決起の号令
初めて教室に来たあの日から3日が過ぎた。
週明けの学校。
僕はまだ、前髪で目を隠したまま
席に座っていた。
視線が刺さる。
でも、大地君と鈴木君が隣にいるだけで
少しだけ安心できた。
朝のホームルームが終わると、すぐに大地君が振り向いて明るく声をかけてきた。
大地
「佐藤、
今日も来てくれてよかったぜ!
ゲームの話、
続きしよう!」
鈴木
「……またか。」
小さく頷いた。
佐藤
「……うん……
よろしく……」
そこに日奈子さんがそっと近づいてきた。
日奈子
「先週はごめんね?」
前髪の隙間から彼女を見上げた。
日奈子さんは申し訳なさそうに、
でも明るく笑っていた。
佐藤
「日奈子さんは悪くないよ。
僕が怯えてただけだから……」
まだ怯えが抜けない。
でも、そのことすら申し訳なく思えてくる。
日奈子
「あの後、FC1やったんだ!
まだ途中だけど、オルティアまで進んだよ!」
佐藤
「!?!?!?」
僕が勧めたゲームを女の子がやってくれた。
しかも、ラスト目前まで……
胸が熱くなった。
大地
「俺はクリアしたぜ! FC1!
古さを感じない名作だった。
盗賊塔の決起のシーンは泣けた。」
日奈子
「そこまでなら、ひなも進んでるからわかるよ!
ハンスの号令のシーンだよね!」
大地
「そうそう!
あそこはハンスのサブクエしてたら、
もう涙なしでは見れないよな。」
鈴木
「言った通りサブクエもちゃんとこなしてたか。
こなしてなかったら次回作は貸さんつもりだった。」
クラスメイトみんなでゲームの話ができる。
ゲームのキャラたちが勇気をくれる。
震えも止まった。
ゲーム内のハンスのセリフが頭の中で響いた。
ハンス
『前を向け。胸を張れ。お前たちには……
俺がついてる‼︎』
佐藤
「『俺がついてる』‥‥」
思わず口から出てしまっていた。
日奈子
「そう!塔の上のそのセリフ!
佐藤くんも、ハンス好きなの?」
佐藤
「……うん……
ハンスみたいに、
誰かの背中を押せるようになりたい……」
鈴木
「……カザミも、
似たようなこと言ってたな。」
大地
「みんなゲームのキャラに勇気もらってるんだな。」
日奈子
「ひなも!カスミみたいに、
みんなを支えられるようになりたい!」
鈴木
「……お前はもう十分支えてるだろ。」
日奈子
「えへへ、
ありがとう!」
そこから先は4人で仲良くゲームの話をした。
日奈子さん、優しいな。
あの日あの後、
僕と仲良くなるために、
ゲームをしてきてくれたんだ。
大地くんも、鈴木くんもそれに付き合ってたんだろうな。
嬉しいな。
佐藤
「日奈子さんってFCに出てくるヒロインみたいな人ですよね。
明るくて元気で。」
日奈子
「えぇえぇえ!!
うれしい!」
大地
「かもな。」
鈴木
「そうか?
似てるやついるか?」
みんなで笑って好きなことはなして。
もっとこの学校で話がしたい。
僕にかかっていた暗い影は
優しい日の光がかき消してくれていた。
日奈子に対して鈴木が若干デレを見せました。
理由は自分の好きなカスミを褒めたからですね。
作者の推しは鈴木です。




