うるさい世界と俺
俺は高校三年、だ。
年は17、12月生まれで、進路はバカ大学志望。入試は運で乗り切ってるやる…。
カンカンカンカンーー
踏み切りを超えた先。
通学路の最中にある花屋のお姉さんが、ちょっと好きだ。
「チューリップにしゃがんで水やる姿が超いいわ。あー、本当可愛いよなあ」
眼福。眼福。
重いカバン背負って、朝早くから"メンドクセー"通学の足取りを癒してくれる。
学校についても、別に楽しいことなんて大してないし…。クラスの奴らはブスばっかだ。
「…………」
教室のドアを開けて、俺は、静まりかえっていた。
なんでかって?
「はあ…」
俺の机の上に花瓶が置いてあるからだ。
「くだんね」
俺は、俺の机の上の花瓶をカバンで払いのける。
ィーン、と正確には聞き取れないような甲高い音を立てて、花瓶は割れた。当然だ。
「今どき、机の上に花瓶置いて鮮やかなクラスメイトもいたもんですね…っと」
俺の机を中心に。床一面に、破片が散らばっている。でも、んなことしったこっちゃない。置いた奴が掃除すればいい。俺は黙って、着席し続けるだけだ。一週間以上前から壁にある張り紙見て、寝るふりして、外見て、花屋のお姉さんの姿を思い出して、寝るふりをする。
「おい、黒神お前、自分の周りに散らばってる破片を片付けんか、バカ!!」
……何故か。
朝礼にやって来た担任は、そう【俺】を叱りつけた。
「……はい」
俺は、仕方なく立ち上がる。
「自分の周りが汚れていたら、率先してやるのが当たり前……!!恥ずかしくないのか!!?」
「……はい」
「恥ずかしくない人間になる努力をーー…」
悪いと思ってないんだから。叱られても、頭の中にはロクに入ってこない。
授業が終わる頃には、花屋は閉まっている。眼福は、もういない。つまり、毎日毎日、この時間から後の俺は、退屈だった。
……少し前までは。
妙な奴を見つけた、ついこの間までは。