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第16回(女神様は彼と遊ぶ・その16)

「おっ、それは結構いい線いくかも」

「テミィー(⤴)ジカニィーオゥネガイシヤガリマセェ(⤴)ンカー」

「はいはい。常識で考えちゃ駄目って言うのは、例えばエレちゃんがこのお部屋に来た仕方だよ。みんなも見たでしょ? 這ってきたんだよ、ここまで」

 あの怪異物体Xがなにか。と申しますのは、いくら人間サイズには通り抜け不可のトンネルを潜ってくるのに必要だからって体形を四角柱状にしてしまう変態的柔軟性や、ある特定方面への寓意を嫌でも疑わせてしまうトンネル内での変態的移動方法などは女神様ご自身の資質なのであって、“何か”について考察する際には無関係のように思われるからです。

「ふむ。その時、風ちゃん前屈みになってなかった?」

 むしろびびって仰け反ってますた。

「うにゅーん。風ちゃんはいつになったらエレちゃんに萌えてくれるんだろう」

「テムィー(⤴⤴)」

「わかったわかった。エレちゃんが言いたかったのは這ってきた割には早かったでしょってそっちの方。エレちゃんほぼ世界一周這ってきたんよ。あのずっくんずっくんって進み方で」

 むむ。言われてみれば他にもおかしな所がありますネ。例えば、缶缶が虚空から風ちゃんの後ろ頭目掛けて落っこちて、その後にぽかっと開いた“穴”みたいなもの。それを長方形の穴と取り敢えず認識したのは、風ちゃんのお部屋の床と天井の間の何も無い所から突如として幾筋もの薄影が水平に伸びて、その並びが虚空に長方形を描いていたからで、要するに何処か余所からの光がその狭い不可視の“穴”からこちらへ漏れてくるようだったのですが、その観測された事実をこれまでに得た知見ベースの合理的推論にかけてみますれば、それって女神様のお部屋の光が正味こっちに漏れ出してたって事じゃん、地球ほぼ一周分の距離を隔ててたってゆーのに。それに音もごそごそずっずとかなりはっきり伝わってきてたよね、地球ほぼ一周分隔ててたって女神様が主張する所からさ。

「だからね、こっちの非常識は“何か”の常識、例えばこっちでは死んじゃうことがあっちじゃ益々盛ん、なんてことも有り得なくない訳さ」

 …

「ぎゃーっ」

 ふふ。風ちゃんてばおいらたち全員分の『Yes! Yes!!』枕をあんな愛おしそうに抱きしめちゃって。二度も金型作製業者を変更するとゆー拘りの鬼調整によって、あの枕はおいらたち肉体のうっとりするよなぷにぷに感を完璧に再現したものでもあるんよ。風ちゃんがおいらたちの質感をま、まさぐってる間にそっと風ちゃんの拘束から抜け出して、そりゃ風ちゃんの腕の中は今もそこにある枕どもに嫉妬しちゃうくらいヘヴンな所だったけどさ、いいの、おいらたちは更なるアルティメット・ヘヴンに励まされてあなたの庇護から巣立ったの、そして今度はあなたを導くの。さぁさ風ちゃん、おいらたちきりで密封されようじゃないかその“何か”なる永遠の桃源郷へ。問題無い大丈夫、思い残すことなんてある訳無いさ。

「同行すんのは俺じゃないぞお」

 風ちゃんはおいらたち一人一人に的確に、一つ一つの枕をびっしびっしトス&アタック、うっ、なんですかその手首打ちとは思えない鋭さ、コントロール、ほっ、はっ、ふ。痛ぅあっ!

「行くんならそこのメル変の神に引き連れられて行け。そして人類にこの世界を明け渡してくれ、神話の如く」

「ヽ(`⌒´メ)ノ」

「出てけと言われて抗議すんなら家に金を入れてからにしたらどうだ、この万年しれっと居候女神」

「出てけってとこじゃないよ、メル変っ子の神様って言われたことに怒ったんだよ」

 女神様は花も絶望するほどの佳人が眉をつりあげるようにも、愛くるしい少女が一段と愛らしくぶんむくれるようにも怒りを面に表し、言ったものです。

「エレちゃんが異世界の女神様なのは本当だけど、だからってメル変っ子たちの神様だってことにはならないでしょ。みんなはお友達、まったくの平等。祀る者と祀られる者なんていう、絶対的な隔絶なんてありっこないんだから」

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