第4話<魔術適性>
書き溜めているわけじゃないので話がどうつながるか……
二,三章くらいの話までの概要Ward2ページくらいしか書いてないし、設定もその都度なので矛盾が無いようにできるだけ気をつけていまが、何かあったらごめんなさい。そのうち設定はまとめようと思います。
まだお金使ってないのに銅貨を十円くらいにしたくなってきた……
魔導具は大きく分類すると二つに分けられる。
一つは魔導師が自身の魔術を発動させる、発動具として用いられるもの。一般的には術具や発動具などと呼ばれる。
一つは魔力を持つ人間が魔導具に刻まれた魔術を発動させる、道具のように用いられるもの。此方の方が術具などより圧倒的に使用者が多いため一般的に魔導具と呼ばれている。
魔宝石は基本的に前者の魔道具に使用される。後者にも用いられることはあるが魔宝石自体に術を刻印する必要があり、一度刻印を施すと魔宝石の特性が一つの魔術に固まってしまい、別の術への再利用が不可能になってしまう。そのため制作費だけが上がり、不要になった場合には格安の値が付く。
また、魔導師が同程度の魔宝石を使用して発動する魔術ほどの効果も出ないため、効率が悪い。そのため特別な意図が無い限り魔宝石に刻印を刻むことは無い。
魔宝石を使用する魔導具にも様々な形状が存在する。
フランが愛用している魔導具《発動具》は一メルデ程の杖の形状をしている。杖はただシンプルなのではなく、美術品としても価値がありそうな流麗な形状をしていた。
「これは?」
「無属性の発動具よ。属性を調べるだけなら必要ないと思うけど、その魔導具は魔力制御の刻印が入れてあるから少しは魔術が発動しやすくなるはずよ。無属性が使えるようならそれはハジメにあげるわ」
現在、ハジメが手にしているのは指輪の形状をしている小さな発動具だった。広めのリングに小さな宝石が填められている。刻印とやらを探してみるがハジメには分からなかった。
「刻印は魔力で刻まれているのよ。普通の人間の目に見えるわけ無いじゃない。私は魔力走査が出来るから刻印が分かるけどね。これは人間の半血種である恩恵ね」
「人間の?」
「ええ。人間は他の種族にある固有の能力を持っていないの。獣人なら身体強化、エルフは魔力特性かな」
エルフには魔術に対して高い資質を示す魔力特性というものがある。同じように獣人も高い身体能力と身体強化の能力が種族として備わっているということだ。
「人間は固有の能力を持っていないけど、個人としては偶に能力を発現させる人もいるのよ。最も、その多くは魔術でも代用可能なものだけど、能力を使用する際の魔力消費は格段に小さくなる。私はハーフだから人間の能力が発動することは期待してなかったけど、ある時突然魔力走査が出来るようになったわ」
魔力を感じるだけならある程度の魔導師には可能だ。
フランの魔力走査は魔導具に刻まれた刻印でも詳細に内容を読み取れるそうだ。刻印の詳細まで読み取れる能力は珍しいようで、走査まで行かない魔力検知などは比較的多い。魔力検知や、走査が出来る人間は魔導師ギルドや商人ギルドに多く所属している。
「へー。僕にも何かあるのかな?」
「それは分からないわね。私も最初に発動するまで予兆も何も分からなかったから。何かがきっかけで能力を自覚して発現することが多いみたい」
「なるほど……」
ハジメは感心しながら指輪を指に填める。フランが填めると親指にしか合わないらしいのであまり使っていないようだ。
色々填めてみたが、ハジメの左手薬指にぴったりだった。
「何処に填めているのよ!」
赤くなりながら怒られる。どうやら此方の世界でも薬指の指輪は特別なものらしい。填める前に少し考えたがそういう習慣がないと勝手に考え、問題ないだろうと薬指に填めたが失敗だったようだ。
「薬指だけ丁度良かったから」
「……」
フランは何か言いたいようだったが俯いてしまったが、それ以上何も言ってこなかった。ハジメはとりあえずこのまま適性を調べることにした。
後で聞いたことだが左手薬指は愛の証を示し、結婚や婚約の際に指輪を贈る。このあたりは地球の習慣と同じだった。
「……それじゃあ魔術適性を調べましょうか」
魔術適性は基本的に下級魔術を使用してみるのが一般的に一番早い。今ハジメがしているような魔力制御の指輪などを使えば、魔術の未経験者でも比較的簡単に下級魔術を使用できるようになる。
「大切なのは発動のイメージよ。詠唱を教えるからその言葉から発動のイメージをしてみて」
魔術の発動には必ずしも詠唱が必要にはならない。発動のイメージと魔力操作が最も大切になる。詠唱はイメージを固めるための物で、高位の魔導師は中級程度までなら無詠唱でも発動できる。
詠唱は個人でイメージしやすい様に変更することも多い。
『封書』
フランが封筒のようなものを取り出して呪文を唱えると、一瞬魔法陣が現れてその封が閉じられた。
「……」
「……これが無属性の簡単な魔術ね。他にも念話なんかがあるけど最初に使うのはこの位がいいんじゃないかしら」
なんとも地味な魔術だ。
今回はただ封をしただけで、厳重に封書をする場合は開封の方法を教えた相手にだけ開封できるように術を組む。普通の手紙などは封蝋などが一般的のようだ。
「魔力の込め方は魔術のイメージをしながら発動具に集中するの。息を吐く感覚に似てるかな。ハジメは一度暴走したから魔力の感覚はあると思うけど、その感覚から息を吐くように発動具に注いであげるの」
体の内側に意識を集中すると、確かに以前には無かった感覚がある。体の感覚器官が一つ増えたような感じがする。
『封書』
開いた封筒を受け取り封が閉じるようにイメージしながら呪文をかける。するとフランの時と同じように封が閉じられた。魔法陣は見えなかった。
「初めての魔術が地味……」
「無属性は適性があるわね。風と水は手本を見せてあげられるけど地と火と稀属性は呪文とイメージを伝えるから、自分でやってみるしかないわ」
◇ ◇ ◇
その後風、水とフランの魔術を手本にしながら続け、魔導書を読み上げてもらい地、火、光、影、空、時と下級の魔術を使っていた。
「地属性以外全て適性があるなんて……。魔力からして異常だけど、これは……」
「……」
結果、ハジメの魔術の適性が異常に高いことが分かった。
現在最も有名な空属性の魔導師でも四属性しか適性が無い。しかしハジメには八属性に適性があった。歴史上最も優れた魔導師は九属性全ての適性があったと伝えられているが、ハジメはその魔導師に匹敵するほどのものだった。
「これはあまり知られない方が良いと思うわ……」
「だよね……」
このような高い資質を持つ者がいるとなると様々な国が囲い込もうと画策する可能性は高い。
実際、稀属性に適性を持つものの殆どは何処かの国で囲われて他国に流出しないよう、半軟禁状態にある。それが全ての稀属性となると先が見えている。
「人前では火、水、風、無から三つほどに絞って使用するようにするべきだと思う」
「どれがいいかな?」
「暫くここに住むようなら風と無属性で転移魔術が使えるようにした方がいいわ。ハジメの魔力なら街に行くにも転移魔術を覚えて移動した方が楽だし」
火属性はそのまま火や熱を扱う。水属性も液体などの扱いが一般的で、他に治癒の魔術にも効果を発揮する。風属性も治癒に効果があり、水と組み合わせると複合治癒魔術が可能になる。風は気体を扱う特性もあり、一般的な結界等も風属性が代表的だ。無属性は最も使用者が多く、他の属性との組み合わせるものが多い。軽量の物の転送などは無属性単体で発動できる。念話なども無属性術者が必要になる。
「火属性なんかは魔導具があれば火はおこせるし、水と風がいいかもね。私が言うのもなんだけど水と風と無属性があれば、よほどの事が無い限り大丈夫よ」
「そうしようかな」
「一人で冒険者続けるにしても転移が使えれば都市間の移動もかなり楽になるしね」
「……ここに居ちゃいけない?」
「それは……いいけど。冒険者になって家賃と食費ぐらい払いなさい」
「うん。よかった。……指輪も貰ったし」
「……」
最後の言葉には特にコメントは返されなかった。
ハジメも正直自分でもおかしいと感じている。今まで異性に対して此処まで積極的に接したことは無かった。二日間フランと過ごしたが彼女の隣はすごく居心地が良い。初めてフランを見た時の感覚が忘れられない。
この世界でフランしか知り合いがいないので不安になっているのだろうか。初めてのことばかりで浮かれているのか。
(嫌われないように気をつけよう……)
この二日間のことを思い出しながらふと気になったことが浮かんだ。
「そういえば、魔導具って自分で作れるの?」
「ええ。何か作りたいの?」
「せっかく火属性が使えるからお風呂でも作ろうかと」
「お風呂? 昨日言っていた?」
「この世界には蒸し風呂とかしかないのかな? 湯船に入ったりしない?」
「湯船はあるけど普通の家にはないわね。水も大量に必要だしお湯を温めるのも大変だから」
「お湯を魔法で沸かしたりしないの?」
「火の魔法で温めるって事? 魔導具を使うにしても人間の魔力じゃ効率がよくないわ」
「ということは魔力が高ければ出来る?」
「出来るでしょうね」
とりあえず実現は可能なようだ。魔力についてはフランからお墨付きを貰っているから大丈夫だと判断した。
「フランは普段どうしてるの?」
「私は普通に沐浴してるけど……この家の近くに小川が流れているから」
フランは沐浴しているらしい。この二日間ハジメはお湯で体を拭いていた。
せっかく火属性や水属性に適性があったので浴槽という名の魔導具でも作ろうと思う。
お風呂のことを考えながら文字の練習用に何枚か貰った紙にお風呂について書き込んでいくハジメ。檜木とかあれば檜木風呂が作りたいと、檜木風呂の妄想を絵に描きだしていく。
「……何やってるの?」
フランが手元の紙を覗き込みながらなにやら驚いた顔をしていた。
2012/01/06
第十五話までの数字、誤字、文体及び通貨価値微修正。
通貨価値以外、物語の内容に変更はありません。