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心理戦の100万円アプリ  作者: 華メガネ 広大
1st Stage
3/34

Game Start

 とりあえず催促は無視し続けて、本当に来たら警察に行こう。それを放っておけばゲームする事には問題ないはず。応じないと何して来るか解らないし。


 ゲームをするを選択するとズラリと人の顔とプロフィール、悩み事が書かれている。

 この中から選んで解決しろって事か。スラッシャーだっけ、それはあんまりしたくないな、ヒーラーがいい。


 なるべく悩みの浅そうな10代のギャルを選択してみた。するとチャット画面に切り替わりいきなり怒りをぶつけてくる。


「ちょっと元カレがあり得なくない!? 浮気だよ? ウチの親友と!」


 失恋の問題を解決すればいいのか、この手は慣れているつもり。いつもの様に慣れた手つきで素早く打ち込む。

できるだけ年代に合った言葉で壁を作らせない。


「元カレ酷くね? 最悪じゃんか」


「そーなの、マジ腹の虫が収まらない! 納得できない!」


 現実の人間と言っていたな、サクラだろうか。


「君は彼氏を愛していたの?」


 彼女の興奮は収まらない様子で返信が速い。


「あんなやつ好きじゃねーし!」


「凄く好きだったからムカつくんじゃないのかな?」


「……そうなのかな?」


 勢いがなくなった。僕の言葉に興味を持ち始めた、ここでもうほぼ落ちたも同然。

 後は怒りの矛先を他に向けさせるだけだ、突発的な感情は収めるのも楽。


「どうでもいい相手ならそんなに怒ったりしないよ。楽しい思い出ある?」


「あるよ、◯◯花火大会とか、誕生日とか」


 どんどん喋りだす、知らない相手の僕に。しかし、サクラなら花火大会の名前出すなんて変だ。


「相手はどこの高校の人? どれ位付き合っていたの?」


「◯◯◯高校、紹介で知り合って、付き合って三ヶ月……」


 高校の名前まで……。多分サクラではないな。実在するのは本当っぽい、どっかの悩みサイトに繋がってるのだろう。とりあえずヒーラーってのをやってみるか。


「少し短いけど君は純粋だね。 三ヶ月でそれほどになるまで恋をしていたんだから」


「純粋? ウチが?」


「そうだよ、純粋に恋をしまくった結果だよ。怒りまくって愚痴いいまくって、少し落ち着いたらまた新しい恋ができる」


「もう恋なんかしたくないよ」


「他の人が君を必要とするから大丈夫。もうね、この時点で君は新しい恋に向かっているよ。その純粋さで素晴らしい恋ができる、保証する」


「ほんと? もうこんな辛い思いしない?」


 完全に信用も勝ち取った、これで九割落ちた、あと少し。


「辛い事があっても君は強いから、それを経験としてみんな大人になっていくんだよ。君は立派な大人でしかも純粋な美人だ! もう大丈夫」


「ありがとう前向きにまた恋愛してみる!」


 よし、落ちた。これでヒーラーができたはずだ。チャット画面がなくなりプラス4ポイント加算の表示が出た。


たった4ポイント……。でもヒーラーは成功した、案外簡単だな。この調子で稼げば100万円稼げるかもしれないかもと頭に過る。


 珈琲を飲み干し、タバコを吸いゲームの内容を考えてみる。気になるのはスラッシャーだ、相手の心を悪意で壊すって事。臨機応変に専念したいけどスラッシャーは嫌だ、ヒーラーでやっていこう。


 

またアプリを開きゲームを選択する。誰にしようか迷っていると、暗い顔をした女の子が目に止まった。

 相談内容は、「鬱」

 これは成功すればポイントが高いはずだ、早速チャットに入る。


「どうしたの? 何を悩むの?」


「死にたい」


 予想通り危なそうだ。


「なんで死にたいのかな?」


「生きてる希望がないから」


「病院は行っているの?」


「うん、うつ病だしね」


「まず寂しくないかい?」


「全然、別に寂しくないよ」


 手強い、向こうから自分の事を喋ろうとしない。

 口調が淡々としすぎていて、感情が感じられないし、これは時間がかかりすぎる。悩みの根元を聞くのだけで3日はかかる。


 チャットをここで閉じた、リスクが大きいし時間の無駄。

 すると画面にマイナス2ポイントと表示された。


「え? マイナス?」


 思わず声が出る。メール画面を選択して運営のアプリに、何故マイナスなのか打って送ってみる。するとすぐ返事がきた。


「先程の女性は悩みが大きくチャットを見限られた事に大きく傷つきました。よって、マイナスポイントです。因みにヒーラーが成功すると40の大物でした。引き続きご健闘お祈りします」


 思ったよりしっかりしてるシステム。やはり……このゲーム、本気なのか?

 クリアするとしたら、これは厄介だ、雑魚をコツコツ行くか大物を狙うか。


そもそもチャットしてみないとわからないじゃないか。できれば10ポイントくらいの悩みを狙い撃ちするのがいいな。


 そしてどうやらあのボーカロイドが言っていた事は信じたほうがいい。一週間後には必ず徴収が来る事、プラスに出来れば逆に金が儲けれる。


 それより警察に相談のつもりが、アプリに興味が湧いてきた。

 初めて打ち込める自分の得意分野だからだ、落ち着いて集中すればいけるはず。


 まずヒーラーするには相談の原因となるものを探す、そして誰にも見せない様な本音を喋らせる。これに専念すればヒーラーは上手くいくはずだ。そして心の根元まで喋らせたらスラッシャーもやり易い。


 親指を加え、画面に映るピープルの顔を観察して、次、また次へと探しているとサラリーマン男性が目についいた。

 悩みは、「自殺」

 これはむつかしそうだが案外ヒーラーは簡単かもしれない。スラッシャーはもっと簡単そうだが……。

 チャットに早速入る。


「死にたい、死にたい」


「大丈夫です、今どういう状況ですか?」


「布団の上で自殺の方法を考えてる」


 僕は自殺についての勉強はかなりしていたたほうだ、いけるかもしれない。


「どの様な自殺方法を考えていますか?」


「電車に飛び込もうと思っている」


「では死んだ後の多額のお金は大丈夫ですか?」


「死んだ後の事なんか知らないよ!」


 まず興奮を抑えなければ。すぐ散らかった炬燵の上のノートパソコンで事故死体の画像を探し、ケータイに繋げてチャットに貼り付けた。


「こういう風になりますが、いいんですか?」


 返事がなかなかこない、いい証拠だ。やはりショックを受けている。


「こんなになっちゃうんですか?」


 よし興奮が収まってきた。ヒーラーを目指すならまず、感情をコントロールできないと話しにならない。


「そうですよ、こうなります。それより失敗した時どうなるかわかります?」


「ど、どーなるの!?」


 自分のペースだ、詳しくない所をみると女子がフラれて死にたいと嘆いてる衝動的な様なものだ。


「多額の借金を背負い、個人差はありますけど障害が残ります、 死ぬより辛い事になる。それでもやりますか?」


「ち、違う方法を考えてみるよ」


「ほとんどの自殺方法は失敗すると後遺症が残りますよ。それより何で自殺を?」


 これで、自殺から話題がそれればいいのだが。


「妻と離婚したんだ、会社でも上手くいかないしもう生きる価値ないだろ?」


 よし内容まで辿りついた。やはり衝動的なもので深刻に追い詰められてる様子もない。


「僕も不倫されて離婚しました」


 ここで嘘をついた、同じ境遇と思わせる事で親近感を持たせるのが狙い。向こうは嘘を疑う余裕があるはずもない。


「僕は会社もうまくいかない、何やっても駄目なんだ!」


「少し歩み寄ってくれませんか? 本音が聞きたいんです」


 乗ってきたらこっちのペースに更にのせれる。


「いいですよ」


「辛いですか?」


「死にたいくらいね」


「とりあえず死ぬなら明日にしましょう」


「なんで? もう我慢できないよ」


「明日になってもまだ死にたければ考えればいいですよ」


明日に伸ばす事ができれば、今日1日は本当にどうしようもないのか真剣に考える時間が出来る。つまり僕の話しを受け入れるしかない。


「明日でもいいけど、生きていてもいい事なんかない」


「それでもね、生きていたらたまに良かったと思える日が必ずきます」


「たまにだろ?」


 相手が不安にならない様に直ぐ返事を打ち込む。


「毎日幸せなんてあり得ないんですよ。例えばパンがあります、それを誰かにあげてもたいして感謝されませんよね?」


「そりゃパンくらいなら」


「けど戦争飢餓の子供にあげたらどうでしょう?」


「泣いて喜ぶかな? 全然違うね」


「あなたは今不幸だ。だから小さな事で幸せを感じられるはずです」


「そうかな? そうだよな」


 よし、落ちた。後は話をまとめるだけ。


「普段の生活に隠れてる小さな幸せを見つけて下さい。不幸なら不幸なほど小さな事で幸せになれる。今とってもチャンスですよ、知らなかっただけなんです。もう大丈夫!」


「そうかあ、僕はまだ何も知らなかったのか。戦争の飢餓の子供の話しで解った、 僕は恵まれているんだ。ありがとう、幸せ探してみるよ!」


 チャットが閉まるとポイントが表示されると27ポイント。


 27!? 凄い、自殺をヒーラーするとこんなに貰えるのか。しかし流石に疲れた……。


 アプリを切って、ノートパソコンを開いて、100万円のアプリについて調べたが何も解らない、どんな闇アプリだよ。


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