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Start 001 交流しませんか?
夜の静けさが部屋をくもらせる。
楓は家族の寝息に囲まれながら何となくスマホを開いた。
誰かと話したい。誰でも良いわけじゃない、矛盾を解錠したまま指先は交流広場の投稿をスクロールしていた。
「交流しませんか、気軽にメッセージください、待ってます」
短いありふれた短文になぜか目を留めた。アイコンは風景写真、投稿者の名前は"たかゆき"。
軽い気持ちで楓は返信を打ち、送信した。
「よろしくお願いします」と。
それだけだったのに、スグに「嬉しいです」と返信が届いた。
それをきっかけにスムーズに、やりとりが、続いた。
「最近どうですか、仕事、お疲れ様です、無理は禁物ですよ」
なんて、よそよそしさもあり、なんだか知り合いみたいで、不思議な心地よさを感じていた。画面の向こう側の"たかゆき"は、道に迷っているこ心の案内人のように、思えた。