第29話~クリスマスアフター1~
美波の入院があったクリスマスイブ。ただの風邪のため、次の日のクリスマスには全快で大阪へ帰ってきた。
そして、オレは思った。彼女つまり、美波といるのは楽しい、でも、それだけじゃダメなんだ。散々考えた結果、美波とは別れて、しばらく恋人は作らないことにしようと思った。
でも、まずは、美波と美波の両親に謝らないと。美波が神戸に行くと決めて、オレが賛同しなければこうはならなかった。
もし、クリスマスの予定を決めるときに、神戸ではなく、大阪の水族館もイルミネーションがキレイだからと言っていたら、あそこまで悪化することもなかったかもしれない。あくまでも、すべて、たられば論だけども。
今日は12月27日。
「はぁ、寒っ」
肉屋の山下が見えてきた。そこにいたのは美波だった。近所の小学生だろうか? コロッケを買って『熱いー!』『うまい!!』『ジャガイモホクホクー!!』と各々感想を口にしていた。そして、美味しそうに食べて走り去っていった。
「オレにもコロッケひとつください」
「あっ、蒼空くん……。 じゃなくて、50円です」
「ありがと」
コロッケを揚げる機械でコロッケを美波が揚げている。これが彼女として見る最後の美波か……。
「はい、ありがとう」
美波は周りにお客さんになりうる人がいないのを見て、口を開いた。
「珍しいね、わたしの部屋じゃなくて肉屋の方に来るなんて」
「ホントはクリスマスイブのこと、美波のお母さんに面と向かって謝ろうと思ってきたんだ」
「そっか、わたしもお母さんから怒られたよ。でも、最高の誕生日にしたかったから」
「誕生日? あと、今日は美波の店番何時くらいまで?」
「あっ、もう14時か。わたしはちょうど終わりだよ。お母さんのお昼休憩の代打だったの」
美波が店舗裏の母親のいる方に向かって、『お母さーん!!』と叫んだ。そして、美波のお母さんが店の方に出てきた。
「あっ、どうも」
「蒼空くんです」
「この間はホントにすいませんでした!!」
「やだなぁ、電話でもあたしゃ言ったよ? 蒼空くんは気にしなくていいよって」
「でも、この前、ボクが神戸って決めなかったら、こんなことにならなかったはずなんです!!」
「ま、あたしゃ気にしてないから、まぁ、美波の部屋でゆっくりしていきな」
「美波いい?」
「わたしは、もちろん!!」




