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一つの異世界  作者: 南津
はじめての世界編
17/24

第13話<朝の風景>

10万PV&1万ユニークだそうで……

沢山のお気に入り登録ありがとうございます。

昨日まで60人程の方に登録いただいて僕としては多くの方に気に入ってもらえたとか思ってたのですが……いきなり何倍もの方に登録していただきました。いろんな方に読んでもらえるのは嬉しいです。


これからものんびり更新になりますが、よろしくお願いします。

 ハジメの目が覚めたのは、街道から外れた野営地に朝日が射した頃だった。地の季節、地月のこの頃はまだ日も高く、だいたい二刻半を過ぎた時間だ。地球に居た頃はこんな時間に起きる事は無かったのだが、すっかりこの世界の生活に体内時計が調整されていたようだった。


「んー、……ん?」


 体に毛布が掛かっており、腕の中に重みを感じる。毛布は一人一枚しか用意していないので昨日はネネに掛けて、ハジメはローブを纏って眠っていた。毛布が掛かっているということはフランが掛けてくれたのだろうか。


「すぅ……すぅ……」


 腕の中から微かな寝息が聞こえてきた。眠ったときハジメは、横になり体の前でローブを閉じるようにしていたが、今は腕の中に何かが眠っているようだった。

 掛けられた毛布を捲ってみると、そこには昨日保護した獣人の少女、ネネがハジメに抱きつくように眠っていた。

 腕の中でネネは毛布を体に巻きつけるようにしているので、掛けられた毛布はフランのものだろう。


(寂しかったのかな……)


 ネネの寝顔を見てみると、涙の後が付いていた。泣きながら眠ったためか、それとも悲しい夢を見てしまったのか。

 フランが眠っている方に目を向けると、既に起きだしていて、火の準備をして朝食の用意を進めていた。ネネは昨夜食事をしていないので、お腹が空いているだろう。調理をしているフランを眺めていると、ハジメと目が合った。


《おはよう。今朝は早いのね》


 眠っているネネを気遣ってか、声には出さず念話で話しかけてきた。


《おはよう。毛布はフランが掛けてくれたの?》

《ええ、夜中に起きたネネが寒そうにハジメの腕の中にもぐっていったから。服も薄いものしか着ていないしね》

《そっか。潜り込んで来るのに気付かなかったな……》

《ハジメだからね》


(酷い……)


 ハジメはどうやら寝ていたら周囲の気配を感じられない……どころか触られても気付かない鈍い感覚の持ち主だと思われているみたいだ。


(その通りみたいだけど……)


 腕の中でネネが身動ぎしたが、まだ起きては居ないようだ。起こさないようにゆっくり力を込めて抱きしめる。腕を枕にされているため、起きようにもネネを起こしてしまいそうで躊躇われる。

 とりあえずフランが朝食の準備を終えるまではこのまま寝かせておくことにする。腕の中の頭にある大きな耳は、焚き火の木の弾ける音が鳴る度にぴくぴく動いていた。


 街なら朝の鐘が鳴る時間になると、朝ごはんの好い香りが漂っていた。

 ハジメの腕の中でネネが大きく身動ぎする。伸びをするように体を伸ばし、再び縮こまる。目を擦りながら落ちていた目蓋を開く。


「おはよう。良く眠れた?」

「……ん」


 ハジメの腕の中でハジメと視線を交わして小さく頷く。のそのそと起き出し、その場で座り込んだ。毛布に包まったまま頭をゆらゆらと揺らしている。

 腕を開放されたハジメは立ち上がり、伸びをしたり関節をほぐしたりして硬くなった体を覚醒させる。


「おはようハジメ、ネネ。……ネネはまだ寝てるの?」


 ネネの前に回りこみ顔を覗きこむと、目を瞑ったままウトウトしていた。ゆらゆら揺れる頭が可愛らしく、自然と笑みが浮かぶ。

 どうやら朝は低血圧なようだ。


「顔を洗ったら目が覚めるだろうから、水を用意してあげて」


 フランに言われたとおりに水魔術で水の塊を空中に作り出す。布を用意してから水の塊から手で掬い顔を洗う。用意した布で顔を拭くと、さっぱりした気持ちになる。


「ネネ、顔を洗おう?」

「……ん、……」


 何とか意識はあるようで、素直に顔を洗ってくれる。何度か水を掬って顔を洗うと、そのまま顔を上げてしまった。

 ハジメは持っていた布でネネの顔についている水気を、布を置くようにして拭いていく。女の子の顔は擦ってはいけないとかハジメは聞いたことが、ないような、あるような。

 顔を洗うとようやく目が覚めたようで、しっかりと目を開けていた。


「……おはよう、はじめ」

「おはよう。良く眠れた?」

「うん。……ふらん、おはよう」

「おはよう、ネネ。ご飯の用意が出来てるから手伝ってくれる?」

「ごはん?」

「昨日は食べれなかったからお腹空いているでしょ?」


 ネネの返事はお腹から聞こえた。


「ごはん……いいの?」

「もちろん。手伝ってくれる?」

「……うん!」


 ネネはフランの元へ駆け出していく。ご飯が嬉しいのか、お手伝いが嬉しいのか、纏っていた毛布はそのまま残して行ってしまった。


(片付けるように言わないといけないが……少しずつ教えていけばいいだろう)


 ネネが残した毛布を畳みながらそんなことを考えるハジメ。

 フランは、ネネに朝食をお碗に注ぐように教えている。二つのお碗にスープが注がれる。


(……そういえばネネの食器も無いな)


 次の街に着いたらネネ用の旅用品一式を揃えないといけないだろう。


(体も洗った方がいいだろうな。服も着替えが必要だし、靴も履いていない。毛布に食器にカバンに……)


 つらつらと必要そうな物を頭の中に書きとめていく。裸足で街道を歩かせるのは拙いので、どうやって移動するべきか、まで考えがいったとき不意にネネから声がかかる。


「はじめ。ごはんだって」

「ん? ああ、今行くよ」


 二人の下へ近寄り腰を下ろす。ネネは自分の手の中にある食事に視線が釘付けだ。フランにハジメを待つように言われたのか、大きな尻尾を左右に揺らしながら待っている。


「もう食べていいわよ、ネネ」

「……(コクコク)」


 フランの許しを得てネネがスープを食べる。スプーンは小さな手で握るように持ち、零さないよう慎重に口に運んでいる。一口食べた途端に顔を綻ばせる様子に、ハジメもつい嬉しくなる。

 その様子を見てフランも食事を開始する。


「……あれ?」


 何かおかしい、とハジメは感じた。その原因は直ぐに見つかった。いや、見つからなかったのだが。


「フラン、僕のスープは?」


 ハジメにスープが用意されていない。手元にはいつもの固いパンがあるだけだった。


「食器が無いから今日は無しね。パンだけで我慢しなさい」

「え……」

「冗談よ。食器が無いから私が食べ終わるまで待ってなさい。ネネは食べるの遅そうだし、私の後にこの食器を使えばいいわ」

「なんだ……ちょっと本気でこのパンだけかと思ってしまった」

「パンだけでもいいけど?」

「有り難く使わせていただきます」


 素直にフランに頭を下げる。昨夜は携帯食だけだったので気分的にも空腹なハジメ。パンを少しずつ千切りながら口に運んでいく。

 一所懸命にスープを口に運んでいたネネが二人の会話に気付いたようで、食事の手が止まっていた。


「……ごめんなさい」

「えっ!? どうしたの?」

「……ねねがいるから、はじめが……」


 ネネの手は微かに震え、俯いてしまった。ハジメがネネの頭に手を置くと、怯えるように身を縮めた。


「そんなこと無いよ。ネネはゆっくり食べて良いからね。今日から僕たちは家族なんだからね」

「かぞく……」

「そうよ。ハジメなんて残り物で十分なんだから、遠慮する必要は無いわ。沢山食べなさい」

「……え?」

「はじめ……」


 ネネはフランの言葉に困ったようにハジメを見た。


「……そ、そうだよ。ネネが沢山食べて元気になってくれたら僕も嬉しいな。で、でも太るといけないから程ほどにね?」

「……ハジメ。女の子に太るなんて言うんじゃないわよ」

「あ……」

「ハジメは今日(・・)はお腹空いてないみたいだから二人で食べましょうか」

「えぇ……」


 その後、フランは先ほどまでよりさらにゆっくりと食事を再開し、ハジメが朝食にありつけたのは更に四半刻――凡そ三十分経ってからだった。


   ◇   ◇   ◇


 朝食を終えた三人は野営地の片づけを終えて出発の準備を始めていた。

 そこでやはり問題になったのはネネの服装だった。この時期はまだ暖かいとはいえ、薄手のワンピース――ネネが言うには寝起きに奴隷商に売られたため、そのままの姿でいたらしい。およそ外で活動する服装ではない上に、靴すら履いていないのだ。

 フランの話では、昨日飛行魔法で結構な距離進んだらしく今日一日歩けば街がたぶん(・・・)あるということだ。以前通ったときとは反対方向であるため確証は無いらしい。


「ねねあるけるよ?」

「だめよ。裸足で外を歩くなんてだめ」

「そうだよ。怪我は治せるといっても女の子なんだから」

「ほら、ハジメ。抱えてあげなさい」

「うん。ネネ、おいで」


 ハジメは自身に身体強化をかけてネネを片手で抱える。ネネはハジメの首に手を回し、腿の辺りに回されたハジメの腕に座るように体を預けた。

 ネネの十歳という年齢を考慮してもまだ小さい体はハジメにとって、なんら負担にはならなかった。


「ちゃんと摑まっててね。今日一日は退屈かもしれないけど、街に着いたら靴を買うから」

「うん。へいき」


 子供に同じ体勢で居続ける事をお願いするのは可哀相だが、我慢してもらうしかない。二十一歳でいきなり十の子供が出来て父親になった気分になる。

 文句も言わず素直に聞いてくれるネネが健気で可愛い。


「ネネはいい子だね」


(妹や娘がいたらこんな感じなのかな……?)


「えへへ」


 頭を撫でると恥ずかしそうに頬を染めて耳がぴくぴく動く。大きな尻尾はゆらゆらと揺れる。


(うわー。これは可愛いな……今度耳触らせてくれるかな。……フランの耳も気になるよねー)


 既に親ばかも少し入っているが異種族の耳に興味津々のハジメ。以前フランに断られたが、ネネなら触らせてくれる様な気がした。


(フランも今度頼めば触らせてくれないかな……)


「……」


 ハジメは隣を歩いている御方から冷たい視線を感じた気がしたが今は気にしない。


ありがとうございます。

次もほのぼのとお買い物……かな?


全く書き溜めてないので次はこれからです……

明日は朝から予定があるのでどうなるか分かりません。のんびりとお待ちいただければと思います。


2012/01/06

第十五話までの数字、誤字、文体及び通貨価値微修正。

通貨価値以外、物語の内容に変更はありません。

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