鈴木との出会い。
担任の先生に連れられて、職員室から教室へ向かう廊下。
担任は、歩きながら少し声を落として話しかけてきた。
口調は優しいけれど、どこか気遣うような柔らかさがあった。
担任
「荒木くん、少し説明しておくね。
この学校の男子生徒は、全部で8人だけなの。
君の学年は3人よ。
そのうち、毎日ちゃんと学校に来ているのは
鈴木くんただ一人。
他の子たちは、ほとんど不登校ね。
男子は単位が免除されているから
無理に来なくてもいいんだけど……
鈴木くんは珍しく
毎日顔を出してくれているの。」
大地
「……そうなんですか。」
俺は内心で少し驚いていた。
男子が8人しかいないなんて、
改めてこの世界の異常さを実感する。
そして、鈴木というもう一人の男子が
唯一毎日学校に来ているという事実に
尊敬のようなものを覚えた。
担任はさらに声を低くして続けた。
少し心配そうな、でも本気で気にかけてくれている口調だった。
担任
「男子が少ないから、
女子の視線も強くなりがちなんだけど……
法律で男子へのセクハラはかなり厳しく罰せられるから、
表立って何かされることは少ないはずよ。
それでももし何かあったら、すぐに先生に言ってね。
無理に我慢しなくていいから。」
俺は静かに頷いた。
この世界では男子が学校にいるだけで特別な存在なのだと改めて実感した。
少し胸がざわつくけど
おじいちゃんの特訓で鍛えた体と心が
不思議と俺を支えてくれている気がした。
担任
「さぁ、着いたわよ。
入って。」
教室の扉を開けた瞬間、
教室の中が一瞬、静まり返った。
30人近くの女子生徒たちの視線が
一斉に俺に集中する。
その視線には、驚きと好奇心、そして少しの期待が混じっていた。
俺は背中にチクチクと視線を感じながら
内心で少し息を詰めた。
以前なら、この視線だけで体が震えていたはずだ。
でも今は、おじいちゃんの言葉と
積み重ねたトレーニングが
俺の足を踏ん張らせてくれていた。
担任
「みんな、静かにね。
今日から、荒木大地くんがこのクラスに復学します。
1年ぶりだけど、みんな、よろしくね。」
俺は教室の前で軽く頭を下げた。
大地
「荒木大地です。
よろしくお願いします。」
声が思ったよりしっかり出た。
おじいちゃんの特訓で
体だけでなく声にも力がついていたのかもしれない。
女子生徒たちの間から
小さなざわめきが広がる。
「え、ほんとに男子……?」
「背、高い……」
「体、がっしりしてる……」
担任は俺に向けて空いている席を指差した。
担任
「荒木くん、
あそこの後ろの席に座って。
隣は鈴木くんよ。」
俺は指定された席に向かいながら、
教室の空気を肌で感じていた。
女子たちの視線が、
背中にチクチクと刺さる。
でも以前のような恐怖はなかった。
ただ、少しだけ緊張していた。
「ここから、
本当に学校生活が始まるんだ」
という実感が
胸の奥で静かに広がっていく。
席に着くと隣の男子が
無表情で俺を見た。
高身長で、黒縁メガネ。
眼鏡の奥の瞳は冷たく、
でもどこか鋭い。
鈴木
「……ふん。
転入生か。
無駄な挨拶はいい。
授業に集中しろ。」
大地
「……よろしく、鈴木。」
鈴木は眼鏡を指で押し上げて、
淡々と答えた。
鈴木
「鈴木優太だ。」
その瞬間、
教室の空気が少し変わった気がした。
女子たちの視線が
俺と鈴木の間に集中する。
男子が二人並んで座っているだけで
珍しい光景らしい。
授業が始まっても
俺は集中できなかった。
隣の鈴木は、ノートを取る手が速く
姿勢も完璧だった。
時々、俺の方を見て
小さくため息をつく。
初めての男同級生。
仲良くなれるといいな。
2人が座る窓側の席には
春の陽射しが
教室の窓から優しく差し込んでいた。
鈴木って名前は高身長なイメージがある。
個人的に。




