刀身
強く、強く。
硬く、硬く。
叩かれ、伸ばされ。
磨かれ切った、薄い、一枚。
周りの風景を、切り取り、そこだけ。
偽物を、映し出す。
さっと、振ったその切っ先。
水の中に切れ目を入れた。
空に流れた滴を、一つ。
心に落ちた、雲を二つ。
瞼に浮かんだ、悩みを三つ。
正眼に構えた背中の上に乗せ。
下へ。
切っ先に集めた透明なものに。
この手首から、赤い色を一つ。
親指から、三つ。
澄んだ水は、それだけで濁った。
刀身に浮かんだ波紋。
蒼い蛇が、心臓から抜けていった。
切るためにあるものは、やっぱり、切るために使うべき。
そう言って、自分に向けた。