アギド・ソリッド
確かに、こっちに全員で来るわけにはいかないか。でも、まさかアギドさんしか連れてきていないなんて。
「勇者様はパーティーのみんなで行こうと言ったのですが、私が反対しました。私たちは東の勇者パーティーなのです。東ステイティアを空けるなど、言語道断ですから」
アギドさんの言うことはもっともだ。でも、一人だとガルンって人を見つけるのが難しくないか?
「アギドさんだけだと、そのガルンってやつは出てこないんじゃないか?」
「いや、一人の方がいいんですよ。むしろ、大勢で動いていると、あいつは出てこないですから。ガルンってのはそういう男です」
オサヌさんやアギドさんたちは、ガルンって人と何か因縁でもあるのだろうか?
「私たち勇者パーティーとあいつの間には、色々とありましてね。だから、あいつのことは大体わかっています」
「そうなんですか。なら、僕たちも城に戻った方がいいのでは?今はオサヌさんが城の入り口にいる半グレたちを相手にしています。このままだと、ステイティア王が狙われるかもしれません」
僕がアギドさんにそう告げると、アギドさんは少し考えた後、口を開いた。
「……なるほど。よくわかりました。では、ツブキさんは城に戻ってください。私は陽動のためにここに残ります。そろそろ、誰かしら来る頃だと思いますから」
「よ、よくわからないですけど、アギドさんがそう言うなら、僕は城に戻りますね」
僕はアギドさんに言われるまま、ステイティア城へと戻った。
……僕、何のために城下に来たんだろうか。
* * *
ツブキがステイティア城に戻ってから数分後。
アギドの前に、一人の男が現れた。
男は両手に鉤爪を装着しており、顔には無数の切り傷が刻まれていた。
「どうやら、私の敵が来たようだね」
「まるで、俺様が来るのがわかっていたみたいだな」
「まあ、敵の正体まではわからないけど、誰かが来ることはわかっていたよ」
アギドは槍を抜き、構えた。
それに応じるように、顔中に切り傷のある男も鉤爪を構える。
「俺様の名は――」
「ああ、いいよ。名乗らなくても。どうせ君は、すぐに死ぬんだから」
アギドの言葉に、男の表情が怒りに染まる。
「俺様をなめるなぁ!」
男は叫びながら、アギドに襲いかかった。
「しゅっ!」
次の瞬間、アギドの槍が閃いた。
一瞬のうちに、男の顔面と腹部を同時に貫く。
「がっ……!」
男の顔と腹部に穴が開き、その身体が地面に崩れ落ちた。
「たかが半グレ風情が、私に勝てると思うなよ」
アギドは、顔に穴を開けた男の死体を見下ろしながら吐き捨てた。
そのとき、アギドのもとへ、もう一人の男がゆっくりと近づいてきた。
「やはり、貴様が相手では、あの程度の雑魚では敵わんか」
「まさか、お前が来るとはね。予想外だよ」
アギドは目の前に現れた男を見据え、槍を構え直した。




