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心理戦の100万円アプリ  作者: 華メガネ 広大
3rd Stage
12/34

自己紹介

モヒカンが奥えと消えて行くのを最初に他の四人も立ち上がり中央応接間から離れた。



 僕は賢次と女社長の彩子の前に座り顔を近づけて小声を出す。



「僕達共同戦線を貼ろう三人で」




「了解!」



 バレてもいいのだが、ケンジの大きな返事で何人かこっちを観察する目が気になる。小声の意味がなくなるだろ。




 彩子は腕を組んで返事をするとケンジを指差した。



「OKよ、でもコイツは嫌。優君と2人で問題ないわ」



「なんでだよお! 何にもしないよ」



 僕はまぁまぁと2人の肩を持ち、2人の目を強く見て確認する。



「決まりだ、三人で行動して些細な事でも情報の共有だ」




「もう解ってると思うけど、1番最初にミスをした人間から消えていくよね」



 ケンジは強く見つめ返すと声のトーンが低く発した。




 じろりと横を向き彩子はメガネを人差し指で上げ、鋭い目つきはあの時のハートブレイクを思い出させる。


 仲間にする為の彼女なりの試験か。



「一応聞くわ、何で?」



「ミス、弱味を見せたら全員から勝負を挑まれる、逃げれるのは一回。勝負に負けてもゲームオーバーまで永遠勝負させられるからね」




「まぁ部下としては優秀みたいね」



「余裕だよ。え? 部下?」




 なんとかまとまった。ここでまたケンジがふざけるのかと思って、こっちが緊張する。




 突然テーブル席からキャバ嬢の高い声が響いき、全員が振り向く。



「みんなここに集まって。何にも始まらないから自己紹介でもしようよ。一応少しでも一緒に暮らすんだから」




 みんなが何も言わずゾロゾロ集まる。応じる義務もないが、何か動きがあるのを待っているのは皆同じか。


 パンチパーマが座るのを始めに全員着席して、まず言い出したキャバ嬢の自己紹介が始まった。



 ミスをしないのも勿論、目をつけられず、勝負を避けられる様に思わせるのがベストだ。




「二十歳で須藤優子。キャバクラの仕事してるわ。左に回して行こ」



 


  黒髪のオカッパ少年の番。こいつは見たことがない、若いな。



「古市真也、高3。ゲーム好き。ゲームしてる時は話しかけないで欲しい」



 ポケットゲームをしながら淡々と喋る。高校生か、謎すぎる。本当にクリアしてきたのか? こいつはマークした方がいいな。




 全員の視線が高3から離れると、パンチパーマの番がくる。



「歳は言いたくない。職業は見た目で判断してくれ」



 どう見てもヤクザ。歳すら言わないと言う事は、歳に関係する弱味があるのか?



 席は反対側に移りケンジの番。頼むからミスだけはしないで欲しい。



「俺! ケンジ! 長島賢次ね! ギャンブラーだ」



 ケンジは何もない所から突然ジョーカーのカードを出すトランプマジックを一つする。ジョーカーを皆にゆっくり見せて、ピッと投げた。



 ジョーカーは彩子と僕の前を通り越し、一つ席を空けて座るモヒカンの手前に落ちた。


 多分全員思ってたのを再確認の合図。



(コイツが1番ヤバイ)



 トランプを拾うと、笑顔でジョーカーを見せる。



「ケンジくん、どうもありがとう」



 発言と笑顔に皆が固まる、ジョーカーとモヒカンが双子の様に笑っている様にしか見えない。


 全員がモヒカンを睨む顔が少し崩れた様に見えた、無理もない怖すぎる。



 少し間が空いた後に彩子は見下しながら重い空気をそのまま乗せる様に自己紹介する。モヒカンの後で上手いとしかいい様がないタイミング。



「歳はレディーに聞かないで。会社を経営してる」



 誰もまだ質問しない、不思議な雰囲気。そうだよな、まだ動くには材料が少ない。



「渡辺優、フリーターだ」



 モヒカンの番が来る、どんなふざけた自己紹介するか。本性を出すか?




「山本慎吾です、24歳。バンドマンです。皆さんよろしくお願いしますね」



 高3以外の全員がモヒカンを睨む。今更普通を装っても遅いが笑顔が怖すぎる。結局今のところ他を圧倒する結果を残したのはコイツだけか。


 みんなの反応をみるとどれだけスラッシャーしてきたかすぐに解る。



 最後に1番端にポツンと座る小男。冴えなさそうな男はメガネをくいっと上げる。



「森田光。32歳、会社員をしてる」



 森田、こいつは初めてモヒカンに会った時に逃げたハイエナ専門のスーツの男だ。



「お腹減ったーー!!」



 ケンジが大声で空気を割るが誰も無表情を変えようともしない。



「なんだよもお! 女性陣で作ってくれよ!! キャバと彩子さんで」



 無表情から溜息をついてキャバ嬢が口を開く。



「昼食べてきてるでしょ? 夜に簡単なものなら作るわよ」



 ハイエナ男がメガネをくいっとさせ、少し無言の空気の後に声を出す。



「毒でも入れるのか? 自白剤とかか?」


 キャバ嬢は手をひらひらさせてハイエナ男を煙たがる。



「いちいちそんな事しないわよ、いいわ。人のハイエナばかりの男は考えも小さいのね、食べたい人だけでいいよ」



「僕は非常食があるから何一つ口にしないよ、あんた下手そーだし」



 ハイエナ男とキャバ嬢の会話で、みんながミスをしろ! と見守る。何人気付いたか解らないが、既にハイエナ男はミスを犯した。決定的になる程ではないが。



「じゃあハイエナ男さん以外の作るわ」



 重い空気だ、ハイエナ男の警戒心は相当な物。


 少しまた沈黙が続くとパンチパーマがぬっと立ち上がる。



「もう終わりか?」



  そのままスタスタと奥に行ってしまった。それを合図に皆立ち上がりそれぞれ動き出す。


 モヒカンは、ケンジの前にニコニコしながら近づいて、ジョーカーのカードをあのままの笑顔で返した。



「ジョーカーは俺にピッタリで嬉しいよ。ケンジくん」



 すると声と表情が一変して、人を殺す前はこんな顔になるのかと思わせる程の形相でケンジに顔を近づける。



「茶髪ぅ、解ってんな? 勝負逃げるなよ?」



 爬虫類のように舌舐めずりをするとキッチンの方へ向かった。


 まだ勝負は動かないが、行動一つ一つ監視されている様で窮屈だ。


 赤を催した部屋は、まるで監獄の牢屋。


 みんなが1番にモヒカンを壊したいと願っている気配も伝わる。



「ぷはぁ! 怖え! 俺タバコ吸うよ」



 ケンジは席を離れ、彩子は無言で席を立ち奥へと消えた。


 とりあえず部屋の構造を確認するか。


 中央応接間の奥には、二つ同じ部屋並んであり警察の取り調べ室みたいな殺風景な部屋に机と椅子が二つ、上にはスピーカー。完全にハートブレイク用だ。


 真ん中に花瓶があるくらいで息苦しい。そのまま奥には二階に繋がる階段、突き当たりは右にトイレが二つ。左にはシャワールームが二つ。どっちも男女別用。


 二階はすぐベッドが6つ並ぶ広い部屋。3階は同じ間取りでベッドは2つ。



 それと、自己紹介が終わってから2人の黒スーツの男が気配を殺す様に目立たない様に端に立っているのに気付く。


 黒の舞踏会仮面なんかつけて表情が見えない。成る程ね、プレイヤーへの気遣いとあくまでゲームって事か。


 それだけだ、光も余り入ってこないし周りを見渡しても赤、赤ばかり。



 中央応接間のソファーに座りケンジの横でタバコを吸い、そこからは動かない。そのまま夕方になるまで誰も接触は無く、動く気配すらない。



 ハートブレイクは一日一回しなければならない。いつ使うか?


 皆がミスを待ち動こうとはしない。しかし夕飯くらいから動き出すのは確実。



 最悪何も動かないのなら、ケンジのカードから三人同時に動き出す算段を考えるか。何も情報がないのにハートブレイクは危険だ。やはりハイエナ男のように敗者を狙うのが最も安全策。


 モヒカンが動かないのも気になる、誰にでもハートブレイク仕掛けても勝てるはずなのに勝負を拒否権で避けられるからか?



「女社長さーん夕飯手伝って」



 キッチンから彩子を呼ぶ高い音が響く。



「ミスはするなよ、あのキャバが攻撃してくるかもしれない」



 小声で彩子にすれ違い様に注意する。



「大丈夫、すぐ見分けくらいつくわ。なんならもう攻撃しようか?」



 立ち止まる彩子とのお互いの視線は全く別のままだ。



「ダメだ仕掛けるな、夕飯でどうせ動き出す。攻撃は逆を言えばミスにすぐ繋がる。情報収集に動いてくれ、仕掛けるのなら9時だ」



 ケンジは座ってゲームをしている高3とすっかり仲良くなった様だ。


 大丈夫、アホだけどミスをやらかしたりはしないだろう。高3の情報も沢山くるはずだ。



 ケンジは帰ってきてタバコを取り出す。



「どうだった? 高3」



 煙を吐き出し、遠くの高3に目をやるケンジは真剣な目つきだ。



「ヤバイね、俺よりゲームがうまかった」



「は? それだけ?」


 



「麻雀なんだけどね、読みと流れ見る能力が凄い」



「成る程、貴重な情報だ。1番すぐ崩れると思ったが荒れそうだな」



「何がヤバイって脱衣麻雀全部脱がせてたよ。俺興奮したよ」



「高3も馬鹿だったのか……。ケンジ、お前が1番訳わからん」

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