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一つの変化、佐藤の初登校。

水泳部入部を決めた翌朝、

俺は教室に入るとすぐに鈴木の席に近づいた。

大地

「鈴木!

俺、水泳部入ったぞ!」

鈴木はいつもの無表情で俺を見上げ

一瞬だけ目を細めた。

鈴木

「……は?」

大地

「本気だよ!

昨日見学して、主将の泳ぎ見て決めたんだ。

お前も来ないか?

鍛えられるぞ!」

鈴木は呆れた顔で俺を見つめ

小さくため息をついた。

鈴木

「……お前、

本当に筋肉バカだな。

女の前で上裸とか襲われても知らんぞ。」

そこに日奈子が勢いよく駆け寄ってきた。

日奈子

「大地君!

水泳部入ったって本当!?

えええええ!

すごい!

ひな、びっくりしたよ!

大地君の泳ぐ姿、絶対見たい!

いつか大会とか出るの!?

応援するよー!」

大地

「男子の大会はないんだけどな。」

日奈子は目を輝かせ、両手をパチパチ叩いて大喜び。

鈴木はさらに呆れた顔で、俺と日奈子を交互に見た。

鈴木

「……お前ら、

本当に騒がしいな。」

俺は笑いながら肩をすくめた。

俺たち3人はいつものように談笑していた。

そんな中、朝のホームルームが始まった。

日奈子は席に戻る。

担任の黒川先生が教室に入り、

1人の生徒を招き入れた。

そこに現れたのは

少しぽっちゃりとした金髪の男の子だった。

目が前髪で隠れていて、表情はよく見えない。

体を小さく縮こまらせ、担任の後ろに隠れるようにして立っている。

佐藤

「‥‥佐藤‥宏太です。‥」

先生は優しく佐藤くんの背中を押して

穏やかな声で言った。

先生

「ゆっくりでいいからね。

無理しなくていいわ。

みんなも、優しくしてあげて。」

教室の奥へ案内した。

一番後ろの窓際、俺と鈴木の席の間に

新しく一つ席が追加されていた。

女子たちから分断されるように、

ちょうど俺と鈴木の後ろの席だ。

佐藤はおずおずとその席に座った。

まだ体を小さく丸め、前髪で顔を隠したまま、

周りの視線を恐れるように縮こまっている。

肩が小さく震え、指先が袖ををぎゅっと握り込んでいる。

教室中から小さな声が漏れた。

「可愛い……」

「金髪……珍しい……」

「守ってあげたい……」

「また男子増えた……ドキドキする……」

女子たちの視線は

憧れと興奮が入り混じっていた。

もちろん悪気はない。単なる興味だ。

佐藤くんはそれを感じ取り怯えている。

まるで厳正おじいちゃんと出会う前の

あの日の自分を見ているようだった。

俺はすぐに立ち上がって、元気に声をかけた。

大地

「よう!

佐藤だな!

俺、荒木大地!

よろしく!

こっちは鈴木だ。

鈴木、挨拶しろよ。」

鈴木はため息をつきながら

淡々と。

鈴木

「……鈴木優太だ。

よろしく。」

佐藤は前髪の隙間から俺たちをちらりと見て小さく頷いた。

声は震えていた。

佐藤

「……よろしく……

お願いします……」

先生は満足げに微笑んでホームルームを続けた。

彼女の目は佐藤くんを優しく見守りながら、

「少しずつ慣れてね」という温かい気持ちが溢れていた。

俺は佐藤の前に座りながら

内心で思った。

(また一人、教室に男子が増えた……

これで、俺たち三人だ。

少しずつ学校が変わっていく気がする。

佐藤もいつか笑えるようになるといいな……)

梅雨の雨音が響く教室で

俺たちの学校生活はまた一歩、

前に進んだ。

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