見慣れない景色。やさしいともだち
初めての教室、初めてのクラスメイト達。
ホームルームが終わった瞬間、
僕は机に突っ伏したまま息を殺した。
(……挨拶、終わった……
みんなの視線、
まだ刺さってる……
僕に向けられるなんて……
怖い…………怖いよ……)
心臓がバクバク鳴っている。
前髪で目を隠しているけど、
周りの視線が
針のようにチクチク刺さってくる。
担任の先生が去った後、
すぐに誰かが近づいてきた。
大地君だ。
大地
「佐藤!
俺、荒木大地!
よろしくな!
いつぶりの学校だ?
緊張したろ?」
(大地君……
あの明るい声……
怖くない……
でも、男の子と話すの
小学校以来……
どうしよう……
「戦う?」
逃げたい……
でも、
「逃げられない‼︎」……)
僕はゆっくり顔を上げ、
前髪の隙間から大地君を見た。
笑顔がまぶしい。
隣には鈴木君が無表情で座ったまま。
佐藤
「……まだ緊張してるよ……
小学校以来かな……
自然と家が近くて男子が集まるこの高校に進学してたんだけど……
入試とか、
受けてないんだ。
この地域じゃ、
男子は普通に受けなくていいし……
僕、男の子を見るの、
幼稚園以来かも…………」
大地
「そっか……
家で何して過ごしてたんだ?
俺はトレーニングして1年学校サボってたけど。」
(……話しかけてくれてる……
大地君、
優しい……主人公みたい。
正直に言ったら引かれるかな……
でも、嘘つきたくない……)
佐藤
「……昔のアニメ見たり、
ゲームしたり……
そんなところかな。」
(言っちゃった……
フィクションの世界でオタクって、
受け悪いって学んでたのに……
失敗した……
大地君、引いてるかな……?)
大地
「マジで!
俺ゲーム好きだけど、
一緒にやる友達いなかったんだよね!
何やってんの?
俺はスターカート(レースゲー)とかバトシス(4人対戦ゲーム)とか。」
(……大地君、
ファミリー向けの優しいゲームをやってるみたい……
僕も、もっとガチなやつやってるけど……
言っちゃおうかな……)
佐藤
「面白いよねスタカー。
僕もレート戦はだいぶやりこんでるよ。
ブラウン(男キャラ)が強いんだよね。
癖あるけど……」
止まらなくなって語り続けた。
「大地くんはRPGとか好き?FCシリーズとかやったことある?」
大地
「いや、まだねぇかも‥興味はあるぞ!」
佐藤
「そうなんだ!新作のFC4はおすすめだよ!主人公もかっこいいし、ヒロインのスミレはほんとに可愛いし。でも僕は盗賊のカザミが好きかな!素早さ高くてサポート性能高いし、いるだけで盤面が整理できて‥」
大地君の顔色を見る。
若干引いてた?
恥ずかしい。
前の席から振り向かずに鈴木が、
淡々と口を挟んだ。
鈴木
「カザミはバフ盛れば火力も出せる。
いいキャラだ。
人物背景も共感が持てる。」
佐藤
「鈴木くんもFC4やってるの!?!?」
佐藤の声が教室中に響いた。
自分でもびっくりした。
鈴木はゆっくり振り向いて
眼鏡を軽く押し上げた。
鈴木
「トロコン済みだ。
イベントも網羅した。
なんなら2週目だ。」
(……鈴木くんも……
同じゲームやってる……
しかも、
トロコン……
イベント網羅……
2週目……
マジで……?)
佐藤
「……マジで……」
僕は思わず笑顔になった。
佐藤
「鈴木くんはどんなキャラが好き?」
鈴木
「カスミだな。妹に似てる。」
佐藤と鈴木2人の世界が出来上がる。
怯えが少しずつ消えていく。
こんな話ができるなんて夢みたいだ。
大地
「俺もFC4、
やりたくなってきた!」
鈴木
「……ちゃんとストーリー見ろよ?
佐藤、今度他のゲームも語ろう。」
僕は小さく頷いた。
佐藤
「……うん……。
よろしく……
お願いします……!」
重苦しかった雨は止み、
教室の窓から日差しが差し込んでいた。
僕の学校生活は、
ここから始まった。
(……大地君も、
鈴木くんも、
ゲームの話、
ちゃんと聞いてくれた……
僕、こんなに話せたの
初めてかも……
怖かったけど
少しだけ……
嬉しい……)
大地は2度目の自己紹介。
突発的に名前名乗った時なんて大概覚えられてない。
俺も覚えてないタイプなので大地はそれをわかって2回名乗ってます。
by作者




