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旅バト!  作者: 染莉 時
第二章:集客!
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旅館改革開始

 まさか快諾されるとは……。


 旅館の改革を宣言した直後、ルシフは


「おお! やってくれるか! 客足が伸びずに困っておったのじゃ!」


 と俺の両手を掴みながらにっこりと笑った。

 正直「入ったばかりの奴が何を……」とか思われるかと考えていたけど、むしろ頼まれてしまった。

 どうやら一応、旅ラン(おすすめ旅館ランキング)上位を狙っているらしい。

 お客さんの入らないこの現状だぞ、本気で言っているのか? ――とも思ったけど嘘をつけるほど頭のよさそうな奴じゃないし、本当なんだろう。……経営戦略についてみっちり朝まで講義してやりたい。


 というわけで、旅館の改革については応援してくれるとのこと。

 ……応援だけ。うん応援『だけ』だけどな!

 いろいろと俺の頼みを聞いてはくれるそうだけど、俺だけ特別扱いだと他の魔物(奴ら)の反発を招きかねないから、むやみに頼みを了承できないそうだ。

 まあその点は元より手助けなんて期待していなかったから問題ない。自分一人でもできることから改革を進めていけばいいだろう。




 そして次の日――


「さて一丁やってやるか!」

「はいにゃー!」

「…………(コクコク)」


 ……あれ? なんで二人付いてきてるの?


 女将のセンカさんから「そうだね……今日は三人で客室の掃除でもやっときな」と言われた(昨日も客は来なかったらしい)ので、俺は一人掃除している客室から抜け出して、とある場所へきていた……はずだった。


 気付けば隣には化猫トランスキャットのカトレアと何の魔物かは分からないリムがいる。


「あのさ、自分の仕事は……?」


「それを言うならティナもにゃ。ウチらを置いてにゃにしてるのにゃ~?」


 猫の目を誤魔化すことはできなかったみたいだ。


「知らずに手を上げていたのかよ……」


「だっておもしろそうだからにゃ」


「……(コクコク)」


 リムが再び頷く。

 彼女が昨日から一言も発していないのは、声が出せないかららしい。しゃべれない魔物……うーん、多すぎて分からないなぁ。聞いてもなぜか教えてくれないし。

 ちなみにしゃべれないからといってそこまで意思疎通がとりにくくはない。


『隠し事はなしで』


 リムがメモ用紙に書いた丸っこい文字を俺に見せる。こんなふうに筆談はできるんだよね。

 しかし、こんなに早く見つかってしまうとは……まあ隠し通せるものでもないし、言ってしまうおう。協力してくれると助かるんだけど……。


「実はさ、殺風景な客室をなんとかしたくてこの倉庫に来たんだ。ここなら何かあるんだろうと思って」


 ――普通の大きさの旅館一つ分はある巨大な倉庫。捨てようと思っていたけど、いつか使うかもしれないから捨てられない! というダメなもったいない精神からできた倉庫。

 中にある物を一掃したくなるけど、今回は有効活用させてもらおう。目的のものが中にあるからな。昨日ルシフから聞いた。

 もちろんあいつから聞いたという話は二人には伏せておく。


「模様替えかにゃ?」


「まあそんなところかな」


『模様替えするなんて聞いてない』


 うん、言ってないもの。こりゃあ反対されるかな。

 ――と思っていたら、リムはメモ帳の次のページをめくり、小さく文字を書いた。


『でも、いいかも』


「そうにゃねー、確かにそろそろあの部屋を見るのも飽きてきた気がするし……それに殺風景というのは非常に同意にゃ。ウチらがセンスのある部屋に替えてセンカをびっくりさせてやるにゃ」


 センカさんへの報告は後か。それならそれでいいな。下手に反発されたら面倒だし。

 それにしてもいきなり二人も俺を手伝ってくれるとは。このまま順調に改革が進んで欲しいもんだ。


「よし! じゃあ改装開始だな! ……あっ、そうだ、あれだけは絶対に客室へ持って行きたいものがあるんだけど」


『何?』「何かにゃ?」


 二人同時に首を傾ける。種族は違えど息はぴったりだ。


「それはな――――『タタミ』だ。あったら客室に運んで欲しい」


 和室といったらこれが敷いてなければ始まらない(持論)。

 薄い緑色は目に優しく、かすかに発せられる独特な草の香りは部屋全体の空気を変えてくれる。落ち着きのある部屋作りには必須だ。


「わかったにゃ。確か以前見かけた気がするし、探してくるにゃ」


 カトレアは率先して倉庫の中へ入っていく。

 リムは片手でオーケーサインをつくり、ゆっくりと倉庫へと歩き始める。

 手分けしてタタミ、そして客室の改装に必要と思われる物を探す俺、カトレア、リム。


 魔物旅館改革の第一歩をようやく踏み出した。


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