第31話~年末~
「カウントダウンどうしましょうか?」
「あーそっか、もうそろそろ12月31日かぁ」
今日は、12月30日で肉屋の山下でオレもなぜか手伝っている。なぜだ。そんなに人手不足か? 実際は、単純に美波のお母さんに気に入られて、こうなっているのだ。お客さんも来そうにないので、美波とそんな会話をしていた。
「2年参りする?」
「流石に眠いですけど、カウントダウンしたいですねぇ。わたし、毎年、年越しはほぼ寝ているんです」
「最悪寝ても大丈夫なようにどっちかの家にする?」
「蒼空くんの家に行きたいです」
「そういえば、母さんがあの頃に比べて美波を認めつつあるから大丈夫かもなぁ」
「蒼空くん、ありがとうねぇ、店番」
美波のお母さんが店裏からやって来て、オレにねぎらいの言葉をかけた。
「気持ち程度で申し訳ないけど……」
美波のお母さんが封筒にお金を入れて渡そうとしてきた。そこに入っているのは、1時間分の最低賃金だ。1000円超えてるのは知っていたけども、雇用契約を結んでいるわけでもない。あくまでもお手伝いなのだ。
「そんな受け取れないっす」
1時間分のお給料を断ったけども、結局、『美波との結婚資金にでも、お小遣いにでも、何にしてくれていいから』と丸め込まれた。
「まぁ、蒼空くん、美波のことよろしくねぇ」
「うっす」
12月31日の午後7時になった。
美波がオレの家でカウントダウンするために、家にやってきた。
「お邪魔します」
「ん、あぁ、今日、美波が来るって話したら、父さんと遊びに行って来るってさ」
「やっぱり、まだ認められてないんですね」
「いや、そうでもないよ? 昨日も言ったけど、なんだかんだ、美波とどう? ってよく聞いてくるし」
「雨音さんとはどうなんですか?」
「んー? 雨音? そういや、最近、見てないなぁ」
「噂をすれば影という言葉もありますし、雨音さんの話題はやめましょうか」
「それもそうだな」
「美波、年越し蕎麦、作るつもりだけど、蕎麦はいける?」
「わぅ、そんな気を使わなくても、一緒にいれるだけでいいのに。でも、お蕎麦は好きですよ」
「じゃ、23時30分なったら、茹でるか」
「やった、蒼空くんの蕎麦が食べられる!!」
「まぁ、オレの蕎麦って言っても、普通に売ってるのを茹でるだけだけどな」
「ちっちっちっ、わかってないなぁ。お蕎麦茹でるにも水の分量とか出汁の分量、ひとつで味が変わってくるんですよ」
「ん? なんかツッコむ項目があった気がしたけど、そこはツッコまんぞ?」




