41話 見舞い
夏休みに入ってから、俺は週に2、3回は都心の病院へ足を運ぶようになった。
明るい気持ちで病院に向かう。
厳正おじいちゃんに会えると思うと、自然と足取りが軽くなる。
でも、病室のドアを開けた瞬間、いつも少しだけ胸が締め付けられる。
今日も高層階の角部屋に入ると、ベッドに横たわる厳正の姿が目に入った。
少しずつ小さくなっている気がして、心がざわつく。
厳正はベッドの背を少し起こして俺を見た。
厳正
「おう……また来たか、大地。」
声は弱々しいが、目だけは相変わらず鋭い。
俺は持ってきた差し入れの果物をテーブルに置き、椅子に座った。
大地
「今日は調子どうですか?」
厳正は小さく笑って、窓の外に目をやった。
厳正
「まあ、悪くはないさ。
お前が来る日は、なんだか元気が出るからな。」
嬉しそうに言ってくれるのに、どこかそっけない。
あの公園に来なくなった日の距離感を思い出すような雰囲気だ。
他愛もない話をしていると、ナースの佐田美咲さんが病室に入ってきた。
点滴の確認に来たらしい。
佐田
「あら、大地くん。また来てくれたのね。」
俺は軽く頭を下げた後、少し席を外した。
自販機でココアを買って病室に戻る。
病室の外で待っている間に、佐田さんが出てきたので声をかける。
大地
「佐田さん……おじいちゃん、最近なんかそっけないんですけど……
何か理由、わかりますか?」
佐田さんは少し困ったような、優しい顔で答えた。
佐田
「あなたに弱っていく姿を見せたくないんじゃないかな……
厳正さん、昔からプライドが高い人だから。
元気な姿だけを見せたいって思ってるんだと思うよ。」
その言葉が胸に刺さった。
俺は少し黙ってから、病室に戻った。
厳正は俺の顔を見て何かを感じ取ったのか、
窓の外を眺めながら静かに言った。
厳正
「……大地。俺はまだまだ諦めはせんぞ?
お前には、こんな世界でも生きてみたいと思わされたんだからな。」
俺は思わず息を飲んだ。
大地
「おじいちゃん……」
厳正はゆっくりと俺の方を向き、
少しだけ昔の覇気を取り戻した目で笑った。
厳正
「だから、お前は自分の道を歩け。
俺はここで、ちゃんと見守ってる。」
その言葉を聞いて、胸の奥が熱くなった。
おじいちゃんが俺に与えてくれたもの、
あの公園で出会った日から今までのすべてが、
一気に溢れてきそうだった。
大地
「……ありがとう、おじいちゃん。
本当に、ありがとう。」
病室を出た後、俺は病院の中庭で缶のココアを開けた。
夏の風が強く吹いていて、街並みが遠くまで見渡せた。
大地(心の声)
「……おじいちゃん。
俺、おじいちゃんのおかげでこんなに楽しく過ごせてるよ。
こんな世界でも、普通に、楽しく……」
熱くなる目頭を冷ますように、冷たいココアを流し込んだ。
蝉たちの声が鳴り響く夏空に、
心からの感謝を乗せて、俺は静かに誓った。
正直2択でした。
おじいちゃんに会わせるorおじいちゃんと会えないルート。
最初は会わせずに行くつもりでしたが、水樹主将が諭すんだもの。会わせちゃいました。
作中の人たちは本当に思い通りに動いてくれない。




