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第8話 イベント作戦


 月曜日。

 真優とのデートから2日後、週初めの学校だ。

 花恋さんとはその間もゲームであっていたが、顔を合わせるのは少し久しぶりな気がする。


「おはようございます、相馬さん」

「おはようございます、花恋さん」


 お互い軽く会釈をして挨拶する。

 転校してきてから5日が立とうと言うのに花恋さんの周りには人だかりができている、相変わらず花恋さんは人気だ。

 これは異世界人と言うこと以外にも本人の誰とでも接する性格と人間から見ても容姿が整っている事が関係していると思っている。


「相馬、おっはよう!」

「おはようございます、真優さん」


 1日ぶりに真優と会う。

 特に変わった様子はなく、いつも通り機嫌がいいと言うことは機嫌取りのデートは成功と言う事だ。


「も~!また敬語じゃん」

「僕はいつだって敬語で話してんすよ」

「それアタシにだけじゃん!」


 いつも通りの毎日が過ぎて行く。

 花恋さんがいると言うだけの変わらない日常……。


 ――放課後、屋上。

 授業が終わり、大多数の生徒が帰宅し幾人かの生徒が部活に励んでいる時間。

 時雨と共に今朝コンビニで買った牛乳と菓子パンを持って屋上のフェンス越しに校庭をボーっと眺めている。


「大丈夫か?」

「どうした急に」

「いや、相馬がなんだか元気がないように見えてさ」


 悩みはあるが元気が無いように見えていたのか、時雨の言葉にふと気づかされる。

 どうせ悩んでいても仕方ない、ここは正直に話してみるか。


「……聞いてくれるか」

「おう!」

「昔っから異世界に憧れてたのは知っているよな」

「まあ、幼馴染だし それくらいは知ってるよ」

「異世界を身近に感じたい夢が叶ったはいいが、それが本当に求めていた物かわからなくなった」


 異世界に憧れを持ち、長年生きてきた。

 その理想と現実とのギャップに今まで悩んでいたが、花恋さんと言う異世界人が転校してきたことで夢が叶った、ここまでは良かった。自分でも満足している。

 問題はそれが日常として適応すると自分が本当は何を求めていたのかがわからなくなった、そのことについて悩んでいた。


「……え、それだけ?」

「ああ」

「それだけか!?それ以外は!」

「特にない」


 時雨は驚きの声を上げる。

 なんだ、なんか文句でもあるのか。


「そうか、てっきりもっと重たい話かと思ったよ。雰囲気的にもさ」

「すまんな、重たくない話で」

「いや、そう言う訳じゃないけど……まあ、俺から言えることは1つだな」


 時雨の言葉に耳を傾ける。


「夢が無くなったなら新しい夢を作ればいい、それが俺の感想」

「なんだそれ」

「要するに相馬はロマンチストだからロマンを追い求めろってこと」


 妙に納得感を覚える。

 言われてみれば異世界にロマンを求めて、それが叶ったら前の様に戻りかけた。

 ロマンを追い求めろか、いい言葉だ。どうしようもない僕自身にはぴったりかもしれない。


「ふ、ふふ、ハハハハハッ!」

「え、なに急に、怖」

「時雨、お前に相談してよかった。ありがとう」

「どういたしまして」


 素っ気なく返事を返しているが、この事実に気付かせてくれた時雨には感謝しかない。

 早速なにかロマンを考えようかと思ったその時、スマホの通知音が鳴る。

 画面を見ると通知には『アナザーワールド』のモフモフさんから来ていた、そう言えば今日は家Bんと作戦を立てる日だった。


「ごめん、今日用事あったから帰るわ」

「おう!また明日な!」


 ――――


 キングバット城へスポーンすると既に何人かが集まっていた。


「シロシロさん、来てくれたんですね!」

「すみません、遅れました」

「来てくれただけで嬉しいですよ」


 ガイストさんが喜んでくれる。

 アバターは半霊半人のアンデット、ゾンビの様な見た目の死体に白いもやの様な魂がフードの様にまとわりついている。


「これで全員か……」


 時刻は午後5時。集合時間に集まったのは5名、他のギルドメンバーはログインすらしていない。皆、仕事や用事で忙しいのだ。


「では、これより『イベント作戦・ヴォルス大王』完全攻略会議を始める」


 白銀の鎧に赤いマントを身に着けた亜人種である龍人族のアバター、アニメ大好騎士さん主導の元会議が始まる。


「今回で2度目となる攻略作戦だが、前回とは違い難易度調整が入っている」


 前回は炎上するほどの難易度だったが今回は前回の炎上を切っ掛けにアップデートで調整が入った。その分やりやすくなったが、ヴォルス大王の強さはいまだ健在中。


「それでも尚、攻略は難しい。だから、ここにいる全員の力を合わせて完全攻略を成し遂げたい」

「本心は」

「前回みたいに記録が塗り替えられる前にギリギリまで戦うぞー!」


 やっぱりそう来たか、完全攻略と言っているが実際は最高記録を上書きされたことを根に持っているだけだ。

 それに、完全攻略って前回も攻略しているだろうに……順位はずれたけど。


(前回一番悔しがってたもんな、アニメ大好騎士さん)


 記録を塗り替えられた時、その場に居た全員が驚いたがアニメ大好騎士さんは仕事で欠席していた。イベント終了後になってその事実を知った時は魂が抜けたかのように動かなくなった後ログアウト、しばらくは引きずっていた。


「と、言う訳で諸君。イベント終了時刻である18時まで残り1時間、それまでになんとしてでも最高スコアを叩き出すぞー!」

「「おー!」」

「あ、あはは」


 ガイストさんとダラモンダさんが声を上げる。モフモフさんは少し困っているようだ。


「それで、なにか対策はあるんですか?」

「よくぞ聞いてくれた!」


 さすがに前回同様の攻略法では何の反省もしていないバカと言うことになる。

 今回は何か対策があっての作戦なのだろう。


「今回は課金アイテム、『死の奇跡』を使う!」

「それ、1個10万円くらいしますよね……」


 まさかの発言と共に取り出した武器に度肝を抜かれる。

 課金アイテム、その中でも高価で使用が難しく成功確率の低い武器『死の奇跡』。当たれば一撃必殺の武器となるが外れればただのガラクタと化す所謂”ゴミ”アイテム。

 確かにそれを使えば最高記録を叩きだせるが、1個10万もするものを買ってまでやる必要があるのか?。


「それを、10個買った!」


 バカなのか?確かに10個もあれば1回くらいは当たるとは思うが、よほどの金持ちじゃないと買わないぞそんな物。

 ここまでアニメ大好騎士さんが本気になるってことはなにか欲しい物があるってことだよな。


「アニメ大好騎士さんはそこまでして何が欲しいんですか?」

「それは勿論、イベントランキング1位のギルドに与えられる商品、それをコレクションしたい」


 相変わらずこの人は変わらないな、キングバット城を作る時もコレクションを欠かさず集めていた。ここまで熱意を伝えられたんだ、全力で攻略しよう。


「それでは行こうか、ヴォルス大王攻略に」


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