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第21回(図書館の彼女と魔性少女・その4)

「どしたの? なんか騒がしかったみたいだけど」

「ああ、お疲れ」

 所詮全てはあやふやなイメージに過ぎなかったのだ。我々は我々の捕縛縄を掛けるべきの肉体を目の当たりにした、そこでようやく自身の渇望せしところを完全に把握できたのだ。なんという芸術を我々は目論んでいたことか! てな訳で風ちゃん、一仕事終えたばかりでお疲れとは思うけど。Play! the artistic Kikko bind. げ、芸術を完成。おいらたちとの共同作業でっきゃーわらわらわら。

「それ返却日の紙? 振りかざしてなにやってんの」

「んー。図書館の困ったちゃんにはこれが効くみたいでさぁ」

 なんか今度は脳天から縦に割られそうな殺気がー。さすがのおいらたちも、割られた薪の態にされちゃ再生できないのですがー。

「はぁ、ホントに困ったちゃんだなぁ。どうやったら黙って居てくれるかな?」

「…姐御さ」

「ん?」

 おっと、ハリケーン‘ANEGO’の気が逸れた。全船今の内に風太港へ退避っ。

「これら見てなんとも思わないんだ」

 最初に退避を完了しようとしてた僚船がひょいっと舳先を摘まれて。むぅ! 人の首根っこを猫の子みたいに摘むなー。それからこれらって言うなー。失礼にも人様を目の高さまで持ち上げ、姐御さんに問い掛ける風ちゃんに抗議します。じたばた。

「え? なんだよなんともって。そんな何処にでも居る子たちなのに」

「…」

 そう、風ちゃん疲れてたのね。取り敢えず、摘むあなたの指先を癒しの手付きで撫でてみる。なでな、でぇーっ。わわわっ。頭の上に落ちてきたっ!

「もしかしたら姐御もさ」

 風ちゃん、騒然としてるおいらたちをじっと見ているようで見ていません。でも指先はしっかりと、今じゃどの公の施設にもインフルエンザ対策用の手指消毒薬がでんと置いてあるものですが、それでキレイキレイするのね。なんでよ。

「なに?」

「…や。なんでもない」

 ふいっと顔を逸らす風ちゃん。

「いやいやいや」

 そんな風ちゃんに姐御さんはちょっと面食らった様子で詰め寄りまして。

「なんでもなくないって。今お前、なんか一線を画しただろ。私を何扱いした。こら、気になるだろ」

 ふふっ。

 がー。おっと、入り口の自動ドアが開いて利用者さんが入ってきましたヨ。でも風ちゃんと姐御さんはお互いの認識のすれ違いを正すべく議論中、ってなんかそれじゃ夫婦喧嘩みたいだわね、とにかく攻める姐御さんにかわす風ちゃんって感じで利用者さんに全然気付いていません。こらそんなことでいいのか委託スタッフー。他人の目がないからって油断してちゃダメだぞー。来年契約切られちゃうぞー。

 がー。ほぅら、出て行っちゃった。利用者を怒らせちゃったなー。自治体に苦情のメールがいっちゃうなー。これは始末書、いやだから二人とも非常事態だってば。いい加減状況に気が付いて仕事を。がー。おんや? あ、またさっきの人が入ってきた。ん。確かに直接言ってやった方が早いよね。いやいや。このまま館内で騒ぎになれば、それこそ風ちゃんたちの心証最悪に。ちょっと二人ともマジやばいってばさ。ほらお客さんがそこに、ご立腹、で? あらちょっと、あの人一体何をしようと。エントランスの真ん中で立ち止まったかと思うと、急に両膝両手を床についちゃいましたヨ? え、土下座? いや変でしょうお客さん、頭を下げるべきは未だ学生気分の抜けないこ奴らの方でございまして。その頭が下がっていく、深く深く、わ、遂に額を床にがちっとつけちゃった。これは土下座か、いやむしろ定時の礼拝。固唾を呑んで見守っていると、額と両手は床に押しつけられたまま、次第に腰だけが高く持ち上がっていきます。熱意溢るる、侵すべからざる礼拝の姿、ってことで良いのでしょうかわたしたちの知識ではちょっと判じがたく。腰は更に持ち上げられ、連動して腿、ふくらはぎ、足首は順々にもっと高く、まっすぐ天井に向かって。えっとこれは。そう断じてしまって良いのでしょうか。そう断じるしかないのですが図書館のエントランスホールで突如始められた行動としてはそう断じることに激しく躊躇いを覚えざるを得ません。ええい、こんちくしょう。そうだよ、あれは三点倒立だよ! 今まさに目の当たりにしてなお信じ難いのですが、人気の無い図書館を訪れた一人の人物が、図書館という場における議論の余地無い特異行動=三点倒立を突如としてやり始めたんだよっ。

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