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旅バト!  作者: 染莉 時
第五章:旅館対抗大運動会!
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興奮

 サキュバスの本性が出る条件。


 それはククが脱いだ姿を誰かに見られたら、と俺は認識している。

 少し前のことになるが、プールで遊んでいたときムーは意図的にククのシャツを脱がしたように見えたことがある。なので、その布地の薄い姿を見られたら、という認識はムーも同じだと思うから、あえて教えてもらう必要がないような気がする。

 なにかその認識に間違いがあるとみているのだろうか?


 そもそも知ってどうする? 

 …………あっ、俺をからかうのに利用したいのか。


「く、詳しくですか? それは……」


「私の秘密を一つ教えたんですよ~。言わないなんてずるいです~。まあいいんですよ~。それならティナさんの秘密を教えてもらうだけですから~」


 ムーはちらりと俺の方を見る。すごくにや~と笑いながら。


 ……俺が男だという秘密もまさか感づいてないよな? 頑張って隠しているつもりだけど、ムーならありえそうで怖い……。


「わ、わかりました! 教えます!」


 俺を引き合いに出され、ククは教える決心をしたみたいだ。


 ククに悪いなぁと思うのもあるけど、この際俺も条件を覚えておいた方が、後々役に立ちそうなので心して聞いておくことにする。

 本性が出てきて襲われるのは、できるだけ避けれるようにしたいしな。




 ククが恥ずかしそうに、顔を赤くさせながら話し始める、


「脱いだ姿を見られたときもそうなんですが、それも含めて、そのなんて言いますか……感情が、その……」


「もしかして興奮したとき?」


「正しくは前に性的にという言葉が入りそうですね~」


「あうう……」


 どうやらムーの指摘は合っているらしく、ククは布団に顔をうずめる。

 そういえばククがうちの旅館に来た頃、自分は露出狂に近いことを言っていたような気がする。


 そうかー、脱いだ姿を見られるだけじゃなく、興奮したら本性が出てくるのか……。しかしそうなると――


「じゃあさっきの男の人の裸には興奮しなかったってことか。すぐに気絶しちゃったもんな」


「ええ、まあ……」


 ククは顔をうずめたまま答える。




「となるとやっぱりククは異性に関心がないのか……」


 はぁ、残念。俺に好意を寄せているのも男としてじゃなく、女として見て、そう思っているんだろうなぁ……。


 そんなことを考えていたらククはバッと布団から顔を出し、


「い、いえ! 決して関心がないというわけでは!」


 と首をぶんぶんと振って否定した。


「そうですよ~。いくらなんでも安直すぎます~。異性とはいえ誰とも知らない方の裸なんてそこまで興奮しないでしょ~。――それとももしかしてティナさんは興奮しちゃうんですか~?」


「ええと……年が近い人の異性ならまあまあは……」


 さすがに年が離れすぎると逆に萎えるだろうけど。


「あらあら~」

「えっ!?」


 ムーはにやにやと笑い、ククは驚きの表情をあわらにする。


 何その反応? そんなに変なことか? ――て、ちょっとクク――!?


「く、クレスさんもエッチだったんですねえええー!」


 ククはこう叫んだど同時に布団から飛び出し、医務室から駆け出して行った。


「そ、そんなにショックを受けることだったのか……? 異性の裸なんだからちょっとくらい興奮するのは普通のことじゃあ……」


 俺はうろたえながらムーに問いかける。


「そうですね~、念のため言っておきますが、女性も同じように異性の裸にちょっとは興奮しますよ~。本性が出てきていないククちゃんは、性に対してちょっと潔癖なところがあるみたいですね~」


 潔癖か……その反動がサキュバスの本性が出てきたときの、暴走につながっているのかもしれない。


 しかし、そんな推測は置いておいて、それより先ほどのムーの発言に気になるところが……。


「……なんで女性も同じようにって念押ししたんだ?」


「えっ? もちろんティナさんにも女性視点の気持ちを理解してもらおうと思いまして~」


「えっ? も、もしかして俺が、その……」


「はい、男なんですよね~。知ってますよ~」


「マジデスカ?」


「マジで~す♪」


 ほんと楽しそうに言うムーに俺はがっくりと肩を落とす。


「いったいいつから知って……?」


「いつかはあんまり覚えてないです~。なんかカトレアさんがリムさんとしゃべっているときに、ぽろっと口にしていたのを聞いちゃったんですよね~」


 くぅ……カトレアか~。そんな秘密の話は誰にも聞かれないようなところでしてくれよぉ……。


「あっ、でも心配しないでください、誰にも言いませんから~。ちょっと弱みを握られているな~とでも思っていてください。――それより出て行ったククちゃん、追いかけなくていいんですか~?」


「ああ、今から探してくるよ。一緒に回ろうって約束もしているしな」


 俺はベッドのふちから立ち上がって、医務室の扉から外へ出ようとする。

 そこで、


「あっ、最後にひとつだけ~」


 ムーから一言告げられた。


「ククちゃんの本心を聞きたいのなら、本性を出させてから話をするほうがいいですよ~」


 にこ~と笑いながらされたアドバイスらしきもの。

 はたしてこれがアドバイスなのか、俺がククに襲われている姿を見たいがための単なるからかいなのか、俺にはよく分からなかった。


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