006
お待たせしました
「…ふむ。ひとまずはここまでじゃろうな」
ズーキュエル近衛隊長の言葉で俺たちはまた集まった。
「マニュアルではここでおしまいではあるのじゃが、こちらとしては早く英雄殿達には力をつけてもらいたいからのぉ。唐突で悪いが、模擬戦をしてもらう」
その言葉に唖然とする。
まだ武器の使い方についてやったばかりで、とてもではないが戦えはしない。
「勿論、まだ戦えはしないじゃろうが、実戦が最も多くのことを学べるでな。リーウェルト、相手をしろ」
「了解しました!!」
「リアナクトーレ、結界を張ってくれ」
「わかりました」
リーウェルトを中心に半径50mほどの薄い膜でできた半球が作られた。
「この中なら決して死ぬことはない。最初は武器を人に向ける、または人から向けられることに慣れてもらう」
「この結界の中で死ねば結界の外に無傷の状態で出されるから心配はいらないわ」
「では、誰からやるかの?」
顔を見合わせる。
「…うし、まずは俺から行くわ」
「……太一、行けるのか?」
「誰かがやらなきゃならんしな」
肩をすくめておどけながら太一は言う。
「それに、死ぬ訳じゃないみたいだしな」
「せやな。なら次はうちが行くわ」
「相変わらず綺羅は変なところで男気があるわね」
「そないなこと言わんでや、桜」
そんなこんなで話が進み、俺は最後になった。
そして、俺の番になった。
大体皆一分持たない感じで、まともに打ち合えたのは桜だけだった。
「タカセ様にも一応アドバイス。魔法はイメージを外に出す感じでやれば出来やすいわよ」
皆にも言ったけど、できる人はいなかったらしい。
「弥ぅ…、結構あの人怖ぇぞ」
林檎がそんなことを言っているが
「そりゃ当たり前だろ、じゃなきゃ前衛隊総隊長なんて地位にはつけないだろうさ」
「高瀬殿、全力でお願いします。今の実力を把握する意味もありますので」
リーウェルトが既に槍と楯を構えて言う。
「わかりました。とはいえ、たぶん一番強いのは桜でしょうけど」
俺も月食を右手にもつ。
「では、高瀬殿、来てください」
「行きます!!」
全力で走る。
驚いた。
目の前に楯があった。
「あだっ!?」
止まろうとしても止まれなくて頭を打った。
慌ててバックする。
「あ、そういやステータスが10倍なんだっけか」
それならさっきのも自分から突っ込んだことになるのか。
うわ、恥ずかしい。
もう一度突っ込む。
慎重に楯を避けて、後ろに回り込む。
槍の柄が凪ぎ払われる。
さらに前に進む。
楯の裏側、右手に月食を突き込む。
が、なにかに阻まれた。
リーウェルトに素早く距離を取られたので、こっちもバックし、月食を見る。
「…土?」
あ、魔法か。
確か魔法はイメージを外に出す、だったな。
なら
「雷がリーウェルトに落ちるイメージ…」
すると、リーウェルトの上空30m程の空中に魔法陣が浮かび上がった。
しかし、リーウェルトにさらに距離を取られたので当たらなかった。
「なるほど、こんな感じか」
雷と言えば、早いイメージ。
なら、同じくらいの早さは出せるんじゃないか?
「試す価値はありそうだな」