炎上1日目
「同志書記局長、僕が昨晩徹夜して考えたんだが、見てくれないかい」
委員長が書記局長にA4のペーパーを見せた。
「これはブログ掲載用の記事ですね。拝見します」
記事の内容は次のとおりである。
公務労働者に良識ある市民の一層の御支援を!!
私たち公務労働者は、戦後、民主的な公務員の在り方を追及し、反動的勢力と命懸けで闘ってまいりました。これまでの皆様の支援に対しては心よりの感謝の念を表明するものである。
しかるに、最近の状況は日々悪化し、首相以下、金持ち土建屋連合政府の悪辣な企みは、公務労働者のみならず、一般大衆の生活を脅かし、日本をアメ帝に売り渡さんがために陰険な策謀を続けています。私たち公務員の給与・年金は憲法と法律によって保障された正当な権利であるところ、その権利を不当に侵害し、あまつさえ権力の手先たるマスコミを動員することで、我々公務員と良識ある民間企業労働者諸兄を分断し、我々労働者を永久に「勝ち組」の奴隷化しようとする政府の野望を断固阻止するべきであります。
皆様方にはこれまでと変わらぬ支援と協力をお願いしつつ、挨拶に代えるものでありんす。
「どうだい、結構自分ではいい出来だと思ってるんだ。書記局長の率直な意見を聞かせてくれたまえ」
「はあ……」
書記局長は躊躇した。この文言をそのままアップすることに。
「どうだね、同志書記局長」
「同志委員長、私が思いますに……」
書記局長は記事の問題点を指摘し、長々と説明を始めた。
「いや、そこはね…… ちょっと待ってくれよ、そこの意味はこうなんだよ…… いや、これは……」
委員長はと書記局長のやりとりはしばらく続いた。
「ちぃーっす」
何の前ぶれもなく、副委員長が組合本部に入ってきた。
「同志委員長と同志書記局長じゃん。二人して、何やってんの?」
「君は、同志副委員長、まったく、君という男は……」
副委員長を見た委員長は、少し声を荒げた。が、気を取り直して言う。
「まあいい、これを見たまえ。今度、中央委員会幹部会の決定に基づき、僕たち3人の名前で出すことになったブログだよ」
「へーえ」
副委員長はパソコン画面を見た。
「なになに…… 国家経済計画省リベラル公務労働者評議会中央委員会委員長、副委員長、書記局長のブログ? 長ったらしい題名だな。で、記事は…… 何だこりゃ……」
「どうだい、同志副委員長。僕としては結構力を入れてだね……」
「まあ、いいんじゃないですか」
そういい残し、副委員長は組合本部を出た。
その後も委員長と書記局長の話し合いは続いた。時折、教宣局長に長電話をかけた。結論的には、委員長の考えた文面がそのままブログに掲載されることになった。