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心理戦の100万円アプリ  作者: 華メガネ 広大
Special Stage
25/34

面屋との決着

「その席どいて、優君。私がやる」


 肩を持つ彩子が、眉を震わせる様に目に怒りを持っているのがすぐ解る。


「待って、何故かこっちが勝つまでの勝負だ。何が目的か知らないけど最初に刺される場面が来るなら僕か、ケンジがやる。3回ミスったら降りるんだ」



 黙って頷くと、僕と席を代わり面屋の目の前に彩子が座ると、手を広げてアイスピックの隣にドクロの指輪を光らせて置かれる。


「ハートブレイクよ」


 表になると、面屋は手をパチパチと叩く。


「勇気がある女性だ。タイプだね」


「私はあなたが大っ嫌いよ」


 見下す彩子は、恐怖が顔から感じられない。腹を決めたのか、隠しているのか。


「では、今から15分までの会話で僕は3回嘘をつきます。3回正解でそちらの勝ち、4回目からのチャレンジ失敗は、アイスピックだ。不正の場合のみアプリがジャッジに入る」


「早く喋りなさいよ」


 手を口に当て、上品に笑う面屋。


「本当に強気なんですね。ふふ、では僕は三兄弟の末っ子でして、姉、兄がいます。姉は結婚して子供が2人。兄は数学が得意でスポーツも万能でした、結婚はまだですが」


 おいおい、この調子で喋り続けるのか? 嘘かどうかのポイントが多すぎる。ケンジと僕で彩子の横に立ち面屋の表情を見るがやはり顔には出さない。


「続けなさい。まだ続きがあるんでしょう?」


「勿論、僕は中学まで実はサッカーが得意でした。高校で、50ccのバイクで事故を起こして下半身不随になりました。そこで人生が狂いました、死のうとも思いましたが看護師の熊田さんという女性に恋をして踏みとどまりました。続けますか? 覚えきれないでしょう」


 見下した彩子はまるで攻撃者の様に見下し続ける。


「最後まで続けなさい」


「ふふ、看護師に恋をしたのですが、待っていたのは地獄でした。これからどうやって生きていくのか。高校に戻れた時はもう卒業前で、僕の居場所はありませんでした。親友だった、新田も病院に来てくれたのは一回だけでした。サービスです、ここまでで終わりにします」


 簡単に数えても20近くは嘘のポイントがある。3回間違えないでクリアはほぼ至難。


「あなは末っ子でお姉さんと、お兄さんがいるのね?」


「はい、そうですよ」


 裏の顔にならなければいいのだが。


「お兄さんの得意の数学は何かの役に立っているの? それとも得意のラクビーの方で活躍してるのかしら?」


「兄のその後は知らないのですが、得意なのはラクビーではないですよ」


 彩子は間を空けない。


「あなたはサッカーが得意だったのね、サッカーのポジションと得意な事はなに? 150のバイクでトラックと事故をしたのは不運だったわね」


「サッカーでは、試合でよくヒールリフトをしてましたよ。初心者には解らないかな? ポジションはFW点取り屋だったんだ、バイクで事故ったのはトラックではなく軽自動車でしたよ」


 彩子は早口で、相手のスローペースを無視する様にどんどん喋る。


「死のうと思ったけど、看護師に恋する事で生きる勇気が出たのはいい事ね。熊井さんには告白したの? 親友の新田くんは二回きたお見舞いには何を持ってきてくれたの?」


「看護師さんには告白は出来ませんでした、それと熊田さんです。新田くんはお見舞いに来てくれたのは、花と漫画を持ってきてくれた思い出があります」


「嘘が下手くそね、ペラペラ喋るからよ。パーフェクトとは行かなくてもこの調子なら3人抜きなんか無理ね」


「では、3つの嘘を見破って下さい」


 なんだ、こんなものなのか? 下手すれば決まるぞ。


「バイクは50ccではない」


「正解です」


「サッカーのヒールリフトは得意技ではない、もしくは試合では使っていない」


「それも正解です、何故そう思いますか?」


「150ccと変えたのに、気づかないで話しが進んだ、ヒールリフトはサッカーでは試合では多用できる技じゃないのくらい知ってるわ」


 面屋は表の笑顔で手を叩く。


「素晴らしい、簡単すぎたかなあ? では最後お願いします」


「新田くんがお見舞いに来たのは一回ではない」


 面屋は笑顔で大きく手を叩く。え、もしかして全部正解したのか?


「不正解です、残念でした。続きをしますか?」


 髪をかきあげて、溜息をつく彩子。


「ごめんなさい、優君。惜しかったけど降りるわ、この程度ならすぐ正解できるわ」


「あはは、女社長さん。全然惜しくないですよ、役立たずでしたね」


「2個アッサリ正解したじゃない」


 彩子の両肩を掴んで持ち上げると、ケンジが座る。


「余裕余裕、意地っ張りなんだよコイツ」


「じゃあ茶髪さんには数字100個くらい並べましょうか?」


「物は相談、五個にまけてくれないか?」


 面屋は、腹を抱えて笑う。しかし、なんでだ。彩子の時から数字100個くらいの話題にすれば絞るのだけでも大変なのに。自信があるのか?


「いいよ、面白いなあ。五個にしてあげようか?」


「ほんと? 見ろ! 優くん。言ってみるもんだろ」


 う、嘘だろ。笑い事ではない、確実に裏があるのが臭う。


「その代わり一つでもミスったらアイスピックで刺すよ」


 腹を抱えて下を向いた面屋は、裏の時の声で低く喋る。


「確率的に逃げれないな。彩子のやり方、俺のこの5個の中の3個の正解のやり方が正しいのか。決めるにしても、優くんに繋げるには乗るしかないね。ギャンブルとしてオイシイ」


「やめろケンジ。時間をかけてゆっくりやっていいんだ」


「やる。ハートブレイクだ、シチュー男」


 ケンジはアイスピックの横に手を置く。


「じゃあ喋るよ、茶髪君。僕の身長は161。体重は42。視力は、右が1.2。左が1.4。塞がったけど、開けたピアスの数は1。さぁ、正解は?」


 ケンジは、白紙のカードに、数字を書いていき、161、42、1.2、1.4、1と書き面屋の前に一枚一枚見せて行く。

 表情で見るつもりか。こんなのどれが本当なのか確信に迫れる事がない。


「1.2が嘘」


「正解」


 もう答えるのか? 決断が早すぎる。


「身長の161」


「正解」


 面屋はアイスピックを握りしめ、次の回答に備える。淡々と当たりすぎている、3分の1で当たる、勝てる。

 しかし、変だ。こんなの心理戦じゃない。心理戦になってない。

 ……!? 心理戦になってない!?


「ピアスの一個」


「不正解!」


 ケンジが言い終わる前に面屋はアイスピックを素早く突き刺した、彩子のヒステリックな悲鳴が響く。


「う、う。……痛え」


 咄嗟にケンジの手のひらに被せた僕の手が刺され、血が流れる。


「んだよ、ゲロ茶髪刺したかったのに順番狂っちゃったよ邪魔すんなよ。どうせ次はお前なんだからよ」


「優くん! なんで!」


「うう、心理戦になってない時点で負けが確定してたから、咄嗟に手が出ちゃったよ」


「すぐに止血を! 手を見せて!」


 アイスピックを抜きさすと、机に強く突き立てて音を立てる面屋。


「駄目だ! その渡辺は治療の時間はやらない、今すぐハートブレイクだ」


「あんた! そんなの無茶よ!」


 向こうが初めて焦った、多分思考が正解に近いな、考える時間を嫌がっている。


「大丈夫彩子、そんなに深い訳ではないし、痛いけど我慢できる。相手がやり方変える前にこっちも急ぐ必要がある。ハートブレイクだ」


 裏の顔のままの面屋は、右上唇を釣り上げ眉間にシワを寄せる。


「ハートブレイクだ、てめぇの持ち時間は5分。1分オーバーする度に刺す。間違えても刺す。まず俺の幼少期だが……」


「話題変えんな、どうせ意味ないんだろ? さっきのでいいさ」


 普通のハートブレイクなら時間いっぱい使って揺さぶる事ができるが、この慣れない雰囲気でそれが出来ない。

 多分どの問題も答えは同じ、そして心理戦。


「いいよ、後4分」


 どこをどうしたら、心理戦になるのかが問題だ。マジックの様にどこで引っ掛けられているか、もうこの推測に賭けるしかない。


「残り3分」


 面屋を見るとおぞましい表情でこちらを、ハッキリとした殺意を纏って見ている。怖い、また刺される、痛い。血が出てる。駄目だ、思考が止まる! 不安が決心を鈍らせてきやがる!


「残り2分」


「どけ渡辺! 次は俺が殺す!」


 モヒカンが抑えられていた口と身体を自由にしようともがいている。

 モヒカン? 僕とモヒカンとの最後の勝負は確か……思い込み。


「残り1分」


「解った、答える」


 面屋が前髪を掴んで気圧してくる。


「手が震えてんだよお、あ? ちゃんと指を開けよ。刺せないだろうが、ミスったら即刺す。次は深くな」


「視力の左」


「正解」


 ケンジは立ち上がり、両手を上げる。


「やった! 優くんの勝ちだ! 後は俺の正解した二つ答えたら勝ちだ!」


「黙れ茶髪ぅ、こっからなんだよ」


 モヒカンは口が自由になったようで、身体も振り切り、ハートブレイクのこの山場を見守っていた。


「二つ目、ピアスの数」


 ケンジが不正解になった答えをあえて出す、その瞬間面屋はアイスピックを振り上げる。片目を閉じて、手に力を入れるが、振り上げた所で手は止まる。


「正解だ、さぁ最後の答えは?」


「え? 正解なの? どゆ事?」


 面屋が精神をここまで揺さぶってきた事。そして2個目の正解で確信に変わり、その自信から手の痛みも忘れて、優越感が脳から溢れ出す。

 人差し指を向ける。


『バン!』


「それが答えか? 刺すぞ?」


「ではまず本当の正解を一個目から言うよ」


「本当の正解? さっきのは!?」


 彩子も理解が追いつかない様だ、当然だ、思い込んだら絶対これは解けない。


「さっきの正解二つがまず嘘。こっちがこれが嘘だと回答する事に対して、正解と言う事で嘘にした。本当は全然会話の中に嘘なんかなかった」


「え! 意味解らないよ! 絶対会話に三つ嘘があるんだろ?」


 ケンジが僕の肩を持ち耳元で叫ぶ。


「最初に言っていた、今から会話の中で嘘をつく。というのがそもそも嘘。本当は嘘なんかないんだ、だが嘘は必ず三つ、ここを見つけるのが大変だったが、相手が2個答えると必ず正解になる。これで最初のと合わせて3つ嘘が出来上がる。心理的に会話に嘘があると思い込んだ時点で負け、そもそも彩子とケンジの勝負が変すぎたんだ。あれじゃ単なるゲーム。俺の勝ちだろ? 面屋」


 面屋はアイスピックを落とすと、上を向き大声で笑う。


「短時間じゃ絶対わからないと思ったのに、傑作だ! 凄く笑える」


「もっと笑わしてやろうか?」


 モヒカンの低い声がすぐ近くで聞こえたと思うと、それに気付き面屋の笑い声が止まった瞬間だった。

 転がっていた、アイスピックを持ち、モヒカンは面屋の手を掴むと手の甲に突き刺した。


「ひああ!!」


「ふぃひひ、今度はてめぇが否定だよ。500万のペナルティ? 上等だね。さあ、運営の事話せよ。痛えか? なあ痛えか?」


 面屋の悲鳴が続く間に机にあるケータイが音を放ち、アプリのボーカロイドが出現する。


「はい、渡辺様の勝ちですね。負けたら刺されるという事は当然、面屋が負けても刺されて当然です。モヒカンさんにペナルティはありません。では面屋さんの口からクリア報酬である、アプリの事を聞いて下さい」


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