38話 月の面影
こんばんは。美月です。
少し面白そうなチャンネルを見つけました。
今回は少し短いけど、楽しんでいってね。
私は広いダイニングテーブルで家族と夕食を終えたばかりだった。
使用人さんが食器を洗ってる横で、
母は優雅に紅茶をすすっている。
会話はほとんどない。
いつものことだ。
「失礼します」
美月は静かに席を立ち、自分の部屋へ戻った。
重厚なドアを閉めると、ようやく肩の力が抜けた。
ベッドに腰を下ろし、スマホを手に取る。
いつものようにアプリを開き、
おすすめ動画を流し見しようとした瞬間——
画面に表示されたサムネイルに、思わず指が止まった。
【新チャンネル】学園てんごく!! ~現役高校生の日常をお届けします~
サムネイルはシンプルな一枚絵。
クマ、狐、猫、兎の4つのキャラクターが並んでいる。
その下に小さく「初配信」の文字。
美月「……学園てんごく?」
興味を引かれてタップする。
配信はまだ始まっていないが、登録者数はまだほとんどいなかった。
(珍しい……学生のグループ配信?しかも男子が……?)
美月はベッドに深くもたれ、
配信開始までの時間を待った。
数分後、画面が切り替わる。
【配信開始】
画面には一枚絵のイラストが表示され、
明るいBGMが流れ始める。
そして、最初の声が響いた。
ベル
「アース、本番では音量考えろよ?また音割れするからな。」
美月は思わず身を乗り出した。
(……これは、鈴木くんの声だ。
間違いない。他は、大地くん、佐藤くん、日奈子ちゃんもいる。
最近みんなで集まってると思ってたけど、配信のためだったんだ。
ということはイラストは彩花かな? あの子、絵師志望だし……)
美月は静かに微笑んだ。
驚きよりも、優しい温かさが胸に広がる。
男子なのに、こんな風に堂々と声を届けようとしている。
世間に出ようとしている。
それは彼女にとって、とても眩しい光だった。
配信を見終えた美月は、ふっと微笑みながらベッドに倒れ込む。
すごいな、みんな。
男子なのに怖がらずに。
世間に出ようとしてるんだ。
美月は羨ましくも、元気をもらった気がした。
彼女はゆっくりと起き上がり、いつものテーブルに向かった。
椅子に腰掛け、マイクをつける。
いつも通り、
一つの配信が始まる。
moon
「みんなこんばんは。moonだよ。
今日もよろしくね。
今日は面白いチャンネル見つけたから、その話からしてもいいかな?」
全員もれなく伏線要員しかいない。
多分もうわかりきってたと思うけど
moonは美月でした。




