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旅バト!  作者: 染莉 時
第三.五章:水着!
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プール開き

 雲ひとつない青空! ぎらぎらと照りつける太陽! そして白い砂浜……はないけど。そう夏を思わせるこの暑さ、今日はまさに――


「プール日和にゃ~!」


 ……プール『視察』日和だな。







 先日、大型のプール施設のお客様へ開放するかどうかを、従業員の話し合った結果、『最初の一週間は貸切+その後プールを無料で使用できるフリーパスの発行』で了承された。

 その結果を持ってルシフ宅に乗り込もうとしたのだけど――


「ルシフ様は今寝込んでいます」


 とフェーダさんに言われて、ルシフに会うことはできなかった。ただ、


「はぁ、なるほどお客様への施設の貸し出しですか……いいんじゃないでしょうか。この内容ならルシフ様も納得するかと。……特に今の旅館の状況では(ボソッ)。私からちゃんと伝えておきますので安心してください」


 明らかにルシフより権力を持っていそうなフェーダさんから了承をもらえたので、お客様に利用してもらうことが確定したのである。




 ――そして、休暇を合わせた本日、


「わ~い♪ プ~ル、プ~ル♪」


「カトレア! 走ると危ない――あーっ、言わんこっちゃない……」


『大丈夫!?』


 俺、カトレア、リムの三人で朝からできたばかりの大型プール施設に来ていた。主人であるルシフが従業員の頑張った褒美として造らせたこの施設は、今日もちらほらと休みの従業員が来ていて各々遊んでいる姿が見える。


「いたたたたた……こんにゃに滑るものにゃのね……」


 プールサイドで走り、見事にスッ転んだカトレアはリムの手をとって立ち上がる。


 カトレアは上下に分かれたセパレートタイプの赤と白のボーダーが入った水着。後ろには尻尾が付いているのを見るのは何気に初めてかもしれない。水着は健康的で似合っているのだけど、一枚の布しかないため彼女の絶壁ぶりが明らかになってしまっている。

 対するリムは水色のワンピースタイプの水着。スカートの部分にはひらひらとしたフリルが付いているのが特徴的でかわいい。胸を強調するようなビキニタイプのものでないのに十分なふくらみを持っているのが見て取れる。特にカトレアと並んだときは差が分かりやすい。

 ちなみに俺はというと……


「ねえ、せっかくプールに来たのに、本当に泳がにゃくていいの?」


 Tシャツにハーフパンツというラフな姿である。更衣室を通らず、裏口からプール施設内に入った。一応濡れてもいいように速乾性のものを着ている。


「いいんだよ。見渡す限り俺が男だって知っているのはカトレアとリムだけなんだから」


『カトレアが着ているようなセパレートタイプなら着てもよかったんじゃない? 似合うと思うのに』


「そうにゃ。普段も女装してるのににゃあ」


 女装じゃなくて仲居として正装しているだけなんだけど……まあ女装というのも間違いではないのか……?


「でも水着はさすがに無理」


 女の子らしい格好するだけならまだぎりぎりいけるけど、水着と下着は俺の中で一線を越えている。ここだけは譲れない。


「むぅ……一緒に泳いだり、スライダー滑ったりしたかったのににゃあ」


「……(コクコク)」


「……いや、そもそもカトレアもリムも泳げないじゃん……スライダーも泳げないと滑り終わった後大変なことになるぞ。浮き輪も持って来てないんだし……あっ、そうだ」


 『お客さんが利用するときには浮き輪も貸し出せるようにすること』と忘れないようリムのメモ張に書いておく。


「大丈夫にゃ! いまから泳ぎを覚えるから! ティナに伝授してもらって」


『私も覚えたい。もしまたあの子たちが川に落ちても助けれるように』


 リムの書く『あの子』とはスライムのことである。以前溺れていたスライムがいたのに自分で動けず、俺に頼むことになったのをまだ気にしていたんだな。


「……あー、わかったわかった。ただ先に言っておくけど、泳ぎってのは一日やそこらで身に付くものじゃないからな」


「ウチとしてはなんとしてもスライダーを楽しみたいから、練習が厳しくても我慢するのにゃ」


『私も頑張る。お願いします師匠!』


 二人のやる気を見て一からしっかりと教えてあげようと心に決めた。プール施設をじっくりとみて回るつもりだったのだけど、旅館内で一番の親友の頼みなので仕方がない、諦めよう。


「さて、じゃあまずは泳ぐ前に大事なことから。怪我をしないこと。これが一番大事だから忘れないように! その一つとしてプールサイドは走らない。カトレア、いいか?」


「身を持ってその危険性は分かったのにゃ……」


 カトレアが転んだ拍子に打ったひじをさすりながら答える。


「それとプールに入る前にはしっかりとストレッチをしておくこと。泳いでいる最中に足が吊りでもしたら大変なことになるからな」


『大変なことって?』


「まず100%溺れる。たとえ泳ぎが上手い奴でもな」


「け、結構プールにも危険が潜んでいるのにゃあ」


「もちろんだ。――さあ早速ストレッチ始めるぞ。はい、1、2……」


 俺が柔軟の手本を見せ、カトレアとリムがそれに続く。


 うーん、しかしいきなり泳ぎを教えることになってしまったけどどうしようか……俺は水着じゃないし、泳ぎの手本を見せれないしなぁ。一緒にプールに入ることもできな……あっ、ちょっと待てよ。


 一つ考えが浮かんだ。

 よし、練習場所はあそこ(・・・)にしよう。


プールなんてもう何年行っていないかなぁ……泳げないから行くつもりは全然ないですけどね。

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