陽光、影を残して。
昼休み、教室の奥で俺、鈴木、佐藤の三人が集まっていた。
ゲームの話が止まらない。
佐藤
「大地くん!はじめるならFCは1からやるべきだよ!
ストーリーの伏線が全部繋がるから、
最初から順番にやらないと後悔するよ!」
大地
「マジか!
じゃあ1からだな。
でも時間かかりそうだぞ?」
鈴木
「いや、0の外伝からやれ。
伏線拾える。」
佐藤
「外伝は後でいいよ!
本編の流れが大事なんだよ!」
俺は笑いながら、
佐藤の熱量に驚いていた。
怯えながらも、
ゲームの話になると目が輝く。
鈴木も普段の冷たさとは裏腹に、
少しだけ口元が緩んでいる。
そんな中、日奈子が勢いよく近づいてきた。
日奈子
「楽しそうだね!
なんの話?」
大地
「ゲームだよ。
わかんの?」
日奈子
「あんまわかんない。」
佐藤の体がピクッと震えた。
俺はすぐに気づいた。
佐藤の怯えが顔に出ている。
笑顔が少し硬い。
日奈子は何も気づかずに明るく続けた。
日奈子
「佐藤くん。
学校楽しめそう?」
佐藤は前髪の下で目を伏せ
肩を小さく縮こまらせた。
声は震え、ほとんど聞こえないほど小さかった。
佐藤
「……う、うん……
少し……」
(日奈子はいい子だ。
悪気なんてない。
でも、さすがにこれはバッドコミュニケーションだ。
佐藤は女性を相当怖がっている。
日奈子の明るさが、今は佐藤にとってプレッシャーになってしまってる……)
日奈子は明るく笑おうとして、
でも指先が袖口をぎゅっと握りしめ、
肩が少しだけ落ちている。
彼女は自分の言葉が佐藤を怯えさせてしまったことに気づき、胸の内で反省しているようだった。
(……私急に話しかけすぎちゃった……
佐藤くん、怖がらせちゃったよね……
ごめんね……)
俺は慌てて間に入った。
大地
「日奈子、
ゲームってそもそもやったことあんの?」
日奈子は少し申し訳なさそうに笑い
明るく振る舞おうとした。
日奈子
「あるよ?
マルオとか!
3ステージ目クリアしたことないけど。」
大地
「そのレベルかよ。」
日奈子
「でもボスは倒せてるよ?
ちゃんとやったら全クリできるよ!」
大地
「だいぶ先だぞ?」
鈴木が淡々と割り込んだ。
鈴木
「無理だな。
後半は意外と難しい。
落ち着きが悪い日奈子には無理だ。」
日奈子
「やってみないとわかんないじゃん!」
鈴木
「そこまでいけてから言ってくれ。」
鈴木が貶すように突っ込んでくれる。
害はない。
佐藤にそう伝えたいように見える。
冷たく聞こえるけど鈴木なりの距離の取り方だ。
でも、佐藤は俯いていた。
たまに目は合うが困惑と恐怖が混ざった顔をしていた。
日奈子は肩を落とし、
指先を包み込んで拳をぎゅっと握りしめ直した。
笑顔を保とうとしているけど、瞳の奥に
『私、また迷惑かけちゃった……』
という後悔がチラリと見えた。
俺は佐藤の肩に軽く手を置いた。
大地
「佐藤、
大丈夫だ。
日奈子はいい奴だよ。
怖がらなくていい。」
佐藤は小さく頷いた。
声はまだ震えていた。
佐藤
「……うん……
わかった……」
日奈子は少し申し訳なさそうに笑った。
指先をぎゅっと握りしめ、肩を少し落としている。
日奈子
「ごめんね、佐藤くん。
私、急に話しかけすぎちゃったかも……
ゆっくりでいいよ。」
佐藤は前髪の隙間から日奈子を見上げ、
ほんの少しだけ頷いた。
教室には雲の切れ間から光が刺していた。
佐藤にだけ雲の影を落として。
(佐藤、少しずつでいい。
俺たちがお前のペースに合わせるから。)
いつかみんなで笑い会える日のために。




