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Start 006 閉じられる傘
「昨日一日、返事待ったけど、どうしたの? 体調悪いの? 何か気の障ること言った、俺」
夜の通知音。たかゆきのメッセージは楓を気遣っているかのように思えた。
楓はスマホを置いた。返す言葉はどこにもなかったからだ。
傘の隣に並ぶことはしない。
「楓さん俺は真剣なんだ、信じてくれたんじゃなかったの?」
信じたかった。もちろん・・・"救い"という名の仮面。
たかゆきのこと、私はなんも知らない。
楓は自分の部屋のカーテンを少し開け、月の光が静かに差し込んでいた。
ほんとの孤独は消すもんじゃない。寄り添いの中でうめていき、成長に変化させていくものじゃないの?と心で叫んでいた。
「あなたについていけません」
画面にそう、打ち込んだ、震える指で送信した。
心の中で傘をそっと閉じた瞬間だった。