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紅葉に住む猫

作者: 昼月キオリ


あるところにお母さんと離れてしまった小さな男の子がいました。


名前はユア君。


ユア君はお母さんと街に出かけた時に迷子になってしまいました。


ユア君は泣きながらお母さんを探そうと歩き出します。

少し歩いた先に紅葉の並木道が見えました。

周りに人はいません。


さくさくさく。

紅葉を踏む音が自分の足元から聞こえてきます。


さくさくさく。

すると、一匹の猫が紅葉の上に現れました。

紅葉がとてもよく似合う茶トラ猫です。


「にゃあ」


「猫さんいた!」


ユア君が猫に近付こうとしますが

手が触れそうになるとシュッと消えてしまいました。


「猫さんいないいない・・・」


けれど、少し離れた紅葉の上にまた猫が現れました。


「にゃ〜」


ユア君はまた猫に近付こうとしますが

手が触れそうになると消えてしまいます。


それを繰り返していくうちにユア君の目からは涙が止まり、次第に笑顔になっていきました。


猫が紅葉の葉の上から上へ移動してはユア君の様子を眺めています。


やがてお母さんの声が聞こえて来ました。


「ユア!!」


「ママ!!」


「ユア、怪我してない?」


「うん」


「寂しかったでしょう?ごめんね、もう大丈夫だからね」


「ううん、猫さんと鬼ごっこしてたから寂しくなかったよ!」


「猫さん?」


お母さんはキョロキョロと辺りを見回しました。

けれど、猫はどこにも見当たりませんでした。


「あのねあのね!僕と遊んでくれた猫さんはね!紅葉の中に住んでいるんだよ!」


「まぁ、ユアはロマンチストね」


「ろまんちー??」


「夢がいっぱいって意味よ」


「えー?夢じゃないよ、本物だよ!」


「ふふ、そうね、きっと本物ね」


お母さんとユア君は手を繋ぐと紅葉の並木道を歩き出しました。


さくさくさく、さくさくさく。

今度は二人分の音を乗せて軽やかに秋の音色を奏でるのでした。


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― 新着の感想 ―
男の子が、お母さんとまた会えてよかったです。 ロマンチストは、夢がいっぱい、というお母さんの言葉と、夢じゃないよ、という男の子のやりとりに心があたたかくなりました。 紅葉から紅葉へと移る茶トラ猫、さ…
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