第4話 『エルフの秘薬』
「この魔物の数、キリがないぞ!」
風魔法で魔物を切り裂きながら言うラン
「ここを抜けたら洞窟だから、あと少し!」
オークの群れに行く手を塞がれてしまった…
あの時の光の魔法が使えたら…
「ラン!魔法ってどうやって使うんだ?」
「魔法?使えるのか?魔法は感覚的な物だから何とも…。それに教えてる時間もなさそうだぜ…」
オークの群れに囲まれた。
ここを打開するには魔法しかない…
あの時の感覚を…思い出せ…!
光の身体から白い光の様な蒸気が湧き出ると
ランの目にも止まらぬ速さでオークを一掃した
「光…今のお前がやったのか…?」
ポカンと口を開けたラン
「何となくやってみたら…できちゃった」
そう言うと膝から崩れ落ちる様に倒れた
「ごめん、力使ったら体が重くて」
心配するランに大丈夫と手でレクチャーする
「驚いたよ!魔法使えたんだな…しかも無属性魔法か」
ランもあぐらをかいて座った
「無属性魔法って珍しいのか?」
「ああ、無属性魔法は固有魔法とも言ってな…光が使ったのは肉体強化系の固有魔法だろう。固有魔法は簡単に使える代物じゃないんだよ」
ランはそう言い終わると光の顔をジッと見た
「もしてかして、お前…」
途中まで言いかけたランだが
その言葉の続きを言うことはなかった
「そろそろ洞窟に入ろう。早く秘薬を持ち帰らないといけない。」
立ち上がると2人は洞窟に歩き出した
洞窟は暗く音が響く様な場所だった
「なんでこんな暗くて遠い所に大事な秘薬を隠したんだろうなぁ…」
小言を言うラン
「早く秘薬を探そう。」
何か…凄く嫌な予感がする
「これじゃないか?」
洞窟の奥にある祭壇の上に秘薬はあった
「よし、早く戻ろう。村が心配だ」
ランと光は祭壇を後にしたその時
「…もう帰っちゃうの?」
祭壇の方から不気味な女の声がする
「誰だ…?」
光とランは戦闘体勢に入る
祭壇の上に座る不気味な声の女は
値踏みする様に光とランを見つめる
「君が特異者のタチバナかぁ…」
光の方を指差す女
驚いた顔でランに見られたが気付かないフリをした
「…特異者に恨みでもあるのか?」
不気味な笑い声を洞窟に響かせる女
「恨みは無いけど、目障りなんだよねぇ」
そう言い放つと手から黒いモヤモヤが出現し
オークが召喚された
「オークの大量発生はお前が原因だったのか?」
鞘から剣を抜くと光の速さでオークを一掃した
「それが固有魔法かぁ…怖い怖い!怒らないでよ」
笑いながら言う女
「君はまだ、この世界のこと何も知らないんだよ…。」
小声でボソッとそう言い放つと
「そろそろ時間稼ぎは良いかな!もう帰っていいよ!」
手を叩きながら笑う
「光…ここは引こう。村に戻って秘薬を使うのが先だ。こいつの事は後で考えよう」
確かに村のみんなが心配だったが
それ以上に何か嫌な予感がしていた
「…お前の名前は?」
祭壇に座る女に尋ねると
「メイビイ・クロウ」
そう言い放つと祭壇から姿が消えていた
洞窟から脱出し村に戻ると
信じられない光景が広がっていた
「村が…燃えてる。」
ランが村に走っていく
罠だったのか…?
最初から何かおかしいと思ってた
医者が病でいないこと
村の主力を病と秘薬の回収で分断し
その間に村を襲う…
全て計画的な罠だったのか…
メイビイの仕業か…?許せない。
燃える村を見ながら考え事をしてたが
ランの言葉で目が覚めた
「光!!手伝ってくれ!!妹がまだ生きてるんだ!」
足が崩れた木材に挟まれてる
酷い火傷だ…このままだと…
光は肉体強化で木材を退けると
「ラン。秘薬をサーニャに使え。手遅れになる前に」
エルフの秘薬をサーニャの身体に振り掛けると
サーニャの火傷と怪我が消えた
「サーニャ…」
村の住人はランとサーニャ以外助からなかった
この世界に来て初めて親切にして貰った人達を
助けられなかった…僕が弱いから…
強くならなきゃ…
光はそう決心した