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Start 004 上からの立場の眺め
「今の生活って誰のためにある?」
孝之のメッセージはいつものように優しさがあった。
反面、命令と思考の押し付けの強さも現れているようにも感じていた。
楓は、眉を寄せ、『家族のためかなぁ、でも、どうでしょう?』とぼけて返信してみた。
「楓さん、それ思考停止になるわ 自分の気持ちを隠してどうすんのよ」
孝之は、楓の中の「疑問」の扉を開けた。
「今の夫さ、ほんとに楓さんに感謝とかしとんの? 当たり前になってない?大事にされてるの家族に・・・」
ぐっと刺さり、はっと、もさせられた。
「俺なら、放っておかない」
ほんとは少しずつ気づいていた。これは励ましじゃない・・・見せかけの誘導。
けれど、まだ半信半疑。そんなタイミングで、
「会社っていつ辞める予定なの? 住む部屋さ、考えてみようか? 荷物は最低限にしてよ」
時が止まったように楓は固まり、強風と共に降る雨のしずくが、頬を叩くようだった。
この人は自分の中でどんどん理想を現実に重ね合わせている。前提の未来を。
上からの立場の眺め、守ってあげる、今より幸せだぞ、どっちがいい?と
聞かれているようにも思えた。