第7話 託された物
火蓮は立ち上がり、息を整える。
(少しだけ、出してみよう……それなら気絶するまではいかないと思うし……)
「はああ!」
!?
(ぐぅ!体が!でも、気絶まではいかない…これを耐えて強くならないと!)
火蓮は息を荒げながらも歩みを進める。
そうして更に奥へと進んでいくとそこは大きく開けた場所になっており、そこに一人の女が居た。
「貴方は!」
「あ……貴方は……7ブレイカーの一人、火蓮さんですね」
「亜留!………ちょっと待って、貴方……本当に亜留?」
「どうしたんですか火蓮さん、私は亜留ですよ」
「………何か変よ貴方、亜留だけど……はぁはぁ」
「火蓮さんこそどうしたんですか?そんなに息が荒く、苦しそうに見えますよ。
私の生体反応でも分かります」
「私の事はいい、貴方……本当に7ブレイカーの時の亜留?
私からしたら貴方は……過去の貴方のように見えるけど」
「………それはどうしてそう思うのです?」
「私のカンよ、女のカンって言えばいいのかしら?
それよりも貴方の目的は何?まぁ大体何となく分かるけど」
「なら私の目的は何だと思います?」
「7ブレイカーの始末……とか?」
「………ふふ……火蓮さんは鋭いですね」
「大体検討が付くわ、それで本気で私を殺るつもり?」
「……はい、私は戦闘型殺戮兵器のアンドロイド………亜留です。
マスター様の命令により、7ブレイカー、それと抗いし者……名はミナミとヨウコ……それと巫女を全て殺します」
「………その命令は成功してないでしょ?」
「いいえ、私の生体反応でこの建物内を調べていたら魔神……7ブレイカーの一人ですよね?
その者は死んでいます、生体反応は無しです」
!?
(魔神が死んだ?!)
「貴方がやったの?亜留!」
「いいえ、私ではありません……私が調べていた時に気づきました。
そもそも魔神さんと会っていませんから」
(友梨香が言っていた敵って亜留の事かな?……いやでも亜留だけのはずがない……そもそも亜留の場合はマスターがあっち側だと思うし)
「で、やるつもり?」
「そうですね、私は他の7ブレイカー達を始末する事を優先します。
貴方の体力的に私が動くまでではない、他の7ブレイカー達を始末したほうが効率良く動けると思いますので」
「行かせるとでも?」
「来なさい……私の下僕……」
ギー
!?
そこに2人の機械ロボが現れた。
「これが貴方の相手です、潔く死んでくださいね。
貴方の悲鳴なら私の耳にも届きますから」
「嫌な女になったわね亜留」
「貴方の方ですよ、元王女……もしかして愚かな冒険家の娘って呼べばいいですか?」
「!」
「まぁいいです、それじゃあ頑張って生きてくださいね〜。
出来れば死んでもらえると楽なので」
そうして亜留は何処かに行ってしまった。
(私の父が愚かだと……舐めるな!!!)
ガキン!
火蓮は一撃でロボを撃破した。
「もう1体も!!!」
ガキン!!
そしてもう1体のロボも一撃で壊れる。
(……うっ……解かないと)
火蓮は力を解き、呼吸を整える。
(亜留を停められるのは他の7ブレイカーでも大丈夫だろう、私は元凶を潰す……)
火蓮は足を進めた。
そうして奥へと進んでいくと右側に扉があった。
中に入るとそこには宝箱が置いてあった。
(何かしら?……一応警戒しておこう…)
火蓮は最新の注意をしながら宝箱に近づく。
そして箱を開けるとそこには、あるアイテムがあった。
私はそのアイテムに手を伸ばそうとした時
「火蓮様……久しいですね」
!?
突然の声に振り返るとそこにはしっかりとした服の執事らしき人物がいた。
私はその人を見て誰か分かった。
「じい……なぜここに!?」
「ここは無の空間……敵が襲ってくることはありません」
「何で私を?」
「火蓮様、少し落ち着いてください。
まず、ここに居るのはそこに入っている箱のアイテムを手に入れて欲しかったからです」
「でも!じいは!過去に……」
「ふふっ、過去のお話はおやめください。
火蓮様から見て私は透けておりますか?」
「ええ……少しだけだけど」
「幽霊となっても私はどうしてもこのアイテムだけは貴方の手に届けなくてはならなかった。
だから、お二人にお願いしたのです。
貴方の父上と母上に」
!
「父上と母上!?霊となってまだこの地に彷徨っていたの!?」
「はい、全てはこのアイテムを渡すため……貴方には為すべき事があるのです。
その名を受けたその時から……」
「……私が止められるはずが……私は弱い……元王女よ……」
「貴方は弱くありませんでした、貴方はあの災厄な事件の時、小さい体で大きな剣を持ち父上と母上の前に立ち、闇の使者を睨んでいたではないですか……」
「でも!貴方につままれて逃げたじゃん……」
「霊になった父上に聞いたのです……火蓮の行動は弱い者かと、そしたら火蓮は弱い子ではない。
とても強い、私達の最高の子だと言っていました」
(父上)
「貴方は弱くありません、それに私達は見てきましたよ。
火蓮様の活躍を……」
「……でも、私はもうボロボロ……回復薬もない」
「精神を集中して、目を閉じてください。
そして体の流れを穏やかにしてくださいそうすれば体が少し楽になりますよ」
じいに言われ、試してみると先ほど荒い魔力の流れが穏やかになっていく。
(これなら少し出せるかも?)
私は早速力を解放した。
!
(これは!)
先ほど苦しかったエネルギーが穏やかに体を流れている。
(私は焦っていた……早くやらないといけないって……少し落ち着く必要もある……のね)
「落ち着きましたか火蓮様……」
「うん」
「ふふっあの頃の顔ですね、私は貴方のお顔をまた見れて嬉しく思います……。
そろそろお別れですね」
「もう行くの?じい」
「はい」
「また会えて良かった、私……頑張ってみる」
「私もですよ……扉を開け、元凶の元へ……私達は信じていますよ。
貴方の頑張りを」
「じい……ありがとう……父上と母上にも言っといて」
「はい分かりました、火蓮王女様」
私は宝箱の中にあるものを取り出し扉を出た。
出る直前少し後ろを見たがじいの姿はもう無かった。
(私、やるわ……見ててね)
宝箱に入っていた物は剣だった。
それは真っ赤な色の剣、血の色に似ている。
そして扉を出て少し歩くと気配を感じた。
「亜留……居るんでしょ?」
コツコツ。
「ふふっ、流石火蓮さん。
私の事直ぐに分かるなんて、それよりも傷が治っていますねそれに、魔力も……回復薬なんて無いのにどうしたんですか?」
「言わないわ…それよりも私以外の7ブレイカー達を狙うんじゃないの?
私に構っているなんてどういうつもり?」
「貴方の生体反応が消えたんです、死んだと思い戻ってきてみればゴミが倒れているだけ、少し気になり様子を見ていただけですよ」
「それで、私を殺る気?」
「ええ、私直々に貴方を始末します。
生体反応が消えるまでね、それよりもその剣何処で手に入れたんですか?
貴方が持っていない剣ですよね?」
「ふふっ、これは私の宝物よ」
(鑑定しているが???と出ている……この剣は一体何なの?)
「そうですか、ならその剣と共に死んでもらいますね。
はあああ!!!」
!
(力が上がった!だけど、私だって……じいから教えてもらった……だから……貴方には)
「ロックオン、レーザー発射!」
!
火蓮は目を閉じて攻撃を避けた。
(何!?今のは!)
(この力、使ってみる!!)
!
(速い!?私の間合いに!)
「火炎烈風斬!!!」
「ぐっ!ロケットパンチ!!」
「無駄よ!!!」
火蓮は余裕の表情で亜留の攻撃を回避している。
(何なの!?これは!私の攻撃は確実に当たるはず、私は完璧な兵器なのに!
私が負けるはずが!)
「これでトドメよ!!極・……うぐっ!」
「今だ!!!ロケットパンチ!!!」
「きゃあああ!!!」
亜留の攻撃で吹き飛ぶ火蓮。
(まだ、力を使いこなせてないのね……焦るな……慌てない……みんなが居る……託されているんだ)
火蓮は剣を突き刺し体勢を整える。
(くっ!まだやれる!)
「極・うぐっ……でも!!火炎斬!!!」
「ぎゃあああ!!!」
火炎の攻撃が見事亜留に直撃、吹き飛ぶ亜留。
ドカーン!
(はぁはぁ……)
「ぎー……うっ……システム異常発生……再起動を開始……………ピッ…?…火蓮……さん……」
「亜留……大丈夫?」
「……そうでした……私はマスターにシステムを変えられ……殺戮兵器になった……ごめんなさい……火蓮さん」
「いいのよ、リペアキットはある?直すから」
「無いです…、多分取られちゃったみたいだし」
「そう、亜留はこれからどうするの?」
「この体ではもう無理でしょう、最後の攻撃をしようと思います……」
!?
「それって!……ダメよ!!」
「火蓮さん……私を救ってくれてありがとうございます……」
「む?亜留よ、ここに居たのか……そいつを始末しろ……マスターの命令だ」
突然現れたのは亜留を作ったマスターだった。
「貴方は!」
「今だ!」
亜留はマスターに掴みかかり、拘束する。
「何!?どういうつもりだ!」
「貴方はここで死ぬ!私と共に!!」
「亜留!ダメよ!!!」
「火蓮さん……ありがとう、敵は必ず倒して欲しい……お願い……します………はあああ!!!」
「ダメー!!!!!」
ドカーン!!!!
亜留は光輝きそして大きな爆発を起こした。
それは物凄い威力で火蓮は吹き飛ばされ壁に激突し気絶した。
(あ……る)
………。
・・・・・・・・・・・・・・・・・