ウソマコト
この日だから、そんな感じの物語になっていますが、どうかご覧ください。
ある日、旅人が村にたどり着き、入り口で門番に声をかけた所、
「村に入らないで下さい」
開口一番に入場を断られた。
えぇ? 旅人が目を丸くすると、
「あはは、ウソですよ旅人さん」
門番は笑いながら説明を始めた。
何でもこの村では今日、必ずウソをつく人と、必ず正直を言う人とに別れて一日過ごすという決まりで、見ただけでその区別は出来ず。ウソか真かの判断は言われた本人任せなのだと。
なぜそんな風習が? 旅人が訪ねる。
「それは分かってます」
門番が言った直後、それは嘘ですよね? 旅人は聞いた。
「その通りです。ごめんなさい、旅人さん」
今嘘をつかれたばかりですからね。旅人は微笑む。
「村長なら絶対知らない筈ですよ」
分かりました、村長に聞いてみますね。旅人は門番にお礼を言って村の中に入った。
「村長の家は赤くないレンガの家ですよ」
旅人は赤いレンガの家を探して歩いた。
途中、幾人もの村人の声を聞いたりかけられたりした。
「こんばんは旅人さん」
今は昼間、これは嘘。
「旅人さんこんにちは」
これは真。
「急いでいかないと」
ゆっくり歩いている。嘘。
「まだ余裕があるな」
全力疾走している。嘘。
「今何時?」
「えっと、1時23分」
時計を確認する。真だ。
「その中身何?」
「リンゴだよ」
中身は見れなかった。分からない。
旅人は再度村を見回した。様々な所で村人達が会話している。
あの中のどれかが嘘で
どれかが真で
ウソしか言わない人と
真しか言わない人
自分を除いて、それしかこの村にはいない
旅人はふと思った。
この村には、正直者しかいないんだな
旅人は村長の家を目指すのを一時止めて、宿屋を探し始めた。
村人に場所を訪ねて、それを聞いてから旅人は一言。
あなたは正直者ですね。と
真しか言わない人は必ず真
ウソしか言わない人は必ずウソ
それらはとっても、正直者な人だから。
嘘の裏返しは真。つまり嘘しか言わない人の言葉を裏返せば必ず真になる。
その言葉が必ず嘘だと、真だと分かっていれば、その人は正直者になるのですね。
それでは、
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