007
いきなり魔法を、それも発現が難しい雷魔法を使えるとはの…
「この戦い、どう見る?リアナクトーレ」
少し考え込むようなそぶりを見せた孫娘が答える。
「そうですね…。自分の力に振り回されているように見えます。また、魔法の扱いも未熟ですし武器の振り方も甘い。リーウェルトの勝ち、ではないでしょうか」
やはりそうみるか。
「英雄殿方はどう見るのかの?」
それに答えたのは、カズヤ殿だった。
「……弥の勝ちだろう」
「ほう!それは如何にしてじゃ」
「……弥は自分ができることを弁えてる。それに、まだ弥は集中できてないからな」
「だよな、和也。あのひりつく感じがまだしないし」
ひりつく感じとな。
それに、まだ集中してないじゃと?
「集中せずに魔法を使えるとはの思わねぇな。それに、ひりつくってのは何だってんだ?」
リスクァバルディアも同じところが気になったようじゃの。
「弥は、思考が冷えた時が一番いいっていってたね」
「思考が冷える、ですか?」
「あの状態の弥には、正直近寄りたくないねん」
「怖いのよね…」
仲間にまで恐怖されるとな。
いよいよもって気になるのぉ。
その時、儂は確かに言いようも知れぬ何かを感じたのじゃが、それは全く覚えのないものじゃった。
「なんじゃ!?」
「来たね」
「来た来た!!待ってたよ、弥!!」
「……決まりだな。弥の勝ちだ、どうあってもこれは覆らない」
そこまで言われると、何をするのか見ないわけにはいかんのぉ。
さっきまで、バラバラでぐちゃぐちゃだったものがまとまっていく。
思考が、冷える。
白く、染まる。
再び、切りかかる。
合わせるように向こうも剣を振る。
その剣の、腹に手をあて、そこを起点に後ろに宙返る。
ここまでが、一つ。
次。
魔法が纏まる。
雷光が弾ける。
瞬間、隠密が発動したのが自覚できた。
後ろに回る。
首を、刈る。
ここまでで、二つ。
リーウェルトは咄嗟に前に転がり、距離をとった。
すかさず、追いかける。
いや、追いかけようとした。
「───なっ!?」
足の力が抜け、膝から崩れ落ちる。
リーウェルトが止めを指しに来る。
これで、三つ目。
短剣を突きだす。
当然、剣の間合いより短い短剣が届くわけもないし、動けない俺にはどうしようもない。
だから、飛ばす。
俺の手を離れた短剣は、狙いを違わずリーウェルトの眉間に深々と刺さった。