36話 産声
今日は俺、大地視点だ。
みんなを待たせてる。
早く合流しないとな。
逸れた日奈子を見つけた俺は
急いでみんなの元へ向かった。
2人でPC、周辺機器売り場へ。
真面目に話し合ってる4人を見つけて
大地
「ごめん!遅くなった。でもいいもん見つけた。」
すかさず日奈子が、
日奈子
「みんな、この曲聴いてみてよ!すごくいいから!」
日奈子はスマホでさっき聴いてた曲を調べて流そうとする。
鈴木
「ここでは流すな。店の迷惑になる。」
怒られて反省した日奈子、しゅんとなる。
日奈子
「ごめん。」
あははと小笑いしながら彩花が提案。
手をぱちんと叩いて、
彩花
「じゃあカラオケ行こうよ!個室でドリンクバーついてるし。」
俺たちはカラオケで成果を発表することに。
ショッピングモールの中に併設されてるカラオケ店の個室に入り、会議を再開する。
まずは日奈子が口火を切る。
日奈子
「この曲!聞いてみて!」
日奈子が流した曲が部屋中に広がる。
アップテンポで陽気な曲。
内容も学校の風景を思い出させる。
大地
「この曲が出た時のジャケットが5人で黒板前に写ってる写真でさ。今の俺たちみたいでピッタリだなって。」
佐藤
「確かにいい曲ですね。音に乗れそうです。」
彩花
「すごいね、全部楽器だ。今時ないよね?オーケストラみたい」
鈴木
「100年前の曲か。よく見つけたな。」
大地
「この曲のタイトルにあやかってチャンネル名は『学園てんごく!!』でどうだ?天国はひらがなで、こんな感じ!」
スマホで入力してみんなに見せる。
彩花
「かわいい!キャッチーだしいいね。」
佐藤
「天国か。今の僕にとってはそうなのかもしれない。」
鈴木も頷いてくれた。
こうしてチャンネル名は『学園てんごく!!』と決まった。
俺たちはジュースを飲みながら、
大地
「予算の話もしようぜ。機材とかどれくらいかかるか。それぞれどれだけ出せる?」
日奈子「ごめん。あんまりお金ない‥‥。
パソコン買っても、お部屋置けないから買わなくても大丈夫。」
彩花
「あまりお金ないなぁ。イラスト用の機材とかにお金使ってるし。あ、でも、PCはもってるからいらないよ。」
佐藤
「‥先週の稼ぎの残りが、4万くらいです。
僕もゲーム用のPCは持ってるので、1台分は浮きます。」
大地
「俺は17万くらいかなぁ。最近色々買ったしなぁ。」
呆れたように鈴木が淡々と答える。
鈴木
「パソコン代は俺が出す。
俺、大地の分と編集用で持ち運べるのが一台。」
日奈子
「えっ!?いいの!?」
佐藤
「鈴木くん、そんなにお金あるの……?」
鈴木はスマホの画面を見せながら、
鈴木
「320万円ある。精子提供で貯めた。」
一瞬、個室が静まり返った。
大地と佐藤が目を丸くする。
大地
「320万……!?」
佐藤
「鈴木くん……それって……」
日奈子も驚いて口をぱくぱくさせる。
鈴木はいつもの冷静な声で続ける。
鈴木
「中3からずっと貯めてた。将来的に会社を立ち上げるためだ。
今回の経費は俺が出す。
PCは俺も使うから問題ない。
稼げるようになったら中抜きさせてもらうから問題ない。」
佐藤が慌てて止める。
佐藤
「でも……もし稼げなかったらどうするんですか……?」
俺は気づいていた。
強行姿勢すぎる鈴木、
多分稼げないことも考えてる。
その上で出すと言ってくれてるんだ。
俺は即座に一喝した。
大地
「俺が稼がせる。」
その言葉に、個室の空気がピンと張りつめた。
鈴木は少しだけ口元を緩めて、
鈴木
「…ふん。頼もしいな。」
彩花が圧倒されながらも
彩花
「なんか……熱いね、このチーム。」
俺たちのやり取りを見た
佐藤の感動が、日奈子の喜びが伝わってくる。
いいチームになりそうだ。
そして次は企画案を出し合う。
淡々と一案一答形式で鈴木が答える。
大地「スポーツ挑戦企画!」
鈴木「顔出す気か?却下だ。リスクもある。」
佐藤「僕はゲームで貢献したい。」
鈴木「対戦ゲームで和気藹々と遊ぶ姿を載せるか。クラスメイトとの生活というチャンネル方針も活かせる。」
日奈子「ハンバーグ作りたい!大地君家のあのハンバーグ!」
大地「日奈子、料理できんのか?」
日奈子「多分!大丈夫!‥」
鈴木「失敗しても挑戦企画として出せる。完成品のインサートと実食の感想を載せる方向で。」
いろんな案が出た。
やれることはなんでもやっていきたい。
会議は意外とすんなり終わる。
会議は1時間程度で終わり、
余った時間でカラオケ大会になった。
大地はこぶしの効いた演歌タイプで感情が乗って声がでかい。
歌い始めると、
鈴木が呆れ気味で
「声でかいな」
佐藤が苦笑い
「大地くん、熱血すぎ…」
大地は最後まで感情を込めて歌い切り、84点!
みんなから「熱い!」と拍手をもらった。
鈴木は音程が安定してるが強弱がない。
淡々と歌う姿に日奈子が
「鈴木くん、安定してるね!」と褒める。
鈴木
「感情より正確さが大事だ」
冷静に返す。86点。
佐藤はうまい。ハイトーンボイスが綺麗。
アニメソングを選んで歌うと、
みんなから「佐藤くん上手い!」と驚きの声が上がった。89点。
彩花は普通。良くも悪くも女子高生って感じ。
ポップスを明るく歌う姿に、
大地
「彩花、普通にうまいじゃん!」と褒めると、
彩花
「そんなことないよー」と照れ笑い。90点。
日奈子の番、
日奈子
「あまりカラオケとか行けないから、緊張するな…」
曲が流れ、日奈子が歌い出した瞬間、
部屋の空気が変わった。
いつもの元気な声とは全く違う、透き通るようなバラード。
寂しげで繊細な部分に気持ちが乗っていて、
俺は思わず息を飲んだ。
96点。
歌だけで食っていけそうなレベルだ。
曲が終わると、みんなが呆然としていた。
佐藤
「上手い、上手すぎる……」
彩花
「日奈子ちゃん、こんなに歌うまかったんだ……」
鈴木
「意外だったな。これは伸びる。」
大地は鼻を啜りながら言った。
大地
「あぁ。本当に良かった。ずっと聞いてたい……
これは強力な武器だ。」
日奈子はマイクを握ったまま照れくさそうにクネクネしながら、
日奈子
「えへへ……照れるなー。
私、歌の練習とかほとんどしたことないんだけど……
みんな褒めすぎだよー。」
俺は確信した。日奈子は歌売りができる。
思いがけない収穫を得て、俺たちは引き続き盛り上がった。
残りの時間を歌って踊って、
楽しい時間はすぐに過ぎて、終了を知らせる電話が鳴った。
この中で1番歌が上手いのは誰かって
そう考えた時に
日奈子が1番しっくり来た。




