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第11回(女神様は彼と遊ぶ・その11)

「( ̄Δ ̄)」

「・・・・φ(・∀・*)」

「Σ( ̄ω ̄)」

「(*≧ω・)b」

「(╬ಠ益ಠ)」

「(ー"ー ) 」

「ε-( ̄ヘ ̄)┌ 」

「ヽ(`⌒´メ)ノ」

「∑(‘0‘@)……はっあっ、か、けけ、えっ? お、おう。喋れるようになったか」

「うにゅ。そのようだねぃ」

「あーびっくりした。なんか世界が急に優れて視覚的になったとゆーか」

 風ちゃんが悪いねん。風ちゃんがあたいらを傷つけるからいけないねん。しくしく。

「お前らもなんなんだよ。いきなり呆けたかと思えば、次は訳分からんことを」

「そうだよねー。書き直すのがヤダって言うなら、実際取り替えるしかないよねー」

 くっ。早急にあと100万回は脳内再生しないと風ちゃんのあの残像を遺伝子に刻みつけられないのに。女神様はそれを許さない台詞回しをさらっとしやがりますことね。あっでもその取り替えるって。えっとね、つまりどういうことかというと、今ね女神様が“巻き・取り/戻しのメル変っ子”と呼んだあの棘付き糸巻きの一つがね、女神様のお顔の前の空中で再びくるくるくるっと回転してて、今度は風ちゃんのお顔パズルのワンピースを、丁度口とその周辺が含まれる部分だけを、ブロック状につーっと抜き取っているのです。そんなことだから風ちゃんの現在の表情はまさにΣ(・□・)です。比喩ではなく正味口許が四角く空ろなのです。ううん、風ちゃん。そんな実に漫画的なタコというか、長く突き出された先端の口をぱくぱくさせる必要なんてどこにも無いの。直ぐに△おちょぼ口のギミックと換装するから。これで部分ではあるけど萌えは永遠。そうだしょ、女神様?

「えーと」

 何で目を逸らすの。

「おお前ら何故そうまでして人間には関わりのない話を人間である俺に聞かせたがるんだ。俺はそんなもの聞きたく。大体人の口だけを勝手にして何をするのか。まさか押しつけたり擦りつけたり。じ、人外の新感触。我が口唇にひひ」

「こら。横取りしてどうするつもり?」

 人外の新感触を。ふ、風ちゃんの口唇にひひっ。

「駄目だってば。もー、風ちゃん一々テンパるから。話がちっとも進まないよ」

「おかしい。俺が謝りたい気分になっている」

「じゃあ順を追って説明するよ。先ずこの子はね、自分で設定したある範囲の空間を、自分に巻き付けることで引っ張って、解くことで元に戻せるの。人呼んで“巻き・取り/戻しのメル変っ子”というのはそれがため」

 女神様の説明に合わせるようにして、風ちゃん立体パズルの口ピースを引き抜いていた糸巻きが、引く時とは逆の回転を始めピースを元あった場所に戻していきます。ああ、ギミック装着が。部分的にでもいいからあたしたちの嫁を守りたかった。

「鏡みてくる」

「平気だよ。ちゃんと元に戻ってるって」

 実際、ピースは全く元通りにはめられていたのですが、風ちゃんはやっぱり自分の目で確かめないと不安なのか立ち上がって部屋を出ようとします。1歩2歩3歩。竦むように立ち止まってしまいました。うん。多分、目の端では自分の両脇の景色が不動であることを感知してて、にもかかわらず真正面の景色は近付いてきてるから、ちょっと経験に問い掛けてるんだと思う。

「空間が静止していて風ちゃんが動くのと、風ちゃんが静止していて空間が動くのって同じことだよね。いわゆる相対性」

 女神様がのんびり指摘すると、風ちゃんはぎこちなく振り向きます。

「そもそも空間が可動であること自体、前提にしてはいけないと思うんだ。僕は」

「実際は空間全部を動かしてる訳じゃなくて、その内の適当な一部を巻いたり戻したりしてるだけなんだけどね、“巻き・取り/戻しのメル変っ子”たちは。さっきはエレちゃんや風ちゃんのお顔の一部だけが抜き取られただしょ? 今もね、風ちゃんの進行方向のみの空間を、風ちゃんが進んだ分だけ巻き取ったんだよ」

 風ちゃん、かくーんと顎をおっことした。そりゃそうだよねぇ。大体女神様、その巻き取るって、巻き取られた空間はいったいどうなってんの?

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