ドゥム・ラズイーラ
ドゥムと名乗った包帯男は、そう言い放つと、瞬時に僕の懐へと飛び込んできた。
「!?」
「お前は一撃で終わらせよう」
ドゥムは包帯の巻かれた拳を構え、僕に殴りかかってくる。
「それくらい避けられるよ!」
僕はすかさず攻撃をかわすと、異能を発動させた。
「シャドウトルーパー!弓兵!」
僕の影から召喚された弓兵が、ドゥムに向かって、矢を放つ。
しかし、ドゥムは腕に巻かれた包帯を巧みに操り、飛んでくる矢を弾き落とした。
「異能使いか。だが、この程度なら私でも簡単に殺せる」
「それはどうかな!」
僕はドゥムの影を操り、身動きが取れないように拘束する。
そして、影の剣を抜き、その身体を斬りつけた。
手応えは十分にあった。
「ふ、ふふ……。なかなか、やるではないか。だが、この程度で私を倒せると思ったか?」
ドゥムが不敵に笑う。
その直後、僕が斬りつけたはずの傷が、みるみるうちに塞がっていった。
「まさか、お前の異能は包帯を操る能力じゃないのか?」
「誰がそんなことを言った?私の異能は、見てのとおり傷を回復させる能力だ。もっとも、この異能にも弱点はある。傷は塞がるが、傷痕までは消えない。あくまで応急処置のようなものさ。だが、それだけでも十分だろう?」
ドゥムはそう言うと、腕に巻かれた包帯を僕に向かって飛ばしてきた。
しかし、僕は迫りくる包帯を影の剣で斬り払う。
「包帯くらい斬れるよ。僕の影の剣は、大抵のものなら斬れるからね」
「私の包帯は丈夫だから、そう簡単には斬れないと思ったのだが……。ふむ、相手が悪かったな。ならば――」
ドゥムは突然、包帯を地面に叩きつけた。
次の瞬間、地面が砕け、無数の瓦礫が弾き飛ばされる。
その標的は、僕から少し離れた場所にいるステイティア王だった。
「させない!」
僕はすぐさま影の剣を振るい、王へと飛んでいく瓦礫を斬り落とした。
だが、再びドゥムのいた場所に目を向けたとき、そこにはもう誰もいなかった。
「逃げ足の速いやつだな……」
どうやら、ドゥムは瓦礫を飛ばした隙に逃げ出したらしい。
それからしばらくして、オサヌが僕たちのいる訓練場へとやってきた。
「どうやら、ガルンたちは逃げたらしいな。あいつの引き際は、いつも鮮やかすぎてムカつく」
オサヌは不満そうにそう言った。
すると、ステイティア王が僕に向き直る。
「今回は世話をかけたな、ツブキ。それに、シムラにも助けられた」
王は僕に礼を述べた後、気絶しているシムラにも目を向けた。
「余は、オサヌ殿たち東ステイティアとの関係も良好に保っていきたいと思っている」
「もちろんです。私もステイティア王とは、これからも良好な関係を築いていきたいと思っています」
そう言うと、オサヌは王に向かって手を差し出した。
ステイティア王もその手を握り返す。二人は固く握手を交わした。
「君のところの情報屋には、本当に感謝している。実に優秀だな」
「いえ、たまたまですよ。王を狙っているのがガルンだと、事前にわかっていただけです。それに、うちの情報屋は実に優秀ですから」
なるほど……。
ステイティア王が言っていた情報屋は、オサヌの仲間だったのか。
どうりで、今回の襲撃について詳しい情報をつかんでいたわけだ。
「それでは、私は失礼します。後のことは任せたよ、ツブキ」
オサヌはそう言い残すと、訓練場を後にした。




