店まで、様々な値引きやお買い得商品を猛烈にアピールしている。

 訪れた人々は、目当ての物や親族などへの土産品を購入したりしている。

 中には日本製が品質も高いという理由で大量購入し、後日それを高値で売ろうと企む転売業者も少なからずいる。

 そう言う輩はご退去願いたいのが世の常。

 健太郎たちは、活気渦巻く電気街でウィンドウショッピングを楽しんでいた。

 「今年のコスプレ電気街祭、賑わっているな」

「いつもより、活気があるわね」

 今もなお、電気街は賑わいを見せる。

 そんな中、二人はEXEストア・秋葉原本店を訪れる。

 その中はコスプレ電気街祭に合わせたフェアが開催され、アニメ関連グッズがお買い得価格で所狭しと陳列されている。

 「おお! ロジカルえみりの総集編ブルーレイが二巻セットで税込み三八〇九円だ!」

 「え、マジ!?」

 健太郎が偶然手に取ったブルーレイのセットを見て、キューンは驚愕の表情を見せた。

 「このブルーレイ、新規映像も追加してあって、ギガトンガーの活躍度合いも増している?」

 「でも、なんで最後にロボットが出るのかが不思議でしょうがないんだけど?」

 二人は少し口論気味になるが、

 「そう言う見方もあるよね」

 そう言って受け流す健太郎だった。


 「まだお昼まで少し時間があるけど、どうする?」

 健太郎が時計を確認して、キューンに尋ねる。

 「ちょっと、買い物がしたいかな?」

 キューンは、小悪魔チックなウィンクでその質問に答える。

 「じゃぁ、世界のレディオヒルズへ行くか! あそこはオタク文化販売発祥の店だからな!!」

 「はい!!」

 二人は軽やかな足取りである商業施設へ向かった。

 その施設の名は、レディオヒルズ。

 昭和四〇年ごろから秋葉原に我ありと佇む総合量販商業施設だ。

 当初は前身であるラジオ天国として、ラジオから電化製品の部品まで取り揃えていたが、近年の需要の変化に合わせて大規模建て替え工事が行われ、現在に至る。

 その中には当初から経営している店や、大手玩具メーカーの直売店など、様々な店がひしめき合っている。

 「わぁ、山吹屋ストア、以前よりかなり品ぞろえが増えてる!」

 かわいいキャラクター商品のラインナップに、興奮するキューン。

 「買いたいものある? 僕が買ってあげるけど」

 「本当ですか!? やった――――!」

 キューンは健太郎の気遣いに喜びを隠せない。

 「どれにしようかな?」

 目移りしながら品定めをするキューン。

 「さてと、俺が買うべきものは……」

 健太郎も、自分の買う物を吟味する。

 「お、スーパー魔女っ娘大戦X2の主人公・南はるこたんの水着フィギュア! しかも完全受注限定の超レア物、これで税込み一九八〇〇円は罪悪感が半端なく出る価格だ!」

 美少女フィギュアの完成サンプルに興奮する健太郎。

 やはりエリートでオタクな人間は、一万越えの商品を安く感じているのだろう。

 「ジンジャーさん!」

 不意に響くキューンの声。

 「キューンちゃん、決まったのかい?」

 健太郎は彼女の下へ歩み寄る。

 「はい、私はこのギャラたんのペアマスコットにしました!」

 「ギャラクシーバレットファンタジアのマスコットはグッズでも人気あるからな」

 ギャラクシーバレットファンタジア、通称ギャラバレは、サイバージェネシスの主力サービスとして展開する世界一億人が遊ぶMMORPGだ。

 ファンタジーとSFの世界観が融合したこのゲームは、カスタマイズ性と遊びやすさの点でゲーム評論家から高い評価をもらい、日本が生んだ世界的オンラインゲームとして今なお人気が衰えない作品だ。

 「僕も、買う物決まったよ。 会計しておくよ」

 「ありがとうございます!」

 キューンが大はしゃぎする中、健太郎はクレジット一括払いで会計を済ませた。

 ヒルズを出ると、何やら騒がしい様子であることに二人は気付いた。

 「なんだ?」

 「行ってみましょう!」

 健太郎とキューンは騒がしい声がする方向へ向かうと、

 「我々はこのイベントの中止を、主催者に断固として要求する!!」

 「そう言われても、正式な手続きがないと……」

 運営側と左翼の人々が中止を巡って口論していた。

 「即刻な中止を要求しているのです! そうしなければ、我々の子供たちはオタク文化に心を汚され、犯罪の道に走ってしまう! あなた方はそんな世の中にしたいのですか!?」

 「だけど、世界中のコスプレイヤーたちが……!」

 激しく口論していると、

 「左翼派の皆さん、直ちにこの場から退去してください。 さもなければ、皆さんを威力業務妨害で逮捕致します!」

 騒ぎを聞きつけた警視庁交通課の巡査たちが左翼派集団に警告をする。

 それを聞いた左翼派たちは、そそくさと退散する。

 そこはやはり人なのか、逮捕されたら一たまりもない。

 彼らは、それを理解していた。


 騒ぎも収拾し、何事が無かったかのように活気を取り戻す電気街。

 「警察が来なかったら、一時はどうなることやら……」

 健太郎は冷や汗をかきながらこの日の飲食店を探した。

 「でも、誰が通報したのかな?」

 キューンが健太郎にそんな答えを出した途端、

 「きゃっ!」

 「痛いなぁ、気をつけてよ」

 太った男とぶつかった。

 男は軽く注意してこの場から去った。

 「何だったんだ?」

 「さぁ……」

 二人は何事もなかったの様に歩き出す。

 しかし、その太った男は、とんでもないことをしでかすことになることを健太郎とキューンは知る由もなかった。

 お店を探していると、あるステーキ店に目が留まった。

 「お、びっくりステーキが開いてる! キューンちゃん、そこでランチしようか!!」

 「あの立ち食いで話題のびっくりステーキですか!? 嬉しい! 私、一度でいいから行ってみたかったんですぅ!!」

 健太郎とキューンは、意気揚々でびっくりステーキ・秋葉原電気街店に足を運んだ。

 この店は、立ち食いスタイルでびっくりするほどのボリュームと価格で提供する人気チェーン店だ。

 「いらっしゃいませ! 二名様で?」

 「はい」

 「では、番号札をお渡ししますので、空いているテーブルへどうぞ」

 店員から番号札をもらい、二人は空いているテーブルへ向かった。

 「何食べる?」

 キューンにこんな質問をする健太郎。

 「私、ワイルドリブロース三〇〇gで!」

 キューンは食べたかったステーキを注文するよう催促した。

 「了解。 すみません、ワイルドリブロース三〇〇と、ガーリックランチヒレステーキ二〇〇をそれぞれレアで!」

 「かしこまりました」

 健太郎の注文を受け、厨房の店員たちが美味しそうにステーキを焼き始めた。

 「楽しみだね」

 「はい! こうして、男の人と初めてご飯食べるんですもの」

 二人の初デートは、まだまだ終わりそうになかった。

ますます、盛り上がりを見せる中、私も頑張らなくてはと思います!!

なんだかんだで第4話!

これからが始まりです。

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